「マノン」(1982)

 

烏丸せつこの魅力炸裂の恋愛映画を観ました。初見。

 

 

監督は東陽一。予告編はコチラ

 

演劇講師の吉野(荒木一郎)と同棲中の劇団研究生みつこ(烏丸せつこ)。バイトでバニーガールもやってます。その店の常連客である滝沢 (津川雅彦)いい仲になったことで、吉野と喧嘩してアパートを出て、劇団の友人曳子(伊佐山ひろ子)のアパートに居候。滝沢はサラ金業者の社長をしているので羽振りが良く、それを嗅ぎつけた兄のしのぶ(ビートたけし)みつこに近づいて金をたかりに来ます。しばらくして、幼馴染の葬儀に出席する滝沢の実家信州に同行するみつこ。滝沢が幼馴染と旧交を温めてる間、ホテルでヒマしてたみつこが外をブラついてると、工事現場でバイトをする大学生の至(佐藤浩市)と知り合って仲良くなりますデパートの屋上で朝までまったり過ごす二人。翌日、滝沢とみつこの後を追って、東京行きの列車に乗り込んできた至。みつこは至を居候中のアパートに連れ込んで付き合い始めます。

 

曳子から「みつこは現代のマノン・レスコーよ」と言われて、紀伊国屋書店小説を万引きして読書に励んだ至は、ますますみつこにのめりこんでいき、滝沢との関係も続けているみつこを尾行。連れ込み宿から出てくるところ待ち構えていると、宿から出てきた滝沢にボコボコに殴られます。一途な至が愛おしくなったみつこは居候中のアパートを出て、新たに借りたアパートで同棲を開始。その後、みつこの元カレの吉野と会って、みつことの過去の関係を自慢げに聞かされた至は、ムシャクシャして夜の街をさまよい、スーパーのレジの金を盗んで逃走。なぜか滝沢の会社に駆け込みます。青臭い至に奇妙な親近感を感じる滝沢。滝沢には依然としてしのぶがしつこく付きまとっていて、妹に手を出した責任を取って金を寄こせと恐喝しています。そんな感じでみつこを取り巻く4人を描いてるうちに、話は意外な展開を迎えて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1981年9月26日。マノン・レスコーが小説の主人公であることは岩崎宏美の歌で知った記憶があります。どんな話なのかはいまだに分かりません。本作はその有名小説を原作としてるとのこと。ということで、男を破滅に導くファム・ファタールを演じるのが烏丸せつこ。自分の意志で奔放に行動してるとはいえ、手近な男性にカンタンに体を許しているだけで、男性にとって都合のいい女性像でしかないように思えます。あどけなさを残す顔立ちと肉体とのアンバランスさが絶妙で、存在そのものがセクシー。ご立派なボディを惜しげもなく披露してくださっています。足元からお尻胸元首筋へと舐めるように全身を映すシャワーシーンもあり。男物のシャツを無造作に着ている姿赤いバニーガール姿もついでにUPしておきます。こういう視線で見つめられたら、たいていの男性はタジタジとなってしまうことでしょう。電車で隣に乗ったガリ勉小学生も魔性の魅力を感じ取ってる様子。ロケ撮影による実景でなにげない日常をスケッチする東陽一監督の演出も、彼女の自然体の演技とマッチしていました。

 

で、彼女に翻弄される4人の男性も、それぞれに独自の色気を持つクセの強い面々ぞろい。まずは、津川雅彦。1980年代の彼は酸いも甘いも噛み分けるエロオヤジを演じたら天下一品でした。ルービックキューブをしていても、駅のホームでタバコを吸っていても、ダサいTシャツを着ていても、オヤジフェロモンが充満しています。みつこの同棲相手として登場するのが、ヒモを演じさせたら右に出る者がいない荒木一郎。出番は少なめで、一人だけ1970年代感を醸し出しています。そして、みつこを本気で愛する大学生役で出てるのが、当時21才の佐藤浩市。ガマンできずに野外で事に及ぼうとする若造ぶりが新鮮。さらに、みつこの兄役にほぼ映画初出演となるビートたけし。佐藤浩市とはニアミスするだけですが、津川雅彦に絡む場面はいくつかあって、狂気を孕んだ表情はこの頃から顕著。あと、津川雅彦の会社に勤める男役でビートきよしもちょっとだけ映ってます。これらの主要登場人物と1980年代初めの町並みを懐かしい気持ちで味わえる映画でございました。