「ザ・ポスタリスト ~伝説の絵師〜」(2016)

 

香港映画黄金期のポスターを手がけた人物のドキュメンタリーをU-NEXTで観ました。

 

 

監督はホイ・シーワイ。予告編はコチラ

 

マイケル・ホイの息子のホイ・シーワイが父の監督作「ホンコン・フライド・ムービー」(1988)のリマスター版ブルーレイを製作する過程で、映画ポスターを描いたユエン・タイユンの存在を初めて知って、彼の近況を取材しながら、1970年代後半から1990年代前半までの期間で活躍した道のりを紹介していく内容。上海で生まれ育ったユエン・タイユンは、仕事を求めて香港にやって来ます。広告会社でデザインの仕事をしている時に、TVから映画に舞台を移していたホイ兄弟の映画デビュー作のポスターデザインを提案することに。そのデザイン案がホイ兄弟に気に入られて採用。演者の特徴をとらえた個性的なイラストデザインが好評を得て、映画のヒットと相まって、次々と仕事が舞い込んできます。

 

「Mr.Boo!」シリーズをはじめとしたゴールデンハーベスト作品「悪漢探偵」シリーズに代表されるシネマ・シティ作品のポスターのイラストを担当。当時の香港映画を観ている人なら、この人のイラストは必ず見覚えがあるはずです。イラスト界のトップランナーとなった彼の作風はのちに漫画家となる人たちに多くの影響を与えたようで、彼のファン当時の関係者が、その魅力や歴史的価値を語ります。タイユン自体はシネマシティ解散に伴って一時引退して、ニュージーランドに移住。2007年に再び香港に戻ってからは、マンションの一室に工房を構えて、自分のペースでイラストを発表しているとのこと。イラスト以外の仕事では、2005年に建立されたブルース・リー銅像美術コンサルタントも担当したとか。

 

近年ではFacebookでの情報発信等で若いファンも獲得しているようで、創作活動50周年作品展が開催。タイユンの仕事が再評価されている様子も収められています。そして、最大の見どころは、世に出るキッカケとなったマイケル・ホイと40年振りに再会して、当時を振り返って語り合う場面サミュエル・ホイの息子も出たりもするので、監督のファミリーコネクションを使ったキャスティングが利いています。シネマシティ関係者のパーティー場面ではディーン・セキやカール・マッカの姿もあり。あと、香港のスター以外のイラスト集を紹介しているコーナーでは山口百恵の作品もありました。タイユンが彼女のファンだというのは、ちょっとしたオドロキ。ユエン・タイユンの名前と功績を初めて知ることができた貴重なドキュメンタリーでございました。