「新・座頭市物語」(1963)

 

人気シリーズが動画サイトにUPされてたので、三作目を観ました。初見。

 

 

シリーズ初のカラーで撮られた座頭市。監督は田中徳三。

 

平手造酒(天地茂)との対決を描いた1作目、平手造酒の一周忌に向かった旅先での実の兄(勝新の実の兄の城健三朗こと若山富三郎)との対決を描いた2作目に続いて、今作では、2作目で市に殺された男の弟が主要人物として登場しており、この頃は、シリーズとしての連続性があります。ひさしぶりに実家の笠間(茨城)に帰るところから物語は始まります。

 

道中で幼馴染と再会する市。故郷では"イチタさん"と呼ばれてたことが分かります。鬼怒川の湯治場で兄を殺された島吉(須賀不二夫)と出会い、果し合いを申し込まれますが、止めに入ったのが市の剣術の師匠、弥十郎(河津清三郎)。不意打ちで襲いかかった島吉の子分を瞬殺で斬りつける市。で、かつて修行していた道場に戻ると弥十郎の妹、弥生(坪内ミキ子)の姿が。市は道場の弟子達に居合抜きを披露。一瞬で四方にあるロウソクを切り倒します

 

弥十郎が持ちかけた縁談に難色を示している弥生は、市に想いを寄せていることが判明。突然告白された市も昔から弥生のことが好きで、戸惑いながらも、ヤクザな生活を捨てて堅気の生活に戻ることを決意、したタイミングに島吉がまたしても果し合いをしにやって来ます。弥生にヤクザな真似はしないと誓った市は仕込み杖を放り投げて「気が済むまで殴るなり蹴るなりしてくれ」と懇願しますが、それでは気が済まない島吉は「丁半博奕で俺が勝ったら、お前の片腕を切り落とす。俺が負けたら無罪放免にする」という条件を提示。サイコロで"丁"が出たら市の勝ち、"半"が出たら島吉の勝ち。そこで、市が振ったサイコロの出目は"半"。不安そうに見つめる弥生を見て情にほだされた島吉は、盲目の市が気づかないように出目を"丁"に替えて、「俺の負けだ」と言って去って行きます。ここは良いシーンでした。

 

一方、市と添い遂げたいことを弥生に打ち明けられた弥十郎は激オコ、"カタワ"で"ヤクザ"で"兇状持ち"の市を罵倒して家から追い出します。弥十郎は長く続いた浪人生活ですっかり堕落していて、水戸天狗党の残党とつるんで身代金目的の誘拐を企んでいたことが分かります。その後、飲み屋で偶然会った島吉と言い合いになった弥十郎が島吉を斬殺する事件も起きて、最後、身代金の引き渡し現場に乱入した市が天狗党の残党を皆殺しにした上で、師匠の弥十郎との最終対決をするというのが大まかなあらすじでした。

 

最後、師匠を倒した市がその現場を見ていた弥生に「市はやっぱりこんな男でした。。。」と言って、1人立ち去っていく後ろ姿で終わるラストショットが切ないです。かなりエピソードが多くて忙しい展開ですが、まだそれほどアクロバチックではない殺陣にもキレがあり、三味線を弾きながら歌う市の姿も拝めますし、市の師匠役の人物設定が少しザツではありましたが、最初のカラー作品で力を入れて作られてるなと感じました。背中に背負った傘の中に仕込み刀を持っている設定もレアです。あと、市の乳母だった婆さん役で武智豊子が出ていて、コメディリリーフとしてのアクセントも効いていました。