「らしゃめんお万 雨のオランダ坂」(1972)

 

任侠ロマンポルノをU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督は曽根中生。予告編はありません。

 

昭和初期の上海。白人の父と日本人の母を持つお万(サリー・メイ)は過酷な幼少期を経て、現在は優しい中国人の養父(久松洪介)と一緒に大道芸人として暮らしています。ある日、ケガしていたところを助けた竜二(武藤周作)という特高の日本人に襲われて、体を奪われてしまったのが新たな不幸の始まり。よせばいいのに竜二に惚れてしまって、お万の母がいる日本に連れていってあげるという甘い誘いに乗っかっります。竜二はウラで殺し屋政吉(大和屋竺)を雇って、お万の養父を殺すような悪党です。そんなことはつゆ知らず、横浜にやって来たお万。まとまった金ができたらいい家を買って幸せに暮らそうと言う竜二ですが、バクチで大負けしてしまった借金返済のために遊廓で働いてくれないかと言い出します。いつかは二人で暮らせることを信じて遊郭行きを決意するお万。竜二は特高ではなく、渡世社会でトラブって中国に身を潜めていただけのヤクザで、知り合いの女衒(長弘)とあらかじめ話をつけていた予定の行動でした。

 

さっそく遊郭の主人(島村謙次)に味見されて、金髪の陰毛をねだる下品な客(高橋明)のような相手をさせられる苦難の日々が続きます。一方の竜二は売り払った金でトンズラ。ただ、捨てる神あれば拾う神ありで、養父殺しの政吉が突如帰国、お万への罪滅ぼしのためにイカサマ博奕で稼いだ金でお万を足抜けさせてくれます。政吉はヤクザに追われてあっさり死亡。次に現れたのは、竜二に逃げられた情婦お秋(林美樹)。彼女も不憫なお万に同情して、自分の壷振り師としての技を全て伝授、お万を業界初の金髪の壷振り師に育て上げます。そして3年の月日が流れて、流浪の末に訪れた長崎で壷を振るお万。しばらくして、宿泊先の旅館の女将が産みの母おりん(南寿美子)であること、種違いの妹お菊(山科ゆり)がいることを知ります。そして、お菊を騙して食い物にしようとしているスケコマシの宿泊客が竜二だと分かったお万の取った行動とは・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1972年3月18日。同時上映は「学生妻 しのび泣き」。東映の「緋牡丹博徒」シリーズに触発されて、ロマンポルノと女賭博師モノを融合させた異色作。主演は歌手活動をしていたサリー・メイという美人さん。『金髪仁義』というド直球な曲名で、自分がイイ女であることを熱唱する主題歌が劇中で2度流れます。冒頭の上海のオープンセットがやけにしっかりしてると思ったら、大作「戦争と人間」(1970-1973)の使い回しとのこと。クズ男に騙され尽くして墜ちていくオンナの流浪の人生をエロ展開満載で綴った安直な展開ですが、画面作りがとても丁寧。サリー・メイの体つきの奥ゆかしさにも品があります。お万は竜二にリベンジを果たすものの、警察にお縄をちょうだいして雨のオランダ坂を歩いていく姿で映画は終わります。脚本も手がけている大和屋竺が左目に黒のアイパッチをつけた悲しい男を情感たっぷりに熱演。お万のその後が分かる続編もあるようなので、近いうちに観てみようと思います。