「東京-ソウル-バンコック 実録麻薬地帯」(1973)

 

千葉真一が韓国、香港、バンコク、東京を駆け巡るアクション映画をU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督は中島貞夫。予告編はありません。

 

韓国への新婚旅行中に妹の朋子(堀越光恵)が夫が運転する車の事故で死亡。悲しい知らせを聞いて、フェリーで韓国にやって来た和田達也(千葉真一)。単なる事故ではないと思った達也のカンは当たっていて、韓国のキム警部(崔峰)から、妹の夫である吉岡竜次(松方弘樹)が覚醒剤密売組織の運び屋としてマークしていた事実を聞かされます。妹が訪れた観光地に聞き込みをしていると、日本のヤクザ(ボスは天津敏)が襲撃。間一髪のところでキム警部に助けられた後、吉岡の韓国の愛人の李明玉(金昌淑)に接近。すると、死んだはずの吉岡から電話がかかってきますバスジャックして逃走した吉岡が明玉と共に香港へ高飛び。後を追って香港に来た達也は旧知のフィクサー菅原通済(本人)とたまたま出会って、吉岡が覚醒剤原液を入手するためにバンコク入りしたことを知ってさらに追跡します。

 

バンコクでは菅原が手配したパリンダ(ノラ・ミャオ)という娘に世話をしてもらう達也。裏世界に精通するノン(チャイヤ・スリヤン)を紹介してもらいますが、日本人に妹をヤク漬けにされた恨みを持つノンは協力を拒否。逆に達也と吉岡を暗殺してほしいという日本人ヤクザからの依頼を受けます。チェンマイの遺跡にいる吉岡を追いつめた達也は銃を突きつけられて、またしても逃げられます。その時、吉岡は三光物産社員で、会社側が日本で覚醒剤製造をしている事実を隠蔽するために覚醒剤が韓国ルートで流通しているというデマを拡散して、韓国に滞在している吉岡を売人に仕立てて罪に陥れようとしていた事実を聞かされます。さらに後を追う達也が吉岡と地上で銃撃戦をしている時に、セスナから急襲してきた日本人ヤクザの手によって吉岡と明玉は死亡吉岡が死ぬ間際に言った言葉で、妹を廃人にした犯人が自分の雇い主である日本人ヤクザ(三光物産とグル)だと知ったノンと一緒に日本に戻って来た達也は、三光物産殴り込みに行くのであったが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1973年9月15日。同時上映は「セックスドキュメント 金髪コールガール」。製作の経緯はWikipediaを参照。韓国、香港、タイの海外ロケを刊行した意欲作。各国を逃げ回る松方弘樹を追い回す千葉真一を犯罪組織が追いかける単純明快なストーリー。トラック、セダン、バス、船、ジープ、セスナなどの乗り物を駆使したアクションにはリアルな臨場感あり。バスジャック場面では撮影許可を取っていたにも関わらず、地元韓国警察に本当の事件だと勘違いされたという逸話もあるようです。すでにブルース・リー映画にヒロインとして出演していたノラ・ミャオが千葉真一のアシスタントとして登場しているところが見ものの一つ。本作撮影時(1972年)はブルース・リー存命中で、劇場公開も「燃えよドラゴン」公開前(ブルース・リー死亡後)。香港公開版とタイ公開版は、各国の俳優出演シーンを追加したバージョンらしく、香港版では千葉真一とノラ・ミャオのキスシーンがあるとか。

 

韓国でハニートラップにまんまと引っかかったり、タイでセスナからの銃撃でお尻を撃たれたり、何かとコミカルに演じているの千葉真一とひたすらシリアスな松方弘樹とのコントラストが面白く、ロープウェイ場面での二人リアクションが象徴的。ギトギトしたエネルギッシュさでは互角。麻薬ビジネスに絡んでいる松方弘樹はともかく、一介のトラック運転手がたった一人で犯罪組織を壊滅させる根性は、さすが世界のサニー千葉。本作の悪玉は、三光物産専務の金子信雄とグルになって覚醒剤ビジネスを展開している天津敏。その子分の川谷拓三もタイの女性を麻薬漬けにした悪党です。香港パートでは、名和宏が三光物産の手先として松方弘樹に追われます。東京の公衆便所の奥にある隠し部屋でコツコツと覚醒剤を製造する手下の一人として蓑和田良太も出演。爆破物が仕掛けられた部屋に閉じ込められて、助けてくれと叫ぶセリフがあります。テンションだけで突っ走るカオスな力作でございました。