「テンタクルズ」(1977)

 

巨大タコが襲いかかるパニック映画をU-NEXTで観た。初見。

 

 

監督はオリヴァー・ヘルマン。予告編はコチラ。荻昌弘の解説はコチラ

 

8月のカリフォルニア。海岸沿いでくつろいでいるママと赤ん坊海面から何者かが見ていますママがちょっと目を離したスキ赤ん坊行方不明に。近くの港でも溺死体が現れる事件が発生。いずれも強烈な吸引力で海に引きずり込まれて起きたようです。事件を嗅ぎつけた地元のベテラン新聞記者ネッド(ジョン・ヒューストン)がさっそく取材を開始。警察から事情を聞き出すも、事件の解明ができるまで口止めしてもらうよう頼まれます。被害者は無線やラジオなどの音波を発信・受信するアイテムを使っていたことに共通点を見出すネッド。最近、トンネル工事会社が海底採掘作業のために使用していた電気振動装置のせいで魚がショックで大量死している事態が起きていることから、海に棲む何者かの仕業であることが判明。工事会社社長(ヘンリー・フォンダ)は工事の障壁となるネッドの記事が出たことにご不満の様子。

 

映画を観ている人は巨大タコであることを知ってますが、劇中の人物はまだ存在を知りません。ネッドは調査を続けていく過程で、警察が調査を依頼した海洋生物の専門家兼ダイバーのウィル(ボー・ホプキンス)に取材。異変を起こしたタコが犯人ではといきなり推理するウィル。見事正解です。やがて、海洋調査をしていたウィルの同僚墨まみれになって吸い込まれたり、逃げ遅れて死亡。ウィルの妻の友人も海で行方不明になる事件が起きて、海に捜索に行った妻タコに襲われて命を失います。さらにネッドの妹ティリー(シェリー・ウィンタース)息子トミー友達と参加した少年ヨットレースにも巨大なタコが姿を現してヨットは全て転覆子供たちを恐怖に陥れます。愛する妻ヴィッキーを失ったウィルは、施設で調教しているシャチ2頭を連れて巨大タコの退治に乗り出します。自らも水中銃を持って海中へと潜りますが、思ったよりデカかったタコの攻撃力に成すすべもありません。落石で体を挟まれて絶体絶命に陥ったその時、2頭のシャチが颯爽と現れて、巨大タコとのバトルが始まって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Tentacles」。"触手"の意味。「ジョーズ」(1975)の世界的大ヒットに便乗した亜流映画の1本。まがい物が得意なイタリア映画が、サメじゃなくてタコ、顎じゃなくて触手で勝負。低予算でサッと作って、きちんと儲けたようです。監督は製作者オヴィディオ・G・アッソニティスの変名。「エクソシスト」(1973)のまがい物「デアボリカ」(1974)もこの人の仕業です。ギリギリまで引っ張って正体を現す「ジョーズ」とは違って、最後までハッキリと巨大タコの全身像を見せない大胆な作戦で乗り切っています。本物のタコをドアップで映すことで大きく見えなくもないです。クライマックスのシャチvsタコのバトルは接近戦すぎて、何をしているのかが見づらいです。タコが船を襲撃するシーンは思いっきりミニチュア撮影、迫り来るタコが泳ぐシーンは爬虫類みたいです。なお、100万ドルをかけて作ったタコの実物大レプリカは水中に沈んでしまって、使い物にならなかったそうです。

 

予算の多くは、箔をつけるために起用したハリウッドの有名スターにあてられたのかもしれません。一番のビッグネームは特別出演扱いで、後ろ姿で登場するヘンリー・フォンダ。1日だけの出演時間だったらしく、座って電話してるシーンばっかりです。続いてはトップクレジットのジョン・ヒューストン。俳優業もやってるとはいえ、主演が映画監督というのはちょっと弱く、何人かのスターに断られた結果のキャスティングだと容易に想像できます。妹役のシェリー・ウィンタース「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)での名脇役ぶりを買っての起用でしょうか。すでに57才だったため、華がありません。この3人は終盤には出て来ず、代わりに活躍するのはボー・ホプキンスかと思いきや、彼が調教したシャチがタコを倒して一件落着。冒頭の赤ん坊が消えるシーンの演出が一番の見どころだったかもしれません。1970年代にたくさん作られた動物パニック物の中では出来の悪い方かも。