「人質 韓国トップスター誘拐事件」(2021)

 

ファン・ジョンミンが誘拐される映画をU-NEXTで観ました。

 

 

監督・脚本はこれが長編デビューのピル・カムスン。予告編はコチラ

 

新作映画の記者会見を終えた映画スターのファン・ジョンミン(ファン・ジョンミン)。妻子が外出してるので、たまには一人で自宅でくつろごうと帰宅すると、4人組の男に突然拉致されてしまいます。気がついたら、手足を縛られた状態でどこかのアジトに監禁されているファン・ジョンミン。そういえば、帰宅前に立ち寄ったコンビニの馴染みの店員が最近誘拐事件が発生したとしゃべっていました。スマホのニュース記事で見た被害者女性(イ・ヨム)が目の前で恐怖におののいています。女性と一緒に誘拐された男性は身代金を時間内に送金しなかった上に逃げようとして殺されました。その殺人映像をスマホで見せられて、5億ウォン振り込むから女性とオレを解放してほしいと頼むファン・ジョンミン。顔も隠さずに誘拐を楽しむかのようにあざ笑う不気味な誘拐犯たちご一行は、翌日の22時までに送金しないと2人とも殺すと言い放ちます。

 

犯人は男4人と女1人の5人組。過去にも誘拐の前科がある主犯(キム・ジェボム)坊主頭の男(リュ・ギョンス)禿げた男図体のデカい怪力男それほど特徴のない女といった面々。殺された男性はズタズタに切り刻まれた遺体で発見済。居所不明の女性を必死で捜索する警察。5人組の知人ルートから情報を得た警察は犯人を特定しますが、彼らがどこにいるかは全く分かりません。警察がファン・ジョンミンまでもが誘拐されてることを知るのは映画の後半以降。家に置いてあるキャッシュカードを取りに行ってほしいと頼むジョンミン。翌朝、主犯のギワンが怪力男を連れて、ファン・ジョンミンの自宅に侵入。アジトに残った3人をどうにか欺こうと試みるジョンミン。マネージャーに電話する機会を得るも上手くいかず、外部への連絡が不可能だと悟ったジョンミンは得意の演技力を使って一芝居を打ちます。一度は脱出に成功するも、そうカンタンに逃げ切ると映画は面白くならないわけで・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「인질」。"人質"の意味。英語タイトルは「Hostage: Missing Celebrity」。アンディ・ラウ主演の香港映画「誘拐捜査」(2015)を警察視点寄りから犯人視点寄りに変えてリメイク。新米監督のアイデア勝負の企画モノぐらいの気分で観ましたが、期待以上の面白さ。韓国映画の層の厚さにウンザリします。高級車ドライバーをターゲットに身代金目当てで誘拐した5人組がたまたま有名俳優を拉致。ボス格のギワンは暴力のリミッターが外れていて、鋭い嗅覚と知能犯的資質も持っているため、非常に厄介な犯人像です。ハゲ男と怪力男はギワンに忠実な子分。ギワンの独善性に不満を持つサブリーダー格の坊主頭は女とデキていて、うっすらと3対2の対立構造がある5人。ファン・ジョンミンの大ファンでセリフも覚えてるハゲ男だけは愛嬌がありますが、助けてくれそうにありません。ただ、時間が経つに連れて、彼らが内部分裂を起こしたことが、地獄から抜け出す糸口となります。

 

カーアクションもサスペンスもピリッとした出来栄え。映画を観ていて居たたまれなくなるシーンBEST3に入るとされている(自分調べ)、"今から殺す相手に命乞いをさせる"精神攻撃描写もあります。ようやく逃げ込んだ民家の主がアタマのおかしい爺さんだったりして、緊迫したムードに笑えないブラックユーモア要素をぶち込む語り口は新人離れしてるかも。無名な若手俳優を配した犯罪集団のため、終始予測不可能で不穏な空気に満ちていて、犯人たちの想定外の行動によって、最後まで目の離せない展開が続きます。特にギワンを演じたキム・ジェボム(ミュージカル界ではスターらしい)の冷酷さが絶品。ジョンミンより先に誘拐された女性役のイ・ヨム薄幸美女ぶりも良く、好きになってしまいました。未見の「イカゲーム」に出てたんですね。他にパク・ソンウンも本人役でカメオ出演。ファン・ジョンミンはというと、少しだけ人間的な弱さを見せつつも、知恵を何とか振り絞って、火事場のクソ力を発揮する本人役を抜群の安定感で演じてます。ファン・ジョンミン好きだと2割増で楽しめる作品でございました。