「座頭市兇状旅」(1963)

 

シリーズ4作目を動画サイトで観ました。初見。

 

 

監督は3作目に引き続いて、田中徳三。

 

舞台は上州。お祭りの素人相撲大会に飛び入り参加して圧勝した市が賞品のお酒を飲みながら川べりで休憩していると、いきなり何者かに襲われます。難なく返り討ちにする市ですが、市の首には十両の懸賞金がかかっていることと、故郷の母にヤクザになり下がった自分を許してほしいと死に際に聞かされた市はその男の故郷、下仁田を訪れます。

 

夏祭りの準備中の下仁田。 襲ってきた男の母おまき(村瀬幸子)を訪ねた市。おまきは下仁田を仕切る一家の一つである佐吉親分の下で働く女中でした。息子を斬ったお詫びをする市に怒りを見せつつも、ヤクザになった息子にも非があることを承知のおまきは市を許します。息子からの預かり物だと言って、自腹で十両をおまきに手渡す市。近くの旅籠に宿泊した市は、気立てのいい旅籠の娘おのぶ(高田美和)と親しくなりますおのぶが佐吉親分の二代目と恋仲であること、親同士が下仁田の縄張り争いをするライバル同士であることを知ります。おのぶの父島蔵は佐吉側の客分の東九郎(安部徹)と裏で手を組んで佐吉親分と二代目の命を奪って、縄張りを奪うことを画策しています。佐吉を襲うために、島蔵と東九郎は殺し屋として素浪人蛾十郎を雇って、旅籠に住まわせてもいます

 

その蛾十郎が旅籠で一緒に泊まっていた女は、1、2作目の登場したおたね(万里昌代)で、市がかつて想いを寄せた女。久々の再会を喜ぶ市と裏腹に、素浪人の愛人に成り下がった自分を恥じるおたね。一方の蛾十郎は東九郎に盾突く市の姿を見て、いずれ市と対決することを予感します。冒頭で市が斬った男は東九郎の子分だったため、東九郎は市の命も狙っています。お祭り当日、刺客を雇って二代目佐吉を暗殺しようとした時も市の助っ人で妨害された東九郎は、ますます市を目の敵にします。

 

すると、東九郎は他の親分衆を抱きこんで、無法者の部外者である市を殺す役目を二代目佐吉に強要します。下仁田を仕切る親分衆の1人として断れない思いと命の恩人である市への思いの板挟みになる二代目佐吉。苦悩する佐吉を心配した女中のおまきから町を出るように懇願されますが、断る市。自分で手を下せない臆病者の二代目佐吉は市をおびき寄せて、素浪人の蛾十郎と対決させる道を選択。市が足を運んだ寂れた一軒家には、すでに三百両まで跳ね上がった市の懸賞金目当ての蛾十郎が待ち受けていて、さらに一軒家の周りには30人以上の東九郎一味が市の命を狙って取り囲んでいて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

東九郎一派を倒した後は、蛾十郎との一騎打ちとなります。素浪人の蛾十郎は椿三十郎を安っぽくしたようなキャラ設定。前作のラストの居合斬りのシーンもそうでしたが、「椿三十郎」(1962)の大ヒットがもろに影響を与えていると思われます。カメラワークは平凡でストーリーも単純ですが、旅先で知り合った人のいざこざに巻き込まれて、争いに参加せざるをえなくなって、悪玉を最終的に切りまくり、最後は町を出ていく座頭市というマンネリパターンの始まりとなったのが今作だといえます。この場面で、居合切りで徳利と中に入ったサイコロを真っ二つにするのが見どころの一つ。あと、本筋と関係ない役どころで国定忠治が登場、演じていたのは、なんと名和宏でした。