アフリカツインの生産終了は、パリダカレプリカマシンのブーム終焉を意味したとしても、ビッグオフ車、或いはデュアルパーパス車そのものが衰退したわけではありません。
しかし、流れとしてのトレンドは、ビッグオフ車のデュアルパーパス車化、デュアルパーパス車のオンロード車化にあると言える気がします。(あくまで私個人の感想なのですが、皆さんは如何でしょう)
その流れを、アフリカツインの生い立ちをに関するページの最後として、各バイクメーカごとに紹介したいと思います。
【 YAMAHA 】
ビッグオフ、デュアルパーパス車のオンロード化の流れの兆候は、1991年の YAMAHA TDM850 の発売にあったと思います。(TDMがその流れを作ったという意味ではなく、TDMにより兆しがはっきりしたという意味で)
搭載されたエンジンは、XTZ750 SuperTenere(スーパーテネレ)の水冷式並列2気筒 750ccエンジンをリファインし、排気量を850ccに増加させたものです。
YAMAHA TDM850(1991年) マイナーチェンジしたTDM850
ストロークの長いサスペンションと、ややアップ気味のハンドル、必要充分以上の最低地上高・・・
ビッグオフを連想させる車体構成ではありましたが、キャストホィールにオンロードタイヤの足回りは、オフロード車ではないことを明確に示していました。 どのバイク雑誌も、このTDM850 をどう紹介していいのか戸惑っているようにも読み取れました。
でも、これこそが、パリダカレプリカマシンを経たビッグオフ車の枝分かれの1つと言える気がするのです。
水冷式並列2気筒10バルブエンジン
大柄な車体による余裕のタンデム走行、ロングストロークの快適なサスペンション、自然なポジションによる疲れの少ない乗車姿勢、どれもビッグオフが長距離ツアラーとして広く受け入れられた要素を取り入れ、オンロードバイクと割り切った上で、新たに開発したのがTDM850なのかもしれません。
多様化するバイク乗りの要望に応えるべく、ビッグオフ車やデュアルパーパス車に求められているニーズの一部を、オンロード車で実現したと思うのです。
排気量をアップしたTDM900(2002年)
この850ccエンジンを搭載した新型スーパーテネレが発売されるのでは…
パリダカレプリカファンは淡い期待を持ちましたが、それは実現しませんでした。
TDM850は、数回のモデルチェンジを経て完成度を高めながら、2002年にはTDM900としてフルモデルチェンジされ、多くのバイク乗りに愛用されています。
YAMAHA TDM900
【 HONDA 】
1000年代最後の年である1999年には、HONDAからもTDM900と同じコンセプトの XL1000V バラデロ(Varadero)が発売されました。そしてそれは、当時、並販されていたアフリカツインの、その後を担うモデルとして開発したとも言えるモデルだったのです。
より快適に、よりパワフルに、より遠くまで、アフリカツインを凌駕する性能とクオリティを兼ね備え、オンロードを巡航するツアラーバイクとして、世界中で受け入れられたのです。最大馬力95ps の 1000ccVツインエンジンは、荷物を満載しながらのタンデムツーリングを余裕でこなすキャパシティを持っています。
XL1000V バラデロは、2003年、2007年とモデルチェンジを繰り返し、インジェクション化,ABS装着などの時代のニーズを取り込みながら進化を続けているのです。
HONDA XL1000V バラデロ(Varadero) 1999年~
HONDA XL1000V バラデロ(Varadero) 1999年~
【 BMW 】
ヨーロッパ車の雄とも言うべきBMWは、HONDA などからの「追撃」を振り切るべく、R1150GSの次期モデルとして究極のツアラーバイクを目指した R1200GS を2004年に発売しました。
スタイルはデュアルパーパス的な要素を持ちながらも、 車体はオンロードでの走行性能を最優先に考慮して設計されています。従来から採用しているBMW独自のテレレバー式フロントサスペンションの利点を生かし、他車とは一線を画す最高レベルのツーリングマシンに相応しい、安定感と落ち着きのあるハンドリングを実現しています。
従来のBMWビッグオフ車ファン以外からも、極めて高い支持がR1200GSに対し集まっているようで、現在、BMWにおいて最も多くの販売台数を記録しているのがR1200GSだそうです。
まさにGSシリーズは、BMWの顔とも言える存在になったのです。
BMW R1200GS(2004年~)
1169ccの水平対向2気筒エンジン
R1200GS で明確なアドバンテージを築いたBMWは、他社が次の切り札を出すのをそのまま待っていることはしませんでした。
2006年、BMWは「工場出荷時から世界一周旅行に対応可能」をキャッチコピーにした R1200GS Adventure を追加発売したのです。
アフリカツインがデビューしたとき、大胆にもアフリカ大陸をイメージしたネーミングで発売されましたが、R1200GS Adventure は恐れ多くもその上を行く「地球」をイメージしているのでしょうか。
BMW R1200GS Adventure(2006年~)
33リットルものガソリンタンクを搭載し、フロント周りを覆うガード、そして何より、スポークホィールが標準装備とされています。
標準仕様のR1200GSに対し、「R1200GS Adventure」は明確にオフロードでの走行性能向上をセールスポイントとしてリリースされたのです。
この意味するものは、「オンロード」へと向かったビッグオフ或いはデュアルパーパス車が、「オフロード」へと里帰りする流れを示唆するものでしょうか。
このジャンルをリードしようとするBMWの、これからの動向が気になります。
もし、この流れが大きなものになれば、いずれHONDAからも「Super AfricaTwin 1200」が発売されることがあるかも・・・
そんなことを想像するのも、バイクの楽しみの一つですね!
◆ シリーズ「アフリカツインの生い立ち」終わり
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