子猫は 夕食をキレイに食べました。ミルクもキレイに飲みました。

『もう少し、頂戴よ~』

「もう少し、欲しいかもしれないけど、お腹を壊すといけないからね。又、明日の朝だよ。」


お腹が膨れると、睡魔が襲ってきます。子猫も、大きなあくびをしています。


「ベビーちゃん、眠いかもしれないけど、ちょっと体をキレイにしようね」

ゆきは子猫を膝に置き、優しく優しく、マッサージを始めました。
先ずは、首の後ろからです。母猫が子猫と一緒に移動する時、首の後ろをくわえて、移動します。緊張しているのか、固まって抱かれていた子猫は、だんだん、気持ちよさそうに、目をとじてきて……
「ゴロゴロゴロゴロ」
喉をならしだしました。
首から肩、背中…そして仰向けにさせてお腹…
マッサージをする手は、とても優しく、子猫は半分夢の中です。
でも、ゆきの目は鋭く、子猫の体をチェックしていました。

『ノミはいないか?ノミの形跡はないか?傷痕や湿疹はないか?』

シャンプーをしてあげるのが、一番早い方法かもしれません。
でも、いきなり、知らない環境にきて、いきなり、見知らぬ人が、猫が嫌がるシャンプーをして…
子猫に恐怖心の種をまくようなもの。公園で野良猫として、母猫と一緒にいたのか?どこかで飼い猫の母猫と一緒にいたのか?子猫にとって、大切な免疫力をつける母乳が、十分に与えられていたのか?ゆきには、事実は解りません。免疫力が低下してるであろう子猫をシャンプーする、風邪でもひいたら、大変です。
綿棒を使い、耳の中もキレイにしました。


ノミの形跡も、傷痕もアレルギーも、ありません。
耳の中は少し汚れていましたが、炎症もおこしている形跡もありませんでした。

仕上げは、蒸しタオルを使い、子猫の体をふきます。
気持ちがよいのでしょう。子猫は喉をゴロゴロならして、目をとじています。


「はい、OKだよ。少し、寝ようね。後で遊ぼうね。」

ゆきは、そっと、子猫をベッドの箱に入れました。


ソファーに座り、子猫の寝顔を見ながら、ゆきが思い出すのは、今までに出会った犬猫達の幼少の頃のこと。そして、ここは東のレオンの部屋。夏場、レオンが茶々やミィと過ごした部屋。約7ヶ月間、介護した部屋。ラッキーはいつもこのソファーに座り、みんなを見ていた……


頭の中に、みんなの顔が、鮮明に浮かんできました。レオン達は、ゆきの中で、今も生き続けています。
ゆきの、子猫に対しての、接し方、見方は、彼等との様々な出来事や経験がなければ、違っていたでしょう。


子猫が、捨て猫であることは、体をチェックして、はっきり解りました。
レオン達との出会いがなければ、ゆきは怒りまくっていたでしょう。
なんで、捨てるの!?

きっと諸事情があったのだろう…この子と私は縁があり、出会ったのだろう。
この子はきっと…私に何かを与え、教えてくれるのであろう。現に、仕事もせず、ボーっとしていたゆきの目を覚ましてくれました。


レオン達が、与え、教えてくれたように…

悲しい気持ちが、ありがとうの感謝の気持ちに変わってきていました。




続く
「ただいま、ベビーちゃん!お腹空いたね。」


ゆきは、声をかけながら、ドアを開け、電気をつけ、素早くドアをしめました。

用意した、箱のベッドには子猫の姿はありません。
部屋の片隅に、子猫はチョコンと座っています。
ゆきが近づいても、逃げたりしませんでした。
「あら、鬼ごっこができるかな~って、楽しみにしていたのに。元気がないのかな?さぁ、晩ご飯を食べようね」
ゆきは子猫を抱き上げ、食器の前に子猫をおきました。
フードと子猫のミルクを入れると、子猫はクンクンとミルクを匂いでペチャペチャと飲みだし、そして、猫缶も食べだしました。

「ゆっくり、食べるんだよ~」


トイレの砂場には、小さなお山ができています。
「賢いね。ちゃんとできてるね。」


ゆきのことを、怖がることもなく、排泄もキチンとできています。


この子は、捨て猫さんだな…


ゆきの心は、なんともいえない痛み…キュ~ッとしめつけられたのでした。



続く
5匹の先輩猫達
オス猫は ボク、華の2匹、 メス猫は 福、ラブ、桜の3匹です。

缶詰めが開く音に 5匹の目は輝いているのは一緒でしたが、各々の食事の待ち方、食べ方があります。

部屋の中央には、トレイが置いてあります。ゆきは、猫缶が入ったお皿をトレイの上に置くのですが…
ラブは、トレイの前で、キチンと前足を揃えて待っています。
その横には、福が並んで待っています。

ボクは、いつも、トレイから少し離れて…待っています。

華は…トレイから随分離れて、ボクの視界に入らないように、待っています。

そして……桜はいつも、みんなとは、違う場所で、待っていました。

トレイの前に、みんなが仲良く並んで食べる…がゆきが描く夢でしたが、なかなか実現はしませんでした。「はい、ボク君!はい、華君!はい、福ちゃん!はい、ラブちゃん!さくらちゃーん?あっ、今日はここにいたの。はい、さくらちゃん!」


ボクは、自分がボス猫と思っています。華よりもお兄さんと思っているようでした。順番を間違えて、華が先なら……『ボクが一番やで!』プイっとすねて、廊下に出て行き、寝っ転がってしまいます。そして、みんなが食べ終わり、しばらくしてから、コソコソと1人で食べるのです。

ボス猫として、頑張っているボク、
「いつも、お留守番、みんなを守ってくれて、ありがとうね」
と、声をかけて、一番にお皿を置きます。

そして、華には、
「影で皆を守ってくれて、ボクをたててくれて、華君は本当に優しいね。ありがとうね」
と、声をかけます。


でも、ゆきの耳には…
『ボス猫?関係ないわ。』『ボク君は、お行儀悪いですわ。』
『直ぐに、すねるんだから…。ガキよね。』


メス猫達は、いつも冷めた目でボクのことを見ているようでした。


「福ちゃん、ラブちゃん、そして…あっ、いたいた!桜ちゃん!」


みんな、美味しそうにご飯を食べ、お腹がいっぱいになり、顔を洗いだしてます。


「ベビーちゃんに、ご飯をあげてくるね。みんなは、待っててね。」

ゆきの言葉を聞いて、みんなの顔を洗う手が一瞬、止まりました。



続く