「奇蹟/ミラクル」(1989)

 

フランク・キャプラの名作をリメイクした意欲作をU-NEXTで再見。

 

 

監督・脚本・主演はジャッキー・チェン。予告編はコチラ

 

時代設定は20世紀のアタマくらい。香港に出稼ぎにやって来た田舎の青年コウ(ジャッキー・チェン)は、いきなり詐欺に遭ってほぼスッカラカン。野宿して途方に暮れてる時に、幸運が訪れる赤いバラを売る老婆からなけなしのお金で一輪のバラを買ったところ、人生が一変。対立するギャング白昼の抗争劇巻き込まれたコウは、成り行きでボスの手助けをしたところ、瀕死のボスがコウを指差して死んでしまったため、ボスの遺言だということでいきなり後継者に指名されます。腕っぷしの強さも認められて、事業も大成功クラブの花形歌手ルーミン(アニタ・ムイ)とも恋仲になり、順風満帆。ライバルのギャングや警察に睨まれながらの勢力争いが続くあいだも、ずっと買い続けていた老婆のバラがコウを幸運へと導いていました。

路上花売りの老婆は貧乏なシングルマザーで、稼いだお金の全てを上海の学校にいる娘(グロリア・イップ)の教育費に注ぎ込んでいました。娘を安心させるために、娘宛ての手紙には富豪の夫と再婚した裕福な生活をしていると偽っています。ところが、上海で交際している裕福な貴族の息子の家族を連れて挨拶しに来るという娘の手紙が届いた老婆は、素性がバレたら娘の大切な縁談がご破算になってしまうというんで、ショックのあまり引き籠ってしまいます。姿を見せない老婆を心配したコウは事情を知って、ギャングの抗争そっちのけで、老婆への恩返しをするべく、一世一代の大芝居を打つことになるのだが・・・というのが大まかなあらすじ。。

 

原題は「奇蹟」、英語タイトルは「Canton God Father」。配信されてるのは日本での劇場公開版(VHSリリース版)ではなく、香港公開版(DVDリリース版)とのこと。VHSで観たときの記憶が残ってないため、両者の違いまでは分からず。娘思いの貧しい老女の願いを叶えるために強面のギャングたちがなぜか全面協力するハメになる人情喜劇に、ジャッキー流のアクションをミックス。体を張ったスタントチームのコンビネーションはバッチリ。ギャング間の抗争の構図はうまく整理できておらず、コミカルなドタバタシーンはちょっとクドイかもという点はありますが、オリジナル作品の要素を上手く翻案しています。オープンセットも豪華で、ワンカットの長回し撮影も駆使していて、古き良きハリウッド大手スタジオの映画作りに挑戦している心意気が十分に感じられる、バラエティに富んだエンタメ作品に仕上がっています。

 

コウを支える右腕役にウー・マ、コウのボス襲名に反旗を翻す幹部役にロー・リエ、その子分役でキッキボクシングのスペシャリストのビリー・チョウ(写真右側)、小者感漂う警察隊長役にリチャード・ン、娘の結婚相手の父役にティエン・ファン、冒頭で詐欺を働いて老婆の夫を演じることにもなる詐欺師役にトン・ピョウ、老婆が住む貧民街の住人役でリッキー・ホイ、ついでにユン・ピョウもカメオ出演。その他、ジャッキー映画の常連も多数出演。ジャッキー・チェンも数あるフィルモグラフィの中でもお気に入りの作品とのこと。