「キル・ボクスン」(2023)

 

凄腕の殺し屋シングルマザーのアクション映画をNETFLIXで観ました。

 

 

監督はビョン・ソンヒョン。予告編はコチラ

 

暗殺請負会社MKエンターテインメントのエース、ギル・ボクスン(チョン・ドヨン)。40代中盤くらいでしょうか。若い頃から名を馳せた伝説の殺し屋で、巷では"キル(KILL)・ボクスン"と呼ばれています。同時に、15才くらいのカワイイ娘を持つシングルマザーであり、普段は優秀な会社員だと称して、娘を有名私立校に通わせています。当然、娘は母が殺し屋だなんてことは知りません。反抗期を迎えて口を聞いてくれない娘とのコミュニケーションに悩むフツーの母親だったりもします。MKエンタは殺し屋養成所も抱える業界最大手。会社を率いるCEOチャ(ソル・ギョング)暗殺請負業界の集まりでも絶大な発言権を持ち、他社の社長連中から恐れられている、ボクスン以上に凄腕の殺し屋です。チャとボクスン昔からの腐れ縁で、何やら強い結びつきがある模様。

 

そんな二人の関係に嫉妬しているのがMKエンタ理事ミンヒ(イ・ソム)。チャCEOといつもイチャついてるので愛人かと思ったら、チャの実の妹でございます。兄好きの妹が、兄と元カノが今でも気持ちが繋がってる様子を見て、異常に敵対心を抱いている構図。暗殺請負業界に話を戻すと、暗殺仕事を"作品"と呼ぶ業界人たちはプロの殺し屋の地位の維持・向上のために、自分が属する会社の命令には絶対服従であるという掟を作っています。ある日、いつものようにトップクラスの仕事を請け負ったボクスン。しかし、暗殺依頼者の目的を知ってしまったために、わざと作戦をミスります。チャCEOが提唱した掟を破って業界の裏切り者となったボクスン。それを知って、ボクスン潰しを開始するミンヒ理事。何とかボクスンを庇おうとする兄を見て激オコのミンヒのボクスンへの恨みはさらに倍増。娘の悩みを真摯に受け止めようともがく母親業と同業者から命を狙われる殺し屋稼業の両立を図ろうとするボクスンがどうなったかというと・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「길복순」。英語タイトルは「Kill Boksoon」。不幸な少女時代を経て、殺し屋との出会いをキッカケに殺し屋になったボクスンが主人公。出産後にシングルマザーになっても一流の仕事人として君臨しながら、思春期の娘とのディスコミュニケーションに悩みます。そして、殺し屋の契約更新時期を機に組織と対立、最後は因縁のCEOと戦うことに。ボクスン演じるチョン・ドヨンが一児の母に見えるのは当然として、デキる殺し屋にちゃんと見えるのが見事。スタントもそれなりにキレがあります。彼女を殺しの世界に導いたチャを演じるソル・ギョングもさすがの存在感。チャの妹役も、ボクスンの娘役も、ボクスンを慕う殺し屋仲間もそれぞれにキャラが立っています。ボクスンの後輩役で個性派ク・ギョファンも出演。中でも、殺し屋養成所のエリートガール役の子にベストキャラクター賞をあげたいです。

 

ストーリーの熟成感こそないものの、映像テクニックを駆使した荒唐無稽なアクションがとにかく楽しく、プロダクションデザインの質も高いです。シリアスな方向に行くかと思ったら、急にコミカルなシーンもぶっこんできて、いろんな映画の要素を自己流に取り込んで、力業で一気に見せる手腕が光ります。昨年公開されて評判だった「キングメーカー 大統領を作った男」もこの監督さん。未見なので、近いうちにチェックしようと思います。それと、一番ビックリしたのが、冒頭でボクスンの殺しの腕前を紹介する相手役で名優ファン・ジョンミンがいきなり登場してきたこと。神戸にある日本最大の暴力団幹部という設定で、カタコトの日本語を延々と一人しゃべり。楽しんで演じてる感アリアリで、あっさり殺されます。