「眠狂四郎円月斬り」(1964)

 

シリーズ第三弾をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は安田公義。

 

次期将軍候補と吹聴している徳川家斉の庶子、片桐高之(成田純一郎)変装して川原に出かけて、趣味の名刀の試し斬りと称して、貧乏人の首を狩る遊びに夜な夜な興じています。事件直後にたまたま通りかかった狂四郎(市川雷蔵)が、そこに住んでいる夜鷹や元百姓から犯人だと疑われるも、やがて、犯人が高之だと判明。しばらくして、高之から剣の腕を買われて仕官の誘いを受けた狂四郎。傲慢な権力側の人間がキライなため、愛刀"無想正宗"を譲ってくれないかという申し出も断った挙句、側近の右腕を斬り落して去っていきます。狂四郎は水茶屋に勤める元芸者おきた(浜田ゆう子)のヒモみたいな生活をしている様子。

高之は豪商の娘小波(東京子)と婚約中で、経済的援助も受けています。娘を将軍の嫁にしたい豪商とはWin-Winの関係。首を狩られた父の仇を討ちたい元百姓の太十(丸井太郎)は高之をおびき出すために豪商の娘小波を誘拐するつもりが、間違えて次女である幼女を誘拐してしまいます。弱い庶民の味方に立つ狂四郎は、次女を取り返して高之・豪商陣営に味方したと見せかけて、寝室に忍び込んで小波を手籠めにします。それは、やりすぎだと思います。で、高之、豪商、娘の小波、犯された小波が送り込んだ刺客、おきたの元旦那で罪人の"むささびの伴蔵"(伊達三郎)などなど、頼まれてもいないのにしゃしゃり出たせいで敵ばかりとなってしまった狂四郎の運命はいかに・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1964年5月23日。同時上映は、若尾文子主演の「獣の戯れ」。凶状持ちでヤクザから常に狙われている座頭市と違って、眠狂四郎はフツーに生活していれば何も起きない遊び人の浪人であるため、前作に続いて、自分から事件に首を突っ込んでいく設定。戦う相手に円月殺法の特徴を自ら説明する狂四郎。剣で弧を描くとなぜ相手が戸惑うのかは依然として謎。首が飛んだり、腕がちょん切られたり、女の背中が丸見えになったり、当時としてはエログロ要素面でも攻めています。最大の見どころは燃え盛る炎の中での最終決戦でしょうか。

 

将軍の座を狙う若侍役が成田純一郎、ちょっと頭の弱い太十役が前年にTVドラマ「図々しい奴」(原作は「眠狂四郎」と同じで、柴田錬三郎)で人気を博した丸井太郎、ヒロイン役が東京子(あずまきょうこ)、老中の水野役が佐々木孝丸といった感じ。おきた役の浜田ゆう子は色っぽかったかな。一番目立っていたのは、伊達三郎。豪商の計らいで罪を逃れる代わりに狂四郎暗殺を命じれらた刺客として、花札の手裏剣人を殺す斬新な武器で活躍します。口先だけのキャラが多いイメージだったので、敏捷に動ける伊達三郎はレアかも。もちろん、狂四郎に殺されます。小粒なキャスティングのため、地味な一品になってしまいました。最後に、会話に出てきた水茶屋(メイド喫茶的存在)重箱(デリヘル的存在)といった江戸時代の水商売ワードを初めて知ったことをメモしておきます。