「ヤングマスター 師弟出馬」(1980)

 

ジャッキー・チェンのゴールデン・ハーベスト移籍第一作をU-NEXTで久々に観ました。

 

 

監督もジャッキー・チェン。予告編はコチラ

 

中国のある町が舞台。「金龍道場」「黒龍道場」の間で競われる舞獅合戦(二人で獅子舞をしながら戦う競技)が正月の風物詩。圧倒的に下馬評が高いのは金龍道場で、エースはタイガー(ウェイ・ペイ)、その相棒はドラゴン(ジャッキー・チェン)。お互い、孤児だった幼少時にカン師匠に拾われて育った兄弟同然の関係。しかし、試合当日、タイガーが足をくじき、急遽ドラゴンがエースとして出場するも、黒龍道場のエースの顔を見てビックリ。舞獅の顔に隠れて他の人には見えないものの、間違いなくタイガーでした。結局、舞獅合戦は黒龍道場が勝利。タイガーの裏切りを密告することもできず、負けた責任を一心に受けるドラゴン。タイガーの悪事はすぐにバレてしまって破門されたため、ドラゴンも後を追って道場を出ようとします。慌てた師匠がドラゴンにタイガーを連れ戻すよう懇願。タイガーだけが所持することを許された大扇子を渡されて、兄弟子を探す旅に出るドラゴン。

 

その頃、タイガーは黒龍道場に腕を買われて、囚人として護送中の強盗団のボスであるキム(ウォン・インシク)救出する手伝いをして、悪の道に染まり始めていました。タイガーが持っていた大扇子が襲われた警官たちの目撃証拠となって、大扇子を持つカンフー使いが指名手配となります。そのことで犯人に間違われたのが、町をさまよっていたドラゴンドジな警官たちは自慢のカンフーでやっつけますが、たまたま出会った警察署長(シー・キエン)とその息子のジャガー(ユン・ピョウ)といろいろ戦った挙句に捕まってしまいます。その後、ドラゴンの疑いが晴れて、キムの手下を退治して兄弟子タイガーを助けることにも成功。タイガーを逃した罪を署長に問われたドラゴンは、自分の手でキムを捕まえると宣言。わりとカンタンにキムを探し当てたドラゴンは、実力差がありすぎるキムと1対1のバトルを展開。20分くらい続く長い死闘を演じて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「師弟出馬」。弟弟子の出陣といった意味。自分が観たのはゴールデン洋画劇場で放映された時(1983年1月15日)で、録画したビデオを何回も観た記憶あり。第1回監督作品ということもあって、いろんなシチュエーションでのスタントが満載。この映画でしか見たことがない"舞獅"の合戦、大扇子を使った黒龍道場での戦い救出されたボスの蹴り技披露、警察官(魚頭雲!)たちとのチャンバラ底なし沼でのコント署長その娘とのバトル、ユン・ピョウとの椅子を使った戦いキムの手下2人とのバトル、そしてボスとのラストバトルなどなど、さまざまな小道具を使ったスタントでタップリと楽しませてくれます。自分がやりたかったアクションをこれでもかと盛り込んでいて、ノリノリでスタントしているサービス精神が画面に溢れてますね。香港では、ジャッキー・チェンとしては初めて年間興行収入1位を獲得。

 

特にラスボスのウォン・インシクとの対決シーンは見応えあり。足技関節技も達人級の敵に対して全く歯が立たない状況が続きますが、アヘン入りのタバコ水ジジイに飲まされて覚醒ドーピングの馬鹿力を借りて相手を倒す荒業で決着をつけます。犯人を捕まえて、クスリ効果が抜けると体がボロボロになってしまったようで、全身包帯姿で道場に帰還するエンディング。ぶざまな恰好を見せられるところがブルース・リーにない強みで、コミカルアクロバティックな動きの連続で、劣勢を跳ね返す展開がジャッキー・チェン映画の醍醐味。技の応酬で魅せるカンフー映画の集大成でもあり、カンフー映画から脱皮して体当たりのアクションでハラハラさせる作風の出発点にもなったのが本作で、作り手のハンパない熱量が充満している傑作だと改めて思いました。