「仁義なき戦い 頂上作戦」(1974)

 

実録ヤクザ映画シリーズの金字塔の第四弾をHuluで観ました。

 

 

脚本・笠原和夫、監督・深作欣二の組合せではシリーズ最終作。予告編はコチラ

 

時は1963年。東京五輪の前年。前作で神和会系となった山守組に破門された広能組。同じ明石組系の打本組も合わせて、神和会と明石組の代理戦争が広島で激しさを増していきます。神和会(山守組)陣営は若頭の武田(小林旭)を筆頭に、槇原(田中邦衛)江田(山城新伍)、打本組を破門された早川(室田日出男)。もちろん、山守(金子信雄)も。対する明石組陣営は広能(菅原文太)打本(加藤武)、博徒の義西会・岡島(小池朝雄)。どちらかが優勢に立つと、すぐに逆陣営が盛り返すシーソーゲームを展開。市民を巻き込んだ抗争劇によって世間の批判の声も大きくなり、ようやく警察が暴力団撲滅運動、いわゆる『頂上作戦』を開始。別件容疑で組長クラスを一斉検挙されると、両陣営とも疲弊していきます。結局、逮捕されて獄中で顔を合わせた広能と武田は、戦後からの長年にわたって続いた戦いの不毛さを嘆くのであった・・・というのが大まかなあらすじ。

 

「代理戦争」とセットで一気見すべき作品なのですが、ネットフリックスだと、なぜか「頂上作戦」だけがラインナップから外れています。自分だけの利益のためにひたすら保身に走って周りに迷惑をかける山守の劣化版として、打本が前作から登場。対立した山守と打本との間でとばっちりを喰らったのが広能。広島内でのパワーバランスでは山守陣営が圧倒的に優勢ですが、広能を援護する明石組がバックに控えているため、膠着状態が続きつつも、血気盛んな現場の若い衆たちの実力行使によって血生臭い殺し合いに発展していくのが今作。警察が組幹部の首根っこを押さえることによって鎮圧を図ります。政局争いを喜劇として見せた前作の要素は残しつつ、バイオレンス度をUPさせて、一時代の終焉を思わせるラストに向かっていきます。最後に広能と武田がムショで語り合うシーンはシリーズ中の名場面の一つです。明石組岩井(梅宮辰夫)に啖呵を切るシーン等、武田演じる小林旭の存在感が光ります。

 

1作目とは別人(岡島の右腕)で松方弘樹が登場。岡島役の小池朝雄も2作目とは別人での出演。三上真一郎も打本組系の野球賭博の元締め役で1作目に続いて別人で登場。渚まゆみも1作目に続いて別人か。それ以外のサブキャラまでとなると、キリがなくなってきます。今作にエキストラ要員で参加した川谷拓三にいたっては、ある時は警官、またある時は学生と、同一作品なのに別人で出没します。今作からの新顔としては、黒沢年男夏八木勲小倉一郎あたりか。また、広島市民球場で行われている広島対阪神戦の試合映像が一部使われていて、打者が藤田平、投手が安仁屋宗八っぽいので、1973年の試合だとしたら、8月16日だと思われます。なお、映画では何のいいところもない打本のモデルとなった人物は広島カープの後援会作りに尽力、市民球場周りの仕事をシノギにしていたようです。

 

1974年1月15日の公開。併映は「女番長 タイマン勝負」。今回観返したのは、蓑和田良太探しのため。クレジットには名前があったのですが、何度観返しても彼の姿が見つかりません。データベースを見ると、タクシー運転手古川が蓑和田良太の役どころとなっています。で、いろいろ調べてみると、タクシー運転手が車内で女子高生を襲うところを武田組の子分に見つかって多額の賠償金をむしり取られるというシーンがシナリオにあるらしく、撮影もされたのにカットされたということが分かりました。ヤクザに脅されて情けない表情を浮かべる姿が目に浮かぶくらいハマり役だと思うのに残念です。これにより、実質的なシリーズデビューが次作の完結編まで持ち越しとなってしまいました。ちなみに、併映作にも蓑和田良太のクレジットがありますが、こちらの出演シーンもカットされてる模様。