「私はたうとうお前に口づけした、ヨカナーン、お前に口づけしたのだよ。」



サロメ クライマックス
(岩波文庫 ワイルド作 福田恒存訳 『サロメ』より)


以前書いた記事「純粋で幸福な愛の形。」 の対になるような気がするこの話。私の大好きな作品です。ギリシャ神話よりは日本に浸透してるでしょう笑 耽美派、頽廃的文学の絶頂ともいえる傑作だと思います。もとはこれも新約聖書とユダヤ古代誌の話をミックスさせた伝承でしたが、19世紀にオスカー・ワイルドの戯曲化によって一気に色を変えて世界に知れ渡りました。


最近オスカー・ワイルドにはまってます。とりあえず図書館から全集を借りてきました。

とっかかりは「サロメ」ですが、さらにサロメのとっかかりは上の画像、サロメがヨカナーン(洗礼者ヨハネのこと)の首に口づけをするクライマックスシーン。オーブリー・ビアズリー というイギリスの代表的世紀末芸術家が描いた絵に惹かれたのが始まりです。ペンで繊細な線を描き、白と黒のみで構成されたこの作風は、当時にしては斬新も斬新、世間に波紋を広げました。うお何この絵!と思ってたどって言ったらサロメにたどり着きました。


サロメはバビロンの王女で、城に現れた預言者ヨカナーンに恋をしていろいろと話しかけますが、ヨカナーンはまったく相手にしません。そこでサロメは傲慢なヘロデ王(父親だけど娘のサロメをおかしな目で見てる人!)に舞を踊れと言われてその褒美にヨカナーンの首を所望します。

美しい舞を踊った後、首だけになったヨカナーンに、サロメはようやくキスをします。所有欲にまみれた倒錯的な想いを現したのが上記のセリフで、本文ではサロメの最後の言葉です。


ピュグマリオンとガラテアは命を得ることで叶う恋だったけれども、サロメの場合は死を以てして叶う恋だったようです。

哀しい恋だけれど物語としては耽美でいいですねなんか。挿絵の効果もかなり大きいのでしょうが。


ところで1:洗礼者ヨハネ(John the Baptist)は聖ヨハネ(Johannes)とは違います。前者はキリストの前駆、後者はキリストの十二使徒の一人。ちなみに宗教画の聖母子像でよく子供のイエスとセットで描かれる子供は洗礼者ヨハネのほうです。


ところで2:「純粋で幸福な~」で、ギリシャ神話に「ウェヌス」というヴィーナスのラテン語表記の名前が出てきましたが、自分でもなんでギリシャ神話なのにラテン語読みなのか・・・ギリシャ語じゃないん貝、と思ったら同じインド=ヨーロッパ語族の起源があるんですね。

古代ギリシャ→古代ローマという世界史の時系列から見たら、ローマはギリシャ文学をそのまま取り込んでいるんですね。そして古代ローマの言語はラテン語。だから神話の内容はそのままで読みがラテン語読みになったってのが本当のところかしら。

憶測ながら合ってるとは思うんですが言語史には疎いので知ってる方いたら教えてください・・・。









上野の東京国立博物館でただ今開催中の「対決 巨匠たちの日本美術展」に行ってきました。

ええ、3回目ですが何か?笑 

ただ同じものを見に行ったわけではなく期間によって展示替えがあるので、今日は新たに展示された作品目当てで行きました。歴史の教科書に名を連ねる面子と国宝級の作品がごろごろ置いてあります。




本命は今やちょっと日本画が好きな人なら誰でも知っているであろう、ここ数年で一気に名を広めた伊藤若冲の「旭日鳳凰図」。

私は昔から若冲が大好きで初めて画集を衝動買いしてから早8年目になります。同じ学科の子たちがあまりのラブっぷりに引くくらい好きさ。

ただ私は世界史受験の影響か日本史(=日本美術史)が驚くほどだめで、詳しいのほんと若冲だけなんですよね・・・日本史やらなきゃやらなきゃと思ううち今に至ります。

一連の記事を見るとわかる方もいるかとも思いますが、私が好きなのは絵画、特に具象画、写実画、細密画です。







さて、鳳凰図。生で観るのは初でしたが。




(自前の画集から写メったものなので画質ひどいです。ゴメンナサイ)




いやあ美しかった・・・・!!!鼻血ふきそうになりました(なぜ

もうね、画集だって綺麗に撮ってあるんだろうけど本物が一番綺麗だったやっぱ。至近距離でまじまじ見てもあそこまで印象が変わらない日本画って若冲だけだと思うなあ。私の知る限り。隙のない細密描写と、輪郭線を使わない色面での描き分けと、張りつめた空間の構成と、デフォルメと計算で構築されたデザイン性が堪らない。




これでこんな興奮してたら一番好きな「老松白凰図」見たらおかしくなっちゃうんじゃないかしら。




老松白凰図






自前の画集かr(略)




この白凰図は若冲の描く生き物の中で一番素晴らしいと思います。艶やかで華やかで力強い印象。この鳳凰、評論家によっては「色っぽい」という見方も良くされますが、(それは私も同意。目とかよく言えば陶酔的、悪く言えばヤラシイ。)実はこれ、オスだそうです。どこでそういう判断をくだされているのかわかりませんが、じきに調べたいと思います笑

このことが、若冲の「人付き合いが苦手で、また敬虔な仏教徒であり生涯妻をめとらなかった」という人生と関連付けられて「若冲の女嫌い、歪んだ性癖、男色への興味」の象徴だと分析して取り上げられることもあります。

本当かどうかはわかりませんがそれでもこの絵が強烈な印象を持たせる力があることは確かです。いつか生で観たいなあ。




また今回の若冲のVSのお相手は曽我蕭白。若冲が異端の中の奇想ならこちらは異端の中の狂気役ですね。

蕭白の絵も禍々しさに滲みでる幻想性と迫力はすごいです。蕭白も大好きです。同時代に生きた若冲と蕭白は直接交流があった証拠は残ってませんが、共通の知人はいたそうなので、交流はあったと思います。

日本美術史学者の辻惟雄 さんの講演を聴きに行った友達によると、蕭白の様式を真似て描いた若冲の絵があるんだそう。だから少なくともお互い意識はしていたんだということらしい。見てみたい。




若冲の絹本彩色画は細かいので一見写実的にももしかしたら見えるかもしれませんが、実はデフォルメしまくり理想化しまくりのどちらかといえばシュールレアリスム的ともいえる表現です。

作品の画面のどこを見てもピントがぶれてないんです。密度が均質化しすぎているのである意味「画面の中心」がありません。(いや、もちろん上の絵で何が主題かと言われればもちろん鳳凰しかあり得ないのですが・・・)

どこか機械的で、人間味に欠け、息苦しささえ覚えるのはそのためです。私はその徹底的に几帳面でぎりぎりな感じがどこか好きなんですが。

誤解のなきよう言っておくと、もちろん、水墨画その他の作品にはユーモラスだったり温かな作品もあります。




その凄さを推し量るべくな事柄は、彼が独学の画家だということです。




・・・と、若冲しか語ってませんが巨匠展で私が他に好きだったのは応挙と永徳ですね。




応挙の虎と永徳の水の表現は圧巻です。




東京国立博物館自体もすごく素敵な建物です。中で館がつながっているので建物散策をしても飽きません。晴れの日は庭園も綺麗です。




今日は出口に着いた時は傘の意味が皆無なほど土砂降り&雷のコラボでしたが。

















「ピュグマリオンとガラテア」という最初は悲恋だけれどハッピーエンドの物語があります。


ギリシャ神話の一つです。


癒えない女性不信に陥ったピュグマリオンは象牙で女性の彫刻を作りました。あまりにその女性像が美しかったため、彼はその彫像に恋をしました。

彼はこのような女性を妻にしたいと愛の女神ウェヌスに(女神ヴィーナスのラテン語読み)祈ります。ウェヌスは願いを聞き入れその彫像に生命を吹き込みました。ピュグマリオンは今や生身の女性となった彼女を抱きしめて口づけを交わします。彼女の名前はガラテアといいます。こうしてピュグマリオンとガラテアは結ばれたのでした。


これがそれを主題にした絵です。

二枚ともジャン・レオン・ジェロームという画家の作品です。製作年代はほぼ同じと言われています。

ガラテアの足元にご注目。まだ彼女は半分彫刻です。素晴らしい描写だと思いませんか。



P&G

ピュグマリオンとガラテア


彫刻の女に惚れてしまう男という、現実なら絶対に叶わぬ恋をしているドン・キホーテ的ともいえるところがなんか好きです。


この絵単体で見ても十分美しいですがね。




080804_1656~010001.JPG

届きました!

amazonで注文していた夢野久作の作品『ドグラ・マグラ』。

今日のタイトルはその冒頭の一節。これだけじゃわけわかんないですね笑

読んだことはあったのですが、手元に置いときたくなりました。

素晴らしい本です。
日本三大奇書の一つとも言われます。昭和10年に書かれたとは思えない程斬新です。いや、当時だからこその傑作かもしれないけれど。今も素晴らしい作家は沢山いますが、明治から昭和にかけてはまさに「文豪」と呼ぶに相応しい人達が輩出した時代だと思うのです。

関係ないけどこの「輩出する」って言い方間違った使い方だと思ってる人多いよね。ええ何を隠そう私は2年前に知ったばっかです…笑
まさか「する」でも「される」でも使えるなんてね!

それはおいといて、このドグラ・マグラ、入れ子式の構造になってて、どんどん引き込まれて行きます。
全体を通しての官能と錯乱と狂気、そこに伴うどこか儚げな退廃美の漂わせ方は夢野久作の得意にして最高の味わいだと思います。


奇想天外な世界に行けます。


この本についてははよく「読んだら気が狂わずにはいられない」と言われてますが私はそんなことありませんでした雨笑。







今日はバイト先でフィナンシェをもらいました(≧▽≦)
抹茶味でしたはーと久々でおいしゅうございましたラブ








HARA MUSEUM



いってきましたー!

原美術館は品川にある現代アートを扱う美術館です。奥まったとこにある癖にいつも面白い展示やってくれてます。

この「アートスコープ展」、日独アーティスト交換交流プロジェクトなんだそうで。日独4人のアーティストが絵画・彫刻・インスタレーション・映像・素描など様々なメディアで作品を展示してました。




特に面白かったのが、照屋勇賢さんという方が作ったインスタレーション作品。色々あったんですが「Touch a port」と「Corner Forest」が印象的でした。どちらも木の枝をモチーフにしてるんだけど、前者はいろいろな形の本物の小枝を使ってアルファベットを作り、壁に接着して文を作るというもの。




ネタばれになりますがその文は''Trenn meinen leib vom rumpf und bau dir ein boot dann kanst du fortfahren.''(私の幹を根元から切り倒しなさい。そして船を造るといい。そうすればあなたは遠く立ち去れる。)と書かれていました。これは『The Giving Tree』というアメリカ絵本からの引用の独語訳らしい。これは男の子と仲のいいリンゴの木が男の子を楽しませるために自分を犠牲にする話で、子供向け絵本といいつつ結構泣ける話だそうです。このセリフも男の子に向けられたものだろうな。





照屋さんの作品には他にもこの絵本そのものに手を加えて展示したものがあって、この本を読んで何かしら感じたんでしょう。それを推し量ることは私にはできませんが。




ちなみにちょっと調べてみたら、この絵本の作者シェル・シルヴァスタインは絵本作家だけでなく、ソングライター、劇作家、作曲家、詩人としても活動してるそうです。うーむ、なんという多才・・・。これで顔がよかったら許さn(やめなさい)代表作は「The Missing Piece(ぼくを探しに)」。これは有名なんで知ってる人も多いかと。




で、説明が長くなったけどもうひとつの「Corner Forest」はトイレットペーパーの芯を途中まで枝の形にくり抜き立体的にしたもの(伝わりにくいなあ・・・とびだす絵本のトイレットペーパーverだと思ってくれれば・・・)を壁に並べて微妙なライトで照らしたもの。その芯と枝の作り出す影がとても綺麗でした。影同士が重なってるところは濃くなってて、その濃淡が幻想的。あれは本体じゃなくて光と影の繊細な関係を楽しむものだと思います。個人的には。





他の作家さんの作品も面白い発想のものばかりでした。

 

で、私は美術館付属のカフェもよく行くのでそこも重視するポイントなのですが、原美術館はテラスカフェがあってオブジェが飾られてる庭を見ながらまったりすることができます。音楽♪建物自体が静かな場所にあるし、昼下がりとかお勧めです。今の時期めちゃめちゃ暑いけどね。行くまでが。





あと私は美術展行った時に考えたことやメモしておきたいことがあったら手帳に書きながら回るんですが今回それやってたら監視員のお姉さん(美人)が「ペンは使用不可なので鉛筆お使いください~」と鉛筆を貸してくれましたハート場所によってはだめなとこもあるんですな・・・。




常設も面白いものばっかですよ!お暇な時に行ってみたらいかがでしょう~笑