「ショーイング・アップ」(2022)

 

とにかくシャワーを浴びたい女のお話をU-NEXTで観ました。

 

 

監督・脚本・編集はケリー・ライカート。予告編はコチラ

 

借家の給湯器が壊れてしまってシャワーが浴びられません。家主のジョー(ホン・チャウ)に直してくれと訴えますが、近日開かれる個展の準備で忙しいとか言って、すぐに対応してくれそうになく、イライラが募ります。近所に住むジョー現代アートの作家。オレゴン州ポートランドのアートスクール出身のリジー(ミシェル・ウィリアムズ)は、母校で教鞭をとる母(メアリーアン・プランケット)事務助手をしながら創作活動を続けている陶芸家です。自分も個展が近づいてるのに展示作品の製作は順調でない模様。ある夜、家に入りこんできた鳩を飼い猫のリッキーが襲って重傷を負わせてしまいます。とっさにその鳩を家の外に放り出して寝てしまいましたが、翌朝ジョーがその鳩を見つけてリジーの元に連れてきます。手が離せないので面倒を見てほしいと押しつけられて、仕方なく鳩の介抱をするリジー。獣医に症状を見てもらったら、治療代に150ドルも取られます。で、数日経っても、依然として給湯器を直してくれないジョー。

母とは離婚してる感じの父(ジャド・ハーシュ)も陶芸家だったようで、隠居して自由気ままに暮らしています。最近、ワケの分からない友人を自宅に泊めているのが少しウザいです。前途有望なアーティストだったらしい兄(ジョン・マガロ)強迫性障害を抱えていて、引きこもりの一人暮らしをずっとしていることも気にかかります。そんな家族の気に障る行動もリジーのストレスを増幅させている原因の一つ。やがて、ほとんど自分が面倒を見ていた鳩をジョーが引き取りに来ますが、ぞんざいに扱いそうなのが心配で、こまめにケアするように念を押します。ひと足先に開催されたジョーの個展が無事に終わったということで、あとは自分の個展の準備に集中するのみといきたいところなのに、一向に給湯器を直そうとしないジョーにムカついて、ついに留守電のブチギレメッセージを残すリジー。とにかく自宅でゆっくりシャワーを浴びる環境を戻したいリジーは個展を無事に開催することができるのでしょうか・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Showing Up」。"出現"という意味のようです。脚本はジョナサン・レイモンドとの共作。几帳面な人間をいちいちイラつかせるような出来事が周囲で次々と起こって、日常生活もままならないでいる様子を淡々とスケッチした作品。自然光で撮られたであろう屋外の映像が、ポートランドの穏やかな気候と相まって美しいです。これで4作目のタッグとなるミシェル・ウィリアムズが、等身大の陶芸家を終始淀んだ表情で演じています。ズボラな家主を演じるホン・チャウとの対比に可笑しみあり。なんて無神経な周囲なんだろう、あるいは、なんて神経質な主人公なんだろう、といった感じで、観る人によって印象は分かれるのかもしれません。そして、相変わらずのことですが、ケリー・ライカート映画に出てくる小動物たちは愛らしいです。鳩を傷つけた張本人である猫のリッキー。全く悪びれた様子がありません。それと、リッキーに襲われてしまった鳩。最後、個展会場から飛び立ってしまった鳩の鳴き声がかすかに聞こえたところで終わるエンディングも絶妙。先日公開された「ファースト・カウ」(2019)より、本作の方が好みです。主人公が作っている陶芸作品の良さは全く分かりませんが。。。