「十手舞」(1986)

 

石原真理子主演の時代劇アクションを観ました。初見。

 

 

監督は五社英雄。予告編はコチラ

 

死刑を逃れる代わりに"影十手"として江戸町奉行内海(渡瀬恒彦)に雇われた三人の罪人。お役所では裁けない悪人を闇から闇に葬る処刑人となります。それから20年後。影十手の弥助(川谷拓三)が闇稼業のボスである伝蔵(地井武男)を始末しに行ったところ、手下の女性を見てビックリ。弥助が捨てた妻との間にできたお蝶(石原真理子)ではありませんか。妻そっくりの美女に成長したお蝶は、弥助に捨てられた恨みから、伝蔵の情婦兼盗賊となっていました。世にも珍しい、リボンの使い手でもあります。影十手の娘であることがバレて、情婦の座をおれん(夏木マリ)に奪われたお蝶。人質となったお蝶を助けるために伝蔵を殺害した弥助も相討ちで死亡。そこで、お蝶は父に代わって影十手となって悪を成敗することになります。

 

そんなエピソードの合間には、お蝶がリボンを使って蝶のように華麗に舞うダンスコーナーが挿入されます。途中からは夏木マリのダンスコーナーも登場。物語とソロダンス対決の二本立てで映画は進行。で、この頃、江戸町奉行が狙っていた巨悪は、廻船問屋に(捏造した)渡海赦免状を持たせて、闇貿易で得た莫大な利益を藩の財政捻出にしつつ、自分の懐に入れて私腹を肥やしていた松平周防守(小沢栄太郎)。廻船問屋の叶屋源四郎(世良公則)は伝蔵一味と結託して闇稼業を実行していました。闇貿易活動を停止させるため、渡海赦免状を奪還する任務を内海から命令されるお蝶。そして、あるアクシデントで「地獄」の異名を持つ同心の柿崎(竹中直人)の手に渡ってしまった渡海赦免状を巡って、源四郎、伝蔵の跡を継いで闇稼業のボスとなったおれん、お蝶の間で壮絶な奪い合いが展開されるのであった・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1986年9月20日。週刊サンケイに連載していたらしい同名劇画を映画化。新体操のリボンで敵をやっつける女を主人公にした荒唐無稽な設定は必殺仕事人チックでもあり、「キル・ビル」のようなケレン味たっぷりの娯楽アクション作品にもなり得たポテンシャルを感じます。しかし、本作ではケレン味がヘンな方向に突っ走ってしまっていて、失笑しか生まれない結果に終わっていました。当時、若手女優の中で飛ぶ鳥を落とす勢いだった石原真理子の第一回主演作。旬を感じる美貌はさすが。お芝居がちょっと棒気味なのはまだいいとして、アクションのキレに精彩がないのがよろしくないです。肝心のリボンの妙技の魅せ方が良くないのは演出の問題かな。五社英雄は本作公開の2か月後に東映で監督した「極道の妻たち」がシリーズ化するヒットを記録。

 

脇役陣では、ハダカも辞さぬ妖艶な魅力とコンテンポラリーダンスで観る人を釘付けにする夏木マリ、ブルース・リーの怪鳥音入りのモノマネを織り交ぜてバトルを繰り広げる竹中直人の個性が強烈の一言。この二人のハイテンションを受け止められる主役だったらまた違う化学反応が起きていたかもしれないのに、ただ悪目立ちしてるだけになっていて、シリアスで重い演技をしている渡瀬恒彦、川谷拓三、世良公則たちとのバランスが悪いです。一方で、悪ノリしそうな笑福亭鶴光高田純次はフツーの演技をしていて、少し肩透かしを食らいます。エロは抑えめで物足りないですが、からくり屋敷のギミックや、渡瀬と世良が松平周防守の刺客と戦う殺陣の迫力など、観るべき場面もあっただけに惜しい作品だと思いました。