システム個人第3回本公演
『廃グランド・ホテル別館』

小劇場 楽園
作・演出:林泰製
舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
音響:Mana-T (M&) 照明:中西美樹
音楽:小山優梨 メイクプラン:藤尾みほ
演出助手:藤本悠希(劇団肋骨蜜柑同好会)、 加納遥陽
アドバイザー:黒澤健
制作:こめばん倶楽部
舞台写真摄影:月館森
劇中映像イラスト(豆腐小僧イラストを除く):林泰製
イラスト・劇中肖像画製作:NIHONBARE
主催:システム個人
出演:
梶川七海(偏屈な吸血鬼・針山ナオ)
村上弦[猿博打](怖がりな化け狸・芝江万結)
米田ひかり[KNOT](お節介で愛情深い幽霊・松下八重子/カーナビに取り憑いた幽霊・ユキエ(声))
さんなぎ(ルールに厳しい管理人、メデューサの親戚の子供・蛇目今日子)
波世側まる[すごい生命力](スナックのママの口裂け女・三条恵梨)
岡本セキユ(死後、人造人間として復活した刑事、恵梨の恋人・草刈雪彦)
滑川喬樹[エトエ](「グランドホテル安寧」元副支配人の幽霊・落合保)
佐々木タケシ(昭和に活躍していたらしいムード歌謡歌手の幽霊・紅ヒデキ)
藤本悠希[劇団肋骨蜜柑同好会](ホストの吸血鬼・ジュンヤ)
加納遥陽(豆腐を愛する豆腐小僧の少年・富山球太郎)
加藤睦望[やみ・あがりシアター](サディストの吸血鬼、針山ナオの姉・針山キクエ)※映像出演
アンディ本山(母がクラーケンのチンピラ、ホテルの元住人・ヌマゾエ)※映像出演
STORY
すでに廃業した「グランドホテル安寧」の別館は、人目を避けて生活する「怪異」たちの共同住宅になっている。孤独で偏屈な吸血鬼は部屋にこもりがちで、お節介で愛情深い着物の幽霊はいつも誰かの世話を焼き、サディストの吸血鬼に血を吸われて吸血鬼になったホストは恋に迷走し、メドューサの親戚の子孫である管理人は住人たちの規則違反に目を光らせ、「次こそ成仏する」 と言い続けるムード歌謡歌手の幽霊は今日も成仏せず、中学一年生の妖怪豆腐小僧は豆腐づくりに青春を賭け、人を殺さないタイプの口裂け女は怪異が集まる商店街でスナックを営んでいて、死後すぐにマッドサイエンティストによって復活した人造人間の刑事は口裂け女に愛を囁き、以上の住人たちに振り回されている幽霊は、このホテルの元
副支配人である。そして、以前ホテルに住んでいた、母がクラーケンのチンピラは何者かに追われており、その原因が廃ホテルの過去と密に関わっ
ているということは、まだ誰も知らない。そんな廃ホテルにやって来たのは、「この世には人間と化け狸しかいない」 と言われて育った怖がりの化け狸。初めて出会う怪異たちに怯える化け狸は、ひょんなことから、この廃ホテルで暮らすことになってしまう。怪奇現象 (トラブル)は否応なしにやって来て、運命の悪戯が住人たちを惑わせる。怪異たちの悲喜交々の日常が辿り着く結末は果たして。【公式アカウントより】
システム個人第3回本公演
舞台はグランドホテル安寧の別館。奥にスクリーンがあり、その手前にソファとテーブル。下手側にもソファ。スクリーンと対面の柱の前にスツール。
登場人物はすべて妖怪、怪物、幽霊などの怪異と呼ばれる存在で、以下の8話構成で展開。
1. 子犬騒動
2. 豆腐と悲鳴
3. 囲む怪異たち
4. 人間騒動
5. ぎゃけごろんじき
6. 外の世界
7. 運命の悪戯
8. ある大団円
物語は化け狸の万結(まゆ)が吸血鬼・ナオに会いにグランドホテルの別館を訪れるところから始める。それは四国にある化け狸の里にやってきて傍若無人の振る舞いをするナオの姉・キクエの命によるものだった。ナオは姉の言うことに従うつもりもなく、万結はナオとルームシェアをする羽目になる。
その廃ホテルには他にもルールに厳しいメデューサの子孫である管理人やホテルの副支配人の幽霊、お節介で愛情深い着物姿の幽霊、なかなか成仏できないムード歌謡歌手の幽霊、スナックのママをしている口裂け女とその恋人で人造人間となった元刑事、豆腐作りに精を出す豆腐小僧など個性的な怪異が共同生活を送っている。
その中でナオは孤高の存在ではあるのだが、万結とルームシェアをするうちに徐々に関係性にも変化が生じ、最後はほろりとさせられる。そんな怪異たちの姿を見ていると、人間どももこんなふうに他者を受け容れられないものかねぇと思ってしまった。
キャスト陣は怪異のメイクを施しつつ、それぞれに個性を発揮。
前作『御徳寺探偵草臥れ儲け』でさんなぎさんと梶川七海さんが姉妹役で俺得と書いたけど、今回はそのお二人に加えて村上弦さん初参加とまさに鬼に金棒。林泰製さんありがとう。
そのお三方は期待通りで、梶川七海さんはクールな役どころがハマッていたし、村上弦さんは狸メイクが可愛らしく常に怖がっている表情を見ているだけで楽しくなってくる。前作ではあんなに愛でていた妹役の梶川さんとやり合うさんなぎさんも最高だった。他にも佐々木タケシさんは美声を響かせ、今月2本目の加納遥陽さんは少年役も違和感なく、米田ひかりさんの優しげな幽霊役も印象に残った。
更には加藤睦望さん、映像出演だから少しだけなのかなと思っていたら、物語の発端となる重要な役どころ。今度は加藤睦望さん&梶川七海さんの吸血鬼姉妹のその後もしくは過去を描いてほしいですなッ。
上演時間2時間。