【おさんぽ行くか!】 3. 教育的指導 | 日々コギ精進(仮)

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レオ…
ティーダ…
いつまでも君達を愛していますよ…

《教育的指導》


ティーダを我が家に迎えた直後のおさんぽで「ウチの子はコーギーちゃんとは相性悪くてね」と言われたりとか、ティーダの姿を見た途端に踵を返すとか、明らかに避けられてることが多々あった。この頃の彼はいかにもパピーな動きはしていたものの、吠えたり害を加えるような動きをすることは一切無かった。

「成犬ならともかくパピーなのになぜ?」

「挨拶程度のスキンシップはさせたいんだけどなぁ」

というのがその時の私が抱いていた気持ちだ。


パピパピ期には2件の病院に通ったが、どちらの病院でもどの獣医師でも初対面では「コーギーちゃんはねぇ」と警戒された。幸いにもティーダは人間には全く興味が無い子だったので「この子は大人しいねぇ」と言って貰える側ではあった。ただ、吠えない、噛まない代わりに落ち着きは無かった。隙あらば診察台から飛び降りようとする。病院が怖いわけではなくて診察が暇でつまらないから「じゃあ帰りまーす」という感じ。彼が病院で真剣に集中するのは診察終わりにたったひと粒のオヤツを貰う時だけだった。


そんな病院で落ち着きのない彼は当然ながらおさんぽでも落ち着きのない子だった。それどころかおさんぽ中は”動きがヤカマシイ”という感じだった。ワンコにはとにかくプロレスを仕掛け、歩いていてもいつでもどこでもあっちへこっちへと行きたがる。彼の動きは止めようと思えば止めることは出来た。オヤツさえあればそれはもう容易に。でもオヤツが無ければどうにもならなかった。


もう一度言うが彼は本当に

Nobody can stop me!!! Ahahahaha!!!

が決め台詞の緑色の仮面を被った怪人みたいだった。この頃はそんな彼のコントロールに悩んでいた。「ここまで落ち着きがないとは想定外だったなぁ」と本格的に実感した時に「ああこれだからティーダとのスキンシップをさせることを避けていたんだなぁ」ということが分かった。例えパピーでもスキンシップをさせたくないなぁと思う飼い主さんの気持ちをやっと想像することが出来た。


そんなこんなの中でのある日のおさんぽ。自宅から出て直ぐに50歳台のおかあさんと歩いているシベリアンハスキーに出会った。そのシベリアンハスキーは特に力強くもなく、速くもなく、かと言って遅くもなく、自然体で歩いていた。だがその姿は実に”威風堂々”としていた。10歳の男の子。名前は『ルイス』と言った。


おかあさんに恐る恐る声をかけてみた。「はじめまして。この子はティーダと言います。まだ5ヶ月です。よろしくお願いします」。するとおかあさんが「はい。よろしくね。この子はルイス」と自己紹介して、ルイスくんをティーダに近づけてくれた。そして犬同士が軽い挨拶を済ますと「一緒に歩こうか?」とおさんぽに誘ってくれた。ティーダ連れのおさんぽで、こんな感じでしっかりと真正面から対応してくれたのはその時が初めてだった。とても嬉しくなった私は「はい!是非!」と言い、ルイスママさんとルイスくんの後に続いて歩き始めた。


そして”その時”は唐突に訪れた。おさんぽのお誘いに嬉しくなった飼い主が油断しながら歩き始めたその矢先だった。天上天下唯我独尊。かなりの確率でそんなふうに考えていたと思われる”ブレーキの壊れた軽自動車”こと我が家のパピーティーダがドーンとルイスくんに体当たりを仕掛けた。いきなりだった。

「おい!ルイス!プロレスしようぜ!」

言葉にすればそんな感じだった。ワンコ同士のマナーやモラルについて知っている訳ではないが、それは人間の私から見ても本当にとても失礼なことだと思えた。

せめて、せめて、

「おっす!オラ、ティーダ!おめぇ強えぇなぁ。オラと戦わねぇか?」

的な、そんな感じでもいいのでワンクッションは欲しかった。いきなりドーンは止めて欲しかった。


1回目のパピー・ティーダ・アタック(PTA)がルイスくんに炸裂。でもルイスくんもルイスママさんも全く動じなかった。受け流すのではなく軽々と受け止めた。


そして2回目のPTA。ルイスくんがティーダを一喝した。片手でティーダをドーンと軽く弾き、「グワッ!」と牙を剥いてティーダの顔を目掛けて軽く威嚇。


多分ルイスくんにとっては目の前を目障りに飛ぶハエを払った、そんな程度のことだった。極々軽い”教育的指導”だったと思う。でもパピーティーダの心はそれだけでポキポキに折れた。ティーダはその”教育的指導”の後はルイスくんに絡むことは全くなく、ルイスくんの後ろを普通に歩くことしかしなかった。


その出来事以降、ティーダが挨拶も無しにワンコにいきなり飛びかかることは一切無くなった。

「犬社会には犬社会のルールがあるのだよ」

「礼儀を欠けば相応のしっぺ返しが来るのだよ」

そんなことをルイスくんが教えてくれたのだと思う。我々飼い主がいくら言ってもワンコの心にはなかなか届かないことでも、ワンコ同士ならあっという間に教育完了。そんなこともあるんだなぁと感心した。そして「ティーダをなるべくワンコの輪の中に入れるようにしよう」と、この時に改めて思った。


あ。思い出した。

「なんだよ?やりたいようにやって何が悪いんだよ?」

って感じで最初は意気がっていたけどさ、ルイスくんに叱られてから大きいワンコをやたらと警戒するようになったよね?

公園のベンチで休んでる時、理由はなんかよく分かんなかったけどさ、ガウガウワウワウ吠えまくってたけど、目の前にシェパードさんが来た途端にとーちゃんの足の後ろにササッと隠れたよね?

あの時は「情けないなぁ」ってお前を笑ったけどさ、頼ってくれて嬉しいなって思ったんだよ?

ティーダ?


つづく


※「いいじゃか!ちょっとくらい!」

 と反抗吠えをしているティーダ

 (゚Д゚) とーちゃんのバカぁ!