ジャッキー・チェンの米国進出第一弾をU-NEXTで懐かしく観ました。
1930年代後半のシカゴ。地元マフィアのボス、ドミニチ(ホセ・ファーラー)は、ファイターを戦わせる賭博格闘試合で勝つことに情熱を注いでいます。目下の最大のライバルはピッツバーグのボスであるモーガン。彼のお抱えファイター、ビリー・キッス(ハードボイルド・ハガティ)が強すぎて、つい最近も彼に契約ファイターの背骨を折られてしまう屈辱を味わったばかり。ビリーのリングネームは、背骨を折る直前にお別れのキスをすることでついた異名です。数か月後にバトルクリークで行われる大会でビリーに勝てるファイターを探そうと躍起になっているドミニチのお眼鏡にかなったのが、中国人青年のジェリー(ジャッキー・チェン)。
チャイナタウンで小さな中華料理店を営む両親の家庭で育ったジェリーは、叔父ハーバート(マコ)にカンフーを習ったり、恋人ナンシー(クリスティーヌ・デ・ベル)とイチャイチャしたりして、定職にも就かずにお気楽に過ごしていました。ある日、父の店でショバ代を要求してきたドミニチの手下達を全員ぶちのめしたことで、ドミニチはジェリーを子飼いの選手にしようと企みます。ジェリーの兄のフィアンセを誘拐。ドミニチ配下の選手としてバトルクリークの大会に出場して優勝すれば、無事に返してやると脅迫。要求を飲まざるを得ないジェリーは、ハーバートの指導でさらなる特訓を積んで、ゴツいおっさんだらけのバトルクリークの大会に臨んで、ビリー・キッスとの最終決戦へと向かうのであったが・・・というのが大まかなあらすじ。
原題は「The Big Brawl」。"大乱闘"という意味。ブルース・リーの夢よもう一度ということでゴールデンハーベストがジャッキー・チェンで米国参入を試みた1本。失敗作というイメージでしたが、米国・香港以外にもフランス・ドイツ、スペイン、韓国、日本、台湾でも及第点のヒットとなったようです。オープニングからたびたび使われる口笛入りのラロ・シフリンの音楽がカッコイイです。ストリートファイトの全国大会に手駒の選手で優勝したいマフィアのボスが、有力選手の大事な人を人質にして、大会出場を強要するという内容。恋人を誘拐すればいいのに、なぜか遠回りして兄の婚約者を誘拐。宿敵ビリー・キッスを倒して見事勝利した後、約束通りに人質を解放してくれたようなので、律儀な悪党でもありました。
本作でもジャッキー・チェンならではのコミカルなスタント(カラダのキレは抜群)はあるものの、こじんまりとした既視感のあるモノばかりで、自身によるスタント演出を制限されていた影響があるのかもしれません。ブルース・リー風のポーズもやらされてます。障害物競走の色合いもあるローラースケート大会のシーンは、小学生時代に観た時はとても楽しめた記憶あり。ラスボス役のビリー・キッスもレスラー上がりの老けたおっさんのため、バトルシーンはおとなしめ。第二次大戦前の古き良きアメリカを牧歌的に描こうとしてるのか、全体的に牧歌的な作りになっているのが特徴。格闘場面のひとつとなっている映画館では「モロッコ」(1930)や「海賊」(1938)が上映中となっているので、時代設定は1938年なのかな。著名な俳優は、マフィアのボス役のホセ・ファーラーと、ジェリーの叔父役のマコ岩松のみ。「ダークマン」のギャング役が印象的だったラリー・ドレイクがローラースケート大会の審判役で、「ゴッドファーザー」の用心棒役で有名なレニー・モンタナがボスの用心棒役で出ていたのは今回初めて気づきました。