「遠い一本の道」(1977)

 

国鉄労働者家族の30年を追った物語をU-NEXTで観ました。初見。

 

 

 

 

監督は左幸子。DVDリリース時の予告編はコチラ

 

北海道の追分保線区にある国鉄職員住宅で暮らす保線職員の滝ノ上市蔵(井川比佐志)が、30年勤続を表彰する式典が行われる札幌妻の里子(左幸子)と向かいます。帰宅後、親しい身内が集まって自宅でささやかな祝杯を上げます。父と同じく国鉄職員となった徹(磯村健治)隣人で同僚の岩田夫妻が市蔵夫妻と談笑していた時、札幌で銀行員をしている娘の由紀(市毛良枝)が遅れて到着。しかし、由紀が恋人の佐多(長塚京三)を突然連れてきたため、不機嫌になった市蔵はちゃぶ台をひっくり返して暴れ出します。宴会はお開きとなって、後片付けをする里子は自分たちが結婚してから現在までの日々を思い返します。ベテラン作業長浅井(殿山泰司)の下で線路工手として線路の保守に勤しむ市蔵を主婦として支えていく里子。決して多くない給料では、幼い娘と息子がいる4人家族が生活していくのがやっとです。やがて、国鉄にも組織改革・合理化の波が押し寄せて、機械化で職を失う危機に立たされる市蔵。昇格試験にも苦労してイライラは募るばかりで、内職を始めた里子に八つ当たりで暴力を振るうことも。里子もより高い稼ぎを求めた保険外交員のアルバイトで成果を上げられずにいました。

他の職員たちも生活が苦しいのは同じ。労働組合活動が活発となって、家庭を守る主婦たちも一丸となって待遇改善を訴えます。やがて、生産性を追求する国鉄側の方針に反対する"反マル生闘争"が激化。そんな折、車掌をしていた岩田が車両トラブルに巻き込まれて右足切断の重傷を負います。組合幹部となった市蔵と共に活動していた岩田でしたが、組合の弱体化を狙う国鉄側の引き抜き工作によって組合員として闘い続けるか、甘い誘惑に乗って生活の安定を求めるか、岩田(前田昌明)苦渋の決断を迫られます。大人たちが苦労して生活を守ろうとする姿を見て、社会人へと成長していく由紀と徹。ここでまた現代に戻って、由紀が父の同意を得られないまま、佐多の故郷で結婚式をを強行することを佐多の知人(西田敏行)から聞いた里子。その状況をそれとなく察した市蔵は、営林署で懸命に国有林の間伐作業に没頭する佐多の姿こっそり見に行ったことで考えを改めたのか、里子と一緒に長崎での結婚式に立ち会うことを決断します。佐多が生まれ育った端島(軍艦島)廃墟となった土地を訪れた市蔵は、沈む夕日を見ながらこれまでの人生に想いを馳せて・・・というのが大まかなあらすじ。
 

劇場公開は1977年9月11日。製作にクレジットされている国鉄労働組合が1億円を出資して、左幸子が唯一監督したという珍しい作品。全面協力だから可能になった鉄道場面数々。実際の国鉄職員のインタビュー音声・映像もドラマの合間に挿入されます。線路を守る仕事を地道に続けてきた市蔵。長らく闘ってきた雇用側から永年勤続表彰をされて、誇りに感じる一方で複雑な思いも頭をよぎります。そこに舞い込んできた娘の結婚話で理不尽にブチ切れて、昭和のガンコ親父丸出しになる市蔵役の井川比佐志はベストの配役。内助の功でずっと支えてきた妻は監督自らが演じています。嫁ぐ日の若い姿も自作自演。市毛良枝長塚京三の若々しさも見どころの一つ。そして、かつて炭鉱需要で賑わった軍艦島(1974年に閉山したばかり)寂れた風景たっぷり映ってるのもとても貴重でした。重労働現場の遺産となった軍艦島の姿に国鉄の行く末を重ねたのか、市蔵が永年勤続表彰でもらった腕時計を海に投げ捨てるという「ダーティハリー」のエンディングみたいなシーンで映画は終わります。

 

 

 

「ワンダーマン」シーズン1(2026)

 

『ワンダーマン』の映画化作品に出演する俳優の秘密を描いたドラマをDisney+で観ました。

 

 

ショーランナーはアンドリュー・ゲスト。予告編はコチラ。全8話。

 

売れてないくせに役柄の掘り下げがクドすぎる俳優サイモン・ウィリアムズ(ヤヒヤ・アブドゥル=マティーン2世)。TVドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー』撮影現場でスタッフにそのしつこさをウザがられて、チョイ役を解雇されてしまいます。私生活では、同棲中の恋人ヴィヴィアンにもフラれます。ある日、ひょんなことでベテラン俳優トレヴァー・スラッテリー(ベン・キングズレー)と出会って、1980年代に映画化されたスーパーヒーロー映画『ワンダーマン』のリメイクをオスカー監督フォン・コヴァック(ズラッコ・ブリッチ)が手がけることを聞きつけて、サイモンもオーディションに参加。サイモンにとっては子供時代に父に連れて行かれた映画館で観た思い出の映画です。演じることを生き甲斐にしているトレヴァーは神経質なサイモンを上手くなだめる術を持っているようで、サイモンにとって年の離れたトレヴァーは唯一心を許せる友になっていきます。トレヴァーもサイモンの人柄に惚れますが、最近FBIに逮捕されたばかりのトレヴァーはDODC(損害対策局)の監視下にあって、サイモンに近づいて彼の情報を収集するという政府取引をしているという裏事情があります。

 

恐るべきパワーを有していることはサイモンも自覚していて、それを知るのは一緒に育った家族のみ。その事実をひた隠しにして、役者として成功する道を模索しているサイモン。今回のオーディションに賭けるサイモンを叱咤激励するトレヴァー。サイモンが超能力を発揮する決定的な場面を目の当たりにしても、当局に報告することを控えるようになっていきます。その後、いろいろ起こるトラブルを2人で協力して回避しながら、監督による最終選考を経て、サイモンがワンダーマン役に、トレヴァーが相方のバーナビー役をゲット。しかし、撮影開始後に起きたあるやりとりでトレヴァーが内通者であることを知ったショックで、サイモンはトレヴァーとの仲を解消。怒りを抑えられなくなったサイモンは人がいなくなった撮影スタジオで爆発事故を起こしてしまいます。ハリウッドでは超能力者を登用しないという決まり事があって、サイモンの犯行がバレると、クビになることは免れません。そこで、責任を感じたトレヴァーがサイモンの身代わりになる大胆な行動に出て・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Wonder Man」。映画『ワンダーマン』の主役に抜擢された無名俳優が実は・・・というメタ構造になっているユニークな設定。スーパーヒーローがパワーをバキバキに発揮するギミックをここぞという時の隠し味程度にとどめて、演技にこだわりを持つ俳優2人の意気の合ったバディ物の会話劇(ヤヒヤ・アブドゥル=マティーン2世とベン・キングズレーの掛け合いがバツグンに良かった)をメインにしている点がとても面白く、実質的には、ハリウッドで役者稼業を続ける人たち悲哀を描いた内幕物のコメディになっています。とはいえ、ラストでしっかりとこれはMCU作品だったなと思い出させてシーズン1は終わります。ベン・キングズレーが演じるトレヴァー・スラッタリーは、「アイアンマン3」(2013)でテロ組織テン・リングスのボスであるマンダリンの偽物を演じる俳優というキャラクターとのことですが、そんなことをすっかり忘れている私のようなMCUに詳しくない人間でも楽しめる作品でございました。

 

 

 

「アフリカ残酷物語 食人大統領アミン」(1981)

 

食いしん坊の独裁者を描いた実録映画を観ました。初見。

 

 

監督はシャラド・パテル。予告編はコチラ。当時のTVCMはコチラ

 

1971年1月25日、ウガンダ軍参謀総長のアミン(ジョセフ・オリタ)が軍事クーデターを起こして、オボテ大統領の左翼政権を倒します。これでいい国になるぞと国民たちは歓迎。ハデなパレードも開催されて、国民に向けてカッコいい抱負を語るアミン。しかし、これがとんでもない大間違い。アミンは史上類を見ない独裁者の道を歩みはじめます。まずは自分に刃向かう反抗分子投獄すると、すぐに処刑街のチンピラ等を登用した秘密警察は数十万人の同胞を虐殺。ウガンダをイスラム教の国にしたいからと、キリスト教を弾圧。外国人、学生、政治家などは次々と国外追放。国の内情を探ろうとする海外のジャーナリストは銃殺。うら若き乙女をナンパするとすぐに凌辱。乙女が自害すると逆ギレ。といった感じでやりたい放題。国交のある欧米先進国も、最初のうちはその暴政を黙認していました。

 

冷凍庫殺害した男の首を保存していたり、殺害した妻の遺体を切り刻んで子供に見せびらかしたり、挙句の果てには、人の生肉を呪文を唱えながら頬張るパフォーマンスも披露するなど、アミンの常軌を逸した行動は留まることを知りません。ウガンダの経済事情もどんどん悪化していって、さすがにアミン政権に異を唱える勢力(ウガンダ解放国民戦線)が台頭。アミン自身が爆破テロで危うく命を奪われるピンチにも見舞われます。やがて、イスラエル発の旅客機をハイジャックした国際テロリストがウガンダのエンテベ空港に人質と籠城する事件が発生。アミンは白人女性と黒人女性をはべらかせてベッドでよろしくやっていましたが、ここでの対応のまずさから反対勢力の勢いが強さを増していきます。そして、タンザニア軍と手を組んだウガンダ解放国民戦線の連合軍が決起。あっさりと制圧されたアミンは・・・というのが大まかなあらすじ。


原題は「Rise and Fall of Idi Amin」。"アミンの栄光と没落"といった意味。東アフリカのウガンダ共和国で独裁政治を行ったアミン大統領を虚実織り交ぜて描いた実録モノ。アミンが中東に亡命してすぐに製作されたというショックスプロイテーション作品。新聞広告を見ただけで残酷さに恐怖を感じて、長らく観なかった映画の四天王は、本作と「食人族」(1980)「西太后」(1983)「カランバ」(1983)です。監督のシャラド・パテルは英国生まれのインド人で、ケニアやウガンダでインド映画の配給をしていたらしく、アミン大統領のアジア人(特にインド人が多かったらしい)追放事件でもろに打撃を受けた経験が本作を監督するに至った理由のようです。それで、人肉とされる生肉を食べる目玉シーンは一応ありますが、フツーの食用肉を口に入れているだけでした。実際のアミンは鶏肉しか食べなかったそうです。