「ジェントルメン」(2019)

 

ワルの騙し合いが楽しい映画をU-NEXTで観ました。

 

 

監督はガイ・リッチー。予告編はコチラ

 

米国出身のミッキー・ピアソン(マシュー・マコノヒー)はマリファナビジネスを一代で築き上げた英国の大麻王。彼が裏社会の一線から退こうとしたところから物語は動きます。まずは、ミッキーが米国ユダヤ人の富豪マシュー・バーガー(ジェレミー・ストロング)に事業まるごとを4億ポンド(ドルだったかも)で売却しようとして接近、その動きを察知した中国人ギャングのドライ・アイ(ヘンリー・ゴールディング)がカットインして買収を提案してきたり、ゴシップ系タブロイド紙編集長のビッグ・デイブ(エディ・マーサン)がミッキーの悪事を暴くための調査を開始したり、その調査をした探偵(ヒュー・グラント)がミッキー陣営にネタを売りつけに来たり、下町のチンピラ格闘家集団が大麻栽培工場を襲撃したりと、さまざまな組織が複雑に絡んだ勢力争いが展開されていく・・・というのが大まかなあらすじ。

 

探偵がタブロイド紙のスクープのために集めた調査内容をミッキーの右腕レイモンド(チャーリー・ハナム)に2,000万ポンド(ドルだったかも)で売ろうとして、どれだけの情報を握っているか、レイモンドに詳細を説明する形でストーリーは進行していきます。各組織の行動をまとめた映画用の脚本を買わないと、タブロイド紙か映画会社に売りつけるぞと恐喝。観客には、探偵がレイモンドに語る話を基にした映像を見せていくという仕掛け。クセのある人物がそれぞれに策略を巡らして事件に絡んでいくため、先が読めません。

 

知性と狂気が同居してる麻薬王のマシュー・マコノヒー、麻薬王に忠誠を誓う仕事人のチャーリー・ハナム、うさん臭い探偵のヒュー・グラント、腹黒いユダヤ人富豪のジェレミー・ストロング、虚勢を張った編集長エディ・マーサン、血の気が多い中国ギャングのヘンリー・ゴールディング(この人だけミスキャストかも)、麻薬王の妻ミシェル・ドッカリーと個性的なキャラのアンサンブルが面白く、その中でも出色なのが、下町のチンピラを束ねて格闘技道場のコーチもしているコリン・ファレルのキャラ。教え子たちと一緒にこの映画用に作ったオリジナルのトラックスーツをそれぞれに着こなして、巨大麻薬ビジネスの抗争に参戦して、想像以上に大活躍します。

 

アクション要素は意外におとなしく、それぞれの悪党たちの本心の読めない会話劇がメイン。クライム色4割、コメディ色3割、サスペンス色3割といった配分でしょうか。彼らの騙し合いの様子をガイ・リッチーがテンポ良い映像でスタイリッシュに描いています。こだわりのファッションも含めていかにも英国的なオシャレ映画ではあるのですが、優れた語り口の落語を聞いた時のような楽しさのある作品でした。小ネタでは、探偵が盗撮をしたことをやりとりするシーンで「カンバセーション…盗聴…」(1974)の話題が出てきたこと、あと、和牛は英語でも"ワギュー"と言うんだなということを初めて知りました。