ある日、リカちゃんが集まりに来られなかった。
大丈夫、他に声をかけといたから。
待ち合わせの改札でそう言いながら、レミちゃんはプラダのバッグに付けたパンダのチャームを指で触り続けている。
そのパンダ、可愛いね!
私がそう言うと、レミちゃんはパンダを指で弾いて笑った。
これね、この間お寿司を食べに行ったら、私の席に置いてあったの。これなに?って聞いたら、どうやら事前に用意してくれてたみたい。プレゼントだって。
さすがレミちゃん、と言いかけたところで、改札の向こうから女の子たちが歩いてくるのが見えた。
こっちこっちと手招きしながら、レミちゃんが言う。
私がデリヘルしてるって、リカから聞いてるんでしょ。
視線を女の子たちのほうに向けたまま、レミちゃんは続けた。
ただのデリヘルじゃないから。高級デリヘルなの。こういうサプライズなんか、いつもされるし。
女の子たちが合流するまで、レミちゃんは一度も私と目を合わせなかった。
飲み会の相手は、映画会社の人たちだった。
◎◎、見ました。面白かったです。
これが就職面接だったら、絶対に落とされると思う。
現に4年生となった私の就職活動は難航していた。
それなのに。
役員の男性は今、私の言葉の一つ一つに目尻を下げている。
ここでは感じ良く笑っているだけで、可愛がられ、自分を受け入れてもらえる。
いつの間にか、この空間に心地良さを覚えるようになっていた。
ここは私の居場所だろうか。
れもんちゃんは彼氏いるの?
いませーん!!
そう言って、一気にグラスを空けると皆が一斉に笑った。