前回はこちら♡
超大物芸能人が、自身が所有するビルの1階にクラブをオープンした。
開店祝いの夜、リカちゃんと東京タワーを眺めながら駅からの道を歩いた。
私、そろそろ落ち着こうと思って。マジな彼氏ができたんだよね。
それで最近来てなかったのかぁ。相手は?
財閥企業の御曹司♡
今度挨拶に行くから、彼の父親をWikipediaでリサーチしといた笑
横断歩道を渡ると豪華な祝い花に囲まれたエントランスが見えて、思わず早足になった。
有名人の立札の前でリカちゃんと写真を撮り合う。
もう始まってる?早く入ろう!
明かりをほとんど落としたフロアは既にごった返していて、私たちの到着後、数分もしないうちに乾杯の音頭が取られた。
リカちゃんと前後で立っていた私は、右にいた男性とシャンパングラスで乾杯をする。
正面に向き直る間は空けず、左を向いて同じようにグラスを傾けた。
そのときに、目が合った。
息が止まるほど、全身の産毛が逆立つほど、身体中の細胞が開いて、自分の心臓が脈打っているのがわかった。
乾杯!彼はニコリと笑って、私とグラスを合わせた。
小さい顔、色素の薄い大きな瞳、茶色くて柔らかそうな巻き毛、まるで天使が作り笑顔をしたみたいに全てが完璧だった。
こんな人、見たことない。
DJが流し始めた音が、鼓動を加速させた。
私は後ろを向いて、リカちゃんを引き寄せた。
私の隣の男の子、見てよ!やばいから!
えー?なんか少女漫画から出てきたみたいな男だね。れもんちゃん、ああいうのが好みなの?私が話しかけてあげる!
言い終わるや否や、リカちゃんは天使の袖を引っ張っている。
れもんちゃん、この子たち年下だって!名前、何?スイくんっていうの?みんな同じ事務所?
スイくんと一緒にいる男の子たちと談笑したものの、内容は全く頭に入らなかった。
あ!エンタメ御曹司がきてる!
リカちゃんが人を掻き分けて進み始めたので、私はシャンパングラスを高く掲げて、急いでついて行った。
リカちゃんがどうしても欲しいというチケットをエンタメ御曹司にねだる間、私はずっとスイくんを目で追っていた。
女の子たちと話している笑顔は、やはり天使だ。
フロアライトが人影をゆらゆらと揺らすなかで、彼の輪郭だけが、はっきりと見えた。