「緋牡丹博徒 鉄火場列伝」(1969)

 

徳島での騒動に巻き込まれるお竜さんを描くシリーズ第五弾を観ました。初見。

 

 

監督は山下耕作。予告編はコチラ

 

明治中期。刑期を終えた重病の子分清吉(高宮敬二)を迎えに徳島の刑務所にやって来た緋牡丹のお竜(藤純子)。帰りに嵐に見舞われて立ち往生したところを江口(待田京介)に助けられて、藍の生産農家に身を寄せて手厚い看護を受けるも、清吉は死亡。農民たちに面倒を見てもらったお礼にしばらく徳島の藍染農家で働くお竜。かつて地元ヤクザの親分だった江口から、緋牡丹のお竜であることを伏せて、おとなしくしていてほしいと頼まれます。江口は徳政一家の元・二代目親分で、足を洗った現在は農家側に立って地主相手の小作争議をサポート、地主側に立つ徳政一家と敵対していました。江口の後を継いだ徳政一家三代目の武井(名和宏)と弟分の鳴門川(天津敏)が今回の敵役。鳴門川は四国の大物である観音寺親分(河津清三郎)と手を組んでひそかに徳政一家を乗っ取ろうともしています。鳴門川の子分に江口とお竜が絡まれているところに、突然現れて窮地を救う子連れのヤクザ三次(鶴田浩二)三次は武井の兄弟分である関係で、徳政一家に草鞋を脱ぎます。

 

数日後に始まる阿波踊りのシーズンに行われる大尽賭博は徳政一家の屋台骨を支える一大行事であるため、その前に小作争議を収束させたいと思っています。武井を差し置いて事を進める鳴門川は農民出身のチンピラがしでかしたイカサマ博奕をネタにして、チンピラの妹を借金のカタにして遊郭に売り飛ばされたくないなら小作争議を終結するよう農家側に条件を突きつけます。拉致されたチンピラの妹を奪還するために鳴門川の賭場バクチ勝負を挑むお竜さん。敵のイカサマを見抜いて奪還に成功しますが、お竜さんを心配して様子を見に来ていた江口が鳴門川一味に襲われて重傷を負います。さらに奪還した娘の許嫁である徳政一家の子分千吉(里見浩太郎)を鳴門川が殺したことがキッカケで、武井と鳴門川の争いも表面化。事態は、農家・江口・お竜・三次・徳政一家の連合軍vs地主・鳴門川・観音寺の帝国軍の対立構造へとなっていきます。

 

鳴門川の横暴を止めたいお竜さんは、後見人の観音寺親分と兄弟分の契りを交わしている道後の熊虎親分(若山富三郎)に相談。お竜大好き人間の熊虎親分はお竜のためにひと肌脱いで、観音寺に話をつけるため徳島に出向くことになります。しかし、お竜の留守中に鳴門川は武井を暗殺、さらに一連の鳴門川の仁義に反する動きを見過ごせずに単身で殴り込んできた三次も返り討ち。そして、阿波踊り当日。死んだ武井に代わって徳政一家の跡目を継いだ鳴門川の仕切りで大尽賭博が開催されます。重傷を押して鳴門川に討ち入りに行こうとする江口を制して、お竜はこれまでの恩義に応えるために鳴門川に近づいて直接対決に挑むのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1969年10月1日。同時上映は中川信夫監督の「妖艶毒婦伝 お勝兇状旅」。本作のお竜さんは徳島→道後→徳島と四国の中のみでの活動。監督は山下耕作が1作目以来の再登板。脚本にはこれまでの鈴木則文に笠原和夫も加わって、多くの登場人物とサブエピソードが入り乱れるストーリーで、見どころはタップリあります。鶴田浩二演じる三次は、自分がかつて殺したヤクザの娘を預かって、徳島の遊郭に身を落としている娘の母を探しにやって来たところでお竜さんと会って争いに身を投じる設定。途中でお竜さんとのバクチ対決もあり。最後の討ち入りに至るまでに悪党どもに袋叩きにあって途中退場します。熊虎親分こと若山富三郎はお竜の依頼を受けてラストで黒幕の観音寺をぶっ殺す漢気を見せて、短い出番ながらカッコイイ見せ場あり。過去4作で熊虎親分の舎弟である富士松で連続出演していた待田京介は別人で登場。江口は親分クラスの大事な役どころですが、富士松はシリーズ名物キャラだっただけに残念。

 

前作でお竜さんの子分だった高宮敬二も別の子分役で序盤に出てきて、息を引き取る前に「緋牡丹のお竜は侠客としては一流だけど、女としてはカタワだ」と言ったヤクザを殺して服役していたことを告白して死んでいきます。その言葉はお竜さんの心にも突き刺さって、これまで以上に悲哀を帯びた表情が発する色気は本作でも健在。右肩のチラリズムもGOOD。決めショット豊富騒動を解決したお竜さんが徳島の地を離れるロングショットがラストシーンで、姿が見えなくなるまでカメラを引いたところで映画は終わりました。他には、大阪から大尽賭博の客人として来ていた小城(丹波哲郎)が真っ白なスーツの出で立ちでシリーズ初登場。争いに直接関わらないものの、憎たらしい天津敏にお竜さんとのサシでの勝負を挑ませる重鎮として貫禄の出演。これで4作連続の悪役出演となった天津敏は念願のボスの座についた後、(なぜかスローモーション撮影による)最後の決闘でお竜さんに殺られます。本作の極悪度は中くらい。あとは、江口の妹役の三島ゆり子が後年のおばさんキャラじゃなくて、清楚なお嬢さんが似合っていたのが印象に残りました。