「女賭博師十番勝負」(1969)

 

シリーズ第13作目をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は田中重雄。予告編はありません。

 

兼松組の女壺振り師大滝銀子(江波杏子)が名人の留造(大坂志郎)をサシのサイコロ勝負で撃破して一躍名を上げます。彼女は大企業大滝海運の令嬢でしたが、父の他界後に大滝家と絶縁して賭博師に転身していました。そのため、父の三回忌への出席も二代目社長を継いだ兄の隆治(船越英二)に拒絶されます。兄貴が沢村専務(渡辺文雄)の言いなりになっていて、沢村と繋がりのある新興暴力団の中井興業から資金を借り入れているという経営状況を聞いて心配する銀子。中井興業は人気壺振り師となった銀子をしきりにスカウトしていて、兼松組への義理から銀子が断固拒否しているという関係性もあったりします。中井(小松方正)から絶対に銀子をゲットしろと言われた上野山功一以下の子分たちは兼松組への嫌がらせを開始。兼松組の苦境を察した銀子は単身で中井興業に乗り込んで、バクチで決着をつけようと提案。相手のイカサマを巧みに交わして勝利をもぎとります。しかし、銀子を迎えに行った兼松組親分(北竜二)が中井興業の子分たちに射殺されてしまいます。

 

一方、銀子の兄隆治は沢村の情婦だった芸者の鶴弥(高千穂ひづる)にたぶらかされて会社の金を使い込む体たらくぶり。これは沢村に指示された中井の策略で、中井はさらに銀子を襲撃して利き腕をへし折ろうとします。ところが、偶然通りかかった青年健一(峰岸隆之介)が意識を失った銀子を助けます。健一は銀子が打ち負かした留造の息子で、落ちぶれた父に代わって銀子をバクチで倒そうと修業中の身であったため、あえて名前も告げずに銀子を病院に運んで去っていきます。襲撃時の影響で視力が低下した銀子復帰後の勝負に負けたショックで失踪。その後、旅先の伊豆でまた会った健一が留造の息子と名乗ってバクチ対決を挑むも、銀子の視力が重症だと気づいて勝負はお預け。健一は賭場で偶然会った眼科医(菅井一郎)を紹介して去っていきます。全快して帰京した銀子は、沢村に会社を乗っ取られた上に偽装殺人で死んだ兄の仇を討つために中井組に果たし状を突きつけます。奇しくも、中井が銀子の対戦相手に指名したのは健一で・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1969年5月1日。同時上映は安田道代主演の「関東おんな悪名」。本作で初めて金持ちの家に育った銀子(実は養子)という設定ですが、なぜか賭博師に転職する役どころで、全編を通して『サイカブ』という3つのサイコロの出目で勝ち負けを競います。前作同様、さらしを巻くシーンがないのは残念。峰岸隆之介(峰岸徹)の壺振り師ルックは歴代最強のカッコ良さ。前職がパチンコ屋の釘師という渋さで、父が娘同然に育てた養子(夏純子がキュート)とのラブロマンス要素もあり。コメディリリーフ担当は正司照江・花江。桂高丸・菊丸の出演シーンはカットされてるのかな。なお、ヤクザの子分役でシリーズのほとんどに出演していて、コミカルな小ボケを度々かましていた三夏紳が、小松方正の説教中に透かしっ屁をして怒られるという、今までで一番目立つボケを披露。本番中に自分で笑っちゃうカット(背後の脇役さんたちも笑いをこらえている)をそのまま使用していて、次のシーンでは屁をこいたことを謝罪する場面まで入れてるところが本作最大の見どころです。

 

 

 

 

「女賭博師さいころ化粧」(1969)

 

シリーズ第12作目をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は井上芳夫。予告編はありません。

 

甲州一帯の賭場を仕切る一切の権利を賭けたサイコロ勝負で三田村組の代打ちのイカサマが発覚。風間組の勝利となって、イカサマの責任を問われた辰造(水原浩一)はその場で首をドスで掻き切って自殺。縄張りを失った三田村(北竜二)は辰造の無実を信じていますが、相手側の疑惑を晴らすことができません。父の訃報を聞いた娘の銀子(江波杏子)は、クラブ歌手を辞めて父の跡を継いで壺振り師になることを決意。まずは、父が最後に戦った"緋桜のお秋"(久保菜穂子)に付きまとって、お秋の賭場での中盆(進行役)となった銀子。女性コンビによる壺振りは人気を呼んで、各地に引っ張りだこ。その間、お秋の指導で壺振りの技術を着実に磨いていった銀子は、憎しみの対象であるはずのお秋を尊敬する気持ちが芽生えていきます。やがて、美濃の新庄(内田朝雄)に気に入られて壺振りの契約期間を1ヶ月延長した2人。割を食ったのは、その座を奪われてしまった木壷の半次(大坂志郎)。この男は銀子の父がお秋を勝負をしていた時に突然現れて、父のイカサマを暴いて自殺に追い込んだ人物です。

 

縄張を拡張した風間(成田三樹夫)は、三田村の最後の砦である日本三大盆の「野狐三次供養盆」を仕切る権利をも奪おうとしていました。そんな折、同じタイミングで風間組に呼ばれて甲州に戻って来たお秋と銀子の盆に、出所したばかりの辰造の一番弟子だった政吉(露口茂)が現れて、お秋に睨みを利かせます。政吉にとってお秋は師匠の敵でもあり、元カノだったりもします。その後、病気の三田村の治療代のための盆をこっそり開いたことが風間組にバレた銀子追放されます。そして、「供養盆」の壺振りをすることになっていた政吉は風間組に襲われて死亡。やがて、風間組を裏切ったお秋が政吉に代わって「供養盆」の壺振りを務めることを旅先で知った銀子。銀子が三田村組に戻ってきた頃、風間とグルだった半次お秋のイカサマを暴いて、袋叩きにされたお秋は息を引き取ります。半次は壷振り師にイカサマの濡れ衣を着せるイカサマ技を持つ名人で、銀子の父に続いて、お秋もそのワナにハマってしまいます。父も師匠も殺された銀子は雪辱を果たすべく、半次の賭場に乗り込んでいって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1969年2月8日。同時上映は峰岸隆之介主演の「出獄48時間」。今回のお銀さんは元クラブ歌手の賭博師役。挿入歌でもある『眠れぬ夜のために』の歌唱も披露。残念ながら、恒例のさらしを巻くシーンはありませんが、師匠と一緒に入浴するサービスショットがあります。その女性同士の師弟コンビが見どころの一つで、自分を父の仇だと逆恨みしているのを承知で、銀子に壺振りの技を伝授する久保菜穂子が魅力的。少ない出番ながら、かつてお秋と愛し合っていた政吉演じる露口茂の渋さもなかなか。お秋はボタンの掛け違いで別れてしまった政吉の仇討ちを果たせずに死亡。そして、真の宿敵である大坂志郎が仕掛けるイカサマを見破れるかどうかがクライマックスの見せ場。間一髪のタイミングでサイコロのすり替えを見破って、辰造と政吉とお秋の無念を晴らします。悲願の勝利に涙した銀子が父辰造とお秋の追悼も兼ねた「供養盆」壺振りを務める姿で映画は終わります。あと、話の筋と関係なく、銀子に勝負を挑む女で笠原玲子がシリーズ2度目の出演をしていました。

 

 

 

 

「安珍と清姫」(1960)

 

クソマジメな坊さんと勝ち気なお姫さまの悲恋物語をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は島耕二。予告編はありません。

 

舞台は紀州。ある日、真砂の里の庄司清継(見明凡太郎)の娘清姫(若尾文子)がキツネ狩りに興じていた時、清姫の弓矢が道成寺への参籠に出かける道中だった修行僧安珍(市川雷蔵)の左腕に命中。清姫は安珍たちを屋敷へ連れて帰ります。安珍と同行していた道覚(小堀阿吉雄)が女中に色目を使う俗物であるのに対して、負傷した安珍は介抱しようと近づいてきた清姫の親切心を修行中の身ゆえと言って断固拒否する姿勢を崩しません。沢山の男たちに求婚される美貌の持ち主である清姫は、安珍のそっけない態度が気に食わない様子。しばらく経った火祭りの夜、道覚は女中の早苗(毛利郁子)と庄司の屋敷にあった金を奪って夜逃げします。一方の安珍が近場の小さな温泉で治りかけた体を癒していると、おもむろに全裸になった清姫急接近2人で幸せに踊りたいという乙女の恋心を語ると、安珍も御仏に仕える身でなければ喜んであなたを受け入れると告白。すると、清姫はとうとう男の本性を現したなと言ってケタケタ笑い出します。煩悩に負けた安珍はさらなる修業に励むべく、道成寺へと向かいます。

 

一方、安珍の心を弄んだ清姫はちょっと反省。かねてから求婚していた関屋の長者友綱(片山明彦)が真砂の里へ水を引くことを条件に嫁入りしろと申し入れているパワハラ縁談も頑なに拒否。そして、友人の桜姫(浦路洋子)から修業に打ち込む安珍の近況を聞いて、自分の愚かさを反省滝行に勤しむ安珍を電撃訪問します。一度は拒絶する安珍でしたが、身投げする覚悟でやって来た清姫と一夜を過ごします。でも、翌朝になってやっぱり後悔した安珍は清姫に黙って、どこかへ消えてしまいます。失意のまま屋敷に戻った清姫は、友綱との縁組みを勧める父に安珍への愛を告白してまた家出。安珍も苦悶の末に、もう一度清姫のいる真砂の里に向かっていました。2人が再会しそうになった時、村全体の幸せのために友綱との結婚を選んだ清姫に会わないでほしいと清継の下僕に言われて、観念した安珍はやむなく道成寺に戻ります。また会えずじまいの清姫が帰宅すると、娘の想いを無視して無理に縁談を進めた責任を取った父が自殺していました。自分の好きな道を歩めという遺言を読んだ清姫は、もう一度安珍を追い求めるも・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1960年8月9日。同時上映は山本富士子主演の「夜は嘘つき」。歌舞伎の『娘道成寺』にもモチーフにされている安珍・清姫伝説を小国英雄が脚色した一品。安珍に裏切られたと思った清姫が大蛇に化けて、安珍のいる道成寺ごと焼き払うというあらすじだけは何となく知っていました。本作にはいくつかアレンジが施されています。なんといっても、主人公を雷蔵と若尾文子が演じているのが最大の見どころ。雷蔵は仏の道を精進したいだけなのに、美女に一方的に迫られてずっと苦悩する役どころ。相手が若尾文子なら悩んで当然です。安珍を何となく気になる程度の存在に思っていただけの清姫も、自分の浅はかさに気づいた時に真の愛情が生まれていることにも気づきます。未練を絶ち切って道成寺に徒歩で向かう安珍に猛スピードで追いつくも、振り切られてしまった清姫は絶望して身投げ。すると、突如雷鳴が轟いて、道成寺で祈りを捧げていた安珍は気絶。そこからは特撮映画になって、大蛇となった清姫が道成寺に向かってニョロニョロと突進。娘が身投げしたと聞いた安珍は清姫に違いないと言って暴れ出します。そんな安珍の暴走を治めるべく、鐘に閉じ込める坊さんたち

 

ようやく、道成寺に到着した大蛇は女性の姿に変身キツめのメイクをした清姫が急に現れて、坊さんたちはビックリ。清姫が鐘の周囲を一周して長い紐を落とすと、また大蛇に変身して鐘に巻きつきます。大蛇は口から火を噴いて寺全体を焼き尽くす、といった夢から目覚めた安珍は坊さんたちの制止を振り切って、道成寺を飛び出して清姫が身投げした川へと向かいます。息絶えてしまった清姫を抱きしめた安珍は、これからずっと傍にいて冥福を祈り続けると誓って、そのまま本当のお姫様だっこをして去って行く姿で映画は終わります。勝ち気な姫が一転して一途になる心情変化の過程の描き方がアバウトなところと、真砂の里と道成寺がどのくらい距離を隔てているのかが分からないために追跡劇部分の苦労が伝わりづらいのは難点。間接キスを暗示する笛のアイテムは効果的で、時折映る大自然ロケーション魅力的坊主頭の雷蔵には清貧の色気があって、若尾文子は若尾文子史上では中くらいの美しさでした。あと、本作は若尾文子のあられもない姿が一瞬映ることでも有名らしく、しっかりと拝ませていただきました。