「ヴァル・キルマー/映画に⼈⽣を捧げた男」(2021)

 

俳優ヴァル・キルマーの半生を描いたドキュメンタリーをU-NEXTで観ました。

 

 

監督はティン・プーとレオ・スコット。予告編はコチラ

 

2014年に咽頭ガンで声を失って、機器を使っての発声ができるまでに回復した俳優ヴァル・キルマー。近年では代表作の一つである「トップガン」(1986)の続編に出演していました。1959年、LA近くの不動産会社経営の父の家庭で三兄弟の次男として生まれたヴァル。監督志望の弟と一緒に自主映画作りに励んでいた俳優志望の少年が演劇に目覚めて、ジュリアード音楽院で演劇を学び、最初に手に入れたハリウッド映画での主役を得た作品は「トップ・シークレット」(1984)。熱血演劇青年のヴァルは、ギターを4か月猛特訓してプレスリーのマネができるくらいの状態になってから、おバカなパロディ映画にマジメに臨みます。撮影現場にホームビデオを毎回持ち込んで自分の立ち振る舞いを記録しているところからも、ナルシスト要素ありの熱心な男であることは容易に想像できます。で、次作が「トップガン」。幼少時から父に疎外されてきた男という裏設定を勝手に作って、嫌味な完璧主義者に成りきる叩き上げのエリート将校候補を好演。この頃の恋人は歌手・俳優のシェール

 

「フルメタル・ジャケット」(たぶん、マシュー・モディーンの役どころ?)や「グッドフェローズ」(たぶん、レイ・リオッタの役どころ?)の出演を目指して、自撮り演技パターン映像で売り込むも失敗。その後、デビュー作のロンドン撮影時に劇場で芝居をしていた姿を見て以来、思いを寄せていたジョアンヌ・ウォーリー「ウィロー」(1988)で共演して結婚。「ドアーズ」(1991)ジム・モリソン役をゲットして演技派ぶりを披露します。さらに、「バットマン フォーエヴァー」(1995)バットマンを演じて、同年の「ヒート」でも好演。憧れのマーロン・ブランドとの共演だったのに様々な撮影トラブルに見舞われた失敗作「D.N.A./ドクター・モローの島」(1996)の苦難を経て、ジョアンヌとの離婚、スーパーモデルのシンディ・クロフォードとの交際もあってからの、「セイント」(1996)で主役をやるあたりまではスターダム路線を走っていたものの、それ以降は脇役に回ってのキャリアを重ねてきた印象であります。で、2010年代に突如ノドに違和感を感じて・・・、というのが現在に至るという大まかな半生。

 

金持ちの子供だったというのもあり、幼少時からの8ミリフィルム映像がふんだんに残っていて、学生時代からハリウッド時代にいたるまでのホームビデオ映像も豊富にあることが本作の強みで、ヴァル・キルマー自身と(自分に代わってナレーションを代弁する役回りを担った)息子の語りを交えながら、2021年の近況までを実際の映像でまとめられています。なので、撮影者のクレジットはヴァル・キルマー本人。オリジナルのオフショット映像に映っているのは、ケヴィン・ベーコンショーン・ペン二人のお尻トニー・スコットトム・クルーズティム・ロビンスカート・ラッセルマーロン・ブランド(とジョン・フランケンハイマー)といった豪華な面々。スターであることよりも役者であることを望んでいたこと、一方で周囲からはスターになることを望まれた環境に身を置いていた引きの強さを持っていたこと(こういう人はなかなかいない)もうかがい知れて、彼のファンじゃなくても興味深く観ることができる自分語りのドキュメンタリーでございました。