前回はこちら♡
二次会がどんな店だったかは、よく覚えていない。
私は本日の1番偉い人が可愛がっているらしい男性部下の隣に座らされ、ずっと手やら肩やらを触られていた。
今朝は普段通り母の用意したサラダを食べて、午後まで大学で授業を受けていたのに、なぜ今の私は、今日会ったばかりの人にベタベタ触られているのか、理解が追いつかない。
強いお酒と薄暗い店内のせいだと思った。
日付が変わる頃、全員でお店を出た。
どこに向かうのか分からないまま、六本木の交差点でタクシーを止められた。
私はここで失礼します!
皆に聞こえるくらい声を張り上げたのに、誰も振り向かなかった。
えー、もうちょっと一緒にいたいよ。
恋人つなぎをしていた3番目の男が指に力を込めた。痛い。
帰ります。父親から何回も電話がきているので。
レミちゃんがこちらをチラリと見たが、気がつかないふりをした。
〜〜〜
そんなにレミちゃんのこと怖がらなくて大丈夫だよー。
新宿東口のアルタの3畳ほどの狭いトイレで、鏡を覗き込みながらリカちゃんは言った。
なんだかんだで、今日もレミちゃんに呼ばれてる。
レースクイーンをしながら女優を目指してる、なんて言ってるけど、あの子、本業はデリヘルなんだから。
デリヘル、とリカちゃんは眉を上げて、うれしそうに言った。
トイレの入り口のドアが開いて、同世代の女の子たちが押し入って身体を寄せてきた。
狭いんだから、入って来ないでよ!
リカちゃんが言ったので、女の子たちと小競り合いになった。
この無表情な子、ときどき見る顔だな。
そう思った翌年、同じ顔を芥川賞受賞のニュースで見つけて驚いた。
その日の飲み会もレミちゃんは一番偉い人の隣で、リカちゃんは二番目、私はその次だった。
この序列はどの集まりでも変わることはなかった。