新宿レコ屋⑩ | レコ屋巡りの夜

レコ屋巡りの夜

塩化ビニール(=レコード)中毒患者のトホホな日々を綴りたいと思います。
オリジナルが欲しいけど高いなら諦めます。

(前回からの続き)

吉祥寺H店を後にした男は再び決断を迫られる。時刻は既に17時過ぎ。スタートが14時と遅すぎ&マグマ大使事件の影響で、R店、インフラD店&大量在庫H店を見終わってこの時間。ゲットしたのは3桁3枚と。計1500円程という緊縮財政政策的にはナイスな展開ですが、堀り師的に物足りんと男は新宿に向かうことに。

 

20世紀後半の堀り師にはこの後、西荻窪(ファン・レコード)→荻窪(レア&月光堂)→高円寺(サークル・デリック、55レコードとか色々)→阿佐ヶ谷(テンダー・レコード、33レコード)→中野(店名忘れた)→新宿(廃盤屋多数)…と、レコ掘り師悪魔のお遍路が敷かれていたのも今は昔。その殆どの店が今やなくなってしまった。

 

考えてみればこれらの店は全て個性的な、独立系レコ屋達で、今現在東京近郊で元気なのはD店、H店、渋谷T店、吉祥寺&池袋&江古田のC店くらいだろうか?巨大資本の波に飲み込まれたのか、はたまたヤフオクの前に散ったのか。レコなんてエアコンの効いた部屋で、youtube 見ながらヤフオク等でポチっとやれば買えるのに、わざわざ交通費を出して汗をダクダク流しながら人波掻き分け、レコ屋の新入荷コーナーに被りつくオッサン堀り師よ。お前は何がやりたいんだ?(=やっぱりレコ屋巡りですかね。何か見つけたときは最高ですよ、皆さん。笑)

 

夕暮れとはいえ、むせ返るような暑さが消えるわけもないJR新宿駅へ降り立った男は、一路東口へと向かった。何件もあるレコ屋をこの時間から周る時間もないしと、東口D店帝国主義の入り口である、1階路面店(あの辺りはD店がありすぎて名前が分からない)へと突撃する。

 

この日は休日ってこともあるんだろうけど、18時頃なのにお客が多い多い。オッサン~若人~オッサンの群れムレ群れ!明日は仕事やろ、さっさと帰って早く寝ろや!今更中古レコなんか掘ってんじゃねぇ!…と全て自分に当てはまる言葉が脳裏を過る。う~皆好きねぇ、中古レコ(笑)。

 

さあさあさぁと、一列置きに2~30枚単位でエサ箱に叩きこまれた今週の新入荷とやらを掘り始める。それにしても皆この新入荷を漁るもんだから、誰も彼も見るのが早い!人がゆっくりパラパラ見てるってのに、

 

「早よどかんかい!」

 

とばかりに、高速でレコを繰りながら左右から接近するレコオヤジ。こんな連中はレコを見るのも雑だし、そのペースを合わせるのも嫌なので、自分はいつものペースでレコを掘る(決して暴走オヤジ族に道は譲りません)。すると開始早々にこれが出てきた!

 

Harvey Mandel - Get Off In Chicago ( Ovation OPL - 3009 ) 国内盤 プロモLP 1971年 1,900円

 

オオッ、ハービー・マンデル!それも国内盤!…ってこれ持ってるんだよなぁ(笑)。金もないし、2枚もねぇと。しかしプライス・タグに悪魔のコメント『見本盤 WLB』と。サンプル・白(レーベル…WLB = White Label の意味)だと!? 確か自分の持ってたやつは通常盤だったな…。でもあれは3,500円もしたんだよなぁ。これはそれよりずっと安い&プロモの白で1,900円と。これをそんなこともつゆ知らず、明日の仕事のことも無視して遊びまわっているオヤジ堀り師(=it's ME! )に渡すのか?ぬあああぁ、許せん!…いやぁ…しかしもっと他に何かあるかもと一旦棚に戻す。その後捜索を続行して掘り捲るがこれといった目ぼしいものもなし。結局これを抱えることに。

 

 

因みにHarvey Mandel と言っても知らない方も多いでしょう。この方バンドに所属して渡り歩く…というより、独立系の60’sUS ブルース・ロック・ギタリストと言った方が良いのだろうか?自分が好きなUSオルガニストのBarry Goldberg のアルバムに、これまたUSブルース・ロックの重鎮 Charlie Musselwhite なんかと絡んで何枚も私好みのアルバムを出しているお方。

 

 

一応世間的には、Canned Heat - Future Blues (1970) の時のギターであり、John Mayall - USA Union (1970) のギターでもあり。確かMick Taylor の後釜に Rolling Stones にも誘われたという話も(実際、Black And Blue には3曲に参加してます)。

 

 

 

予想通り、盤は未使用レベルのピンピンだ。こんなの国内のラジオで流すDJなんていないだろうし、評論家が聴くって言っても1回きりだろうしと。状態ピンピンなのがプロモ白を狙う理由の一つでもある。

 

これは3枚持ってますよの図(国内盤2種:通常盤3500円&プロモ1900円、US盤300円)。よくこういうのを見せている堀り師ブログがありますが、本人が満足しているだけです。傍から見れば、

 

「へ~…(その金をもっと他に…)」

 

と言ったところですが、買った本人には意味があるのだ(というかあって欲しい。完!)。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  

 

とまぁ、そうそうに新しい発見はなかったけど自分的定番を確保し安心した男は、再びゆっくり掘り進める。すると今度はこれが出た:

 

Jennifer Warnes – Same Title ( Arista IES-80802 ) 国内盤 LP 1975年 350円

 

見た瞬間手に取ってしまった。この人のアルバムは持ってなかったんですよ。Discogs で見てみればどれもこれも安いはずなのに、これより前のアルバムはなぜか国内では気軽に買えない値段になっている。世間一般には、この曲で彼女を知ったんじゃないですか(自分もそうですが)?

 

原題は『An Officer and a Gentleman』というタイトルだったのか、この映画。

 

この映画の主題歌に推薦されたJennifer Warnesだったけど、監督が難色を示し頓挫しかける。「彼女の声が甘すぎる」と。そこで彼女は一度も会ったことのないJoe Cocker とのデュエットを提案。映画公開が迫る中ツアー中のJoe を呼び寄せ1日で録音を完了。この主題歌がリリースされたのが、映画の封切1週間前だったとか(違っていたら訂正プリーズ)。良い曲です、何度聴いても。

 

長い間いつか彼女のアルバムを買ってみよう…と思っていたら、この出会い。ジャケ・帯そして盤もピンピンだったしで買わぬ理由はなかろうと。それにしても帯には『華麗なるデビューを飾る期待の新人女性歌手ジェニファー』と。これ彼女の4枚目のアルバムなんだが(笑)。

 

アルバムの出来は良かったんですが、この人をずっとSSW ( Singer Song Writer ) だと思っていたのに、何と自作は11曲中1曲のみ(涙)。この頃の女性SSWにありがちと言えばありがちですが。

 

それに…アルバムが良かっただけに悔やまれるのが、とにかく音が凡庸(トホホ…)。音の引きこもりとはこのことか。それともこれが国内盤の宿命か。このブログのリンク先レコ仲間さんは、その殆どがオリジナル盤至上主義者。国内盤擁護派は山崎さんと私くらいしかいないのではないか?皆の衆の高笑いが聞こえる。

 

『あんた、国内盤が音悪いの分かってるのに買うからだよ!』

『ヒャッハ~~ やっぱオリジナル盤だって!』

 

うぬぬぬううう!国内盤を笑うとは何事ぞ!国粋主義者・レコード極右論者の拙者が街宣車を引き回して、日本各地のレコード・シティーに行ったろか!…と言っても音は良くならないので、多分オリジナル盤を買うのでしょう(笑…完!)。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  

 

そしてもう一枚くらいないか…とプログレ棚の下に安レコがまとまっているのを発見!最後は腰を落として、見捨てられしレコ墓場の住人達を救済活動。ん?以外にダメレコばかりでなく、売れ残ったナイスレコも入っている。そして引き抜いたのが…:

 

V.A. - Underground '70 (CBS SPR 3) Ger LP 1969年 紫盤 450円

 

ラミネート・ジャケの憎い奴(pink islandさん無断借用)。しかもパープル盤ですよ?オリジナルはポスターが入っていたらしい(これにはない)。

 

何でこんな寄せ集め盤を?実は最近の自分の一番のお気に入りジャンルが、Krautrock (=直訳するとドイツのロック…俗に1970年頃のドイツ・プログレ)なんですな。そもそもドイツなんてパワー・メタルくらいしか興味もなかったんですが、悪魔のアプリ・youtubeにて1970年頃のサイケ・プログレ・ブルース・ロックを聴いていると、大体自分の知らない&スゲ~~と思ったアルバムが尽くこのクラウト・ロックに集中。しかしその全貌が掴めない(ジャーマン・ロック集成探してます!)。で、これで勉強しようと。安いしねと。

 

で、意気揚々と帰って早速レコでも聴くかな…と盤を取り出せば、レーベルに見慣れた人の横顔が。ん?これアル・クーパーでは(汗)?まさか、ドイツオンリーの "Underground 70" と題されたアルバムに?しかしジャケ裏をよく見れば…

 

A-1はChicagoではないか!その他もFlock, Al Kooper, NRBQ, Moby Grape…とどこにでもあるやろこれ(よく見りゃ表のバイオリン弾きはFlockやん)?オイオイ、1970年のドイツ地下音楽ってシカゴだったのか???F**K!!!!!

 

頭に血が上りながら実際に針を落とすと…A-2の途中で針飛び!しかも周回ノイズ&羽生君もビックリの半永久的連続33回転ジャンプ!ぬあああああ!キズなんて一つもないのに!

 

…その後このドイツ地下音楽盤は、元の店へと返却されたという…(完!)