らむらどぅプロデュースmeets久保磨介『うみのかたわれ』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

らむらどぅプロデュースmeets久保磨介

『うみのかたわれ』

umi no kataware


2024年11月28日(木)〜12月2日(月)

王子小劇場


企画・制作:らむらどぅプロデュース

脚本・演出:久保磨介

舞台監督:水澤桃花 演出助手:渡部真由

照明:緒方稔記 音響:田中悠也、吉平真優

宣伝美術:久保磨介 受付:岡村梨加


出演:

中三川雄介(双子の兄・相澤大洋)

佐藤直彰[金曜の夜の集会](双子の弟・相澤穂波)

安東信助[日本のラジオ](灘製薬スカウト・沓谷正数)

さんなぎ(大洋の恋人・橋爪知重)

有栖川姫子(面接担当・双畑硝子)

魁ウェンズデー(双子の姉・岩田美鳥)

藤真廉[怪奇月蝕キヲテラエ](双子の妹・岩田兎和)

村上弦[猿博打](双子の姉・足立真紀)

波多野伶奈(双子の妹・足立紗良)

夏アンナ(真紀の友人・門倉円香)

安藤岳(円香の恋人・酒井龍馬)

米田ひかり[KNOT](双子の姉・二見琴音)

シミズアスナ(双子の妹・二見氷奈)

加藤睦望[やみ・あがりシアター](琴音の上司・両角実)

藤本康平(両角の部下・石井慎次)


STORY

業界大手・灘製薬の子会社ラメールが双子限定の仕事の求人を出す。スカウトの沓谷は相澤大洋に声をかけるが、彼には特殊な事情があり、兄の穂波との関係もぎくしゃくしていた。大洋は恋人の知恵と旅行に出ることを提案。沓谷は費用を出す代わりに監視役として2人についてくる。一方、両角の元でアシスタントをしている琴音は双子の妹・氷奈の協力も得ながら取材を開始する。更に、求人に興味を持った双子の紗良は円香と龍馬の家に転がりこんでいた姉・真紀を説得して応募。面接で一芸を披露しなくてはならず、真紀が料理を作ることになる。かくして面接が行われるが、担当の双畑硝子の前に現れたのは元カノの岩田兎和と硝子がそうとは知らずに一夜を過ごした双子の姉・美鳥だった。


らむらどぅプロデュース第2弾。


劇場入って左側をステージ、右側を客席として使用。入口側をステージにするパターンはいくつかあったけど(先週の海ねこ症候群も)、この使い方は初めて。

横に長いステージの左右にそれぞれポールのついた長方体の台があり、舞台の左右にもポール。シーンによっては椅子を持ち込み。


本作には4組の双子が登場し、それぞれのエピソードが並行して描かれていく。

メインとなるのは大洋と穂波の相澤兄弟。大洋は解離性同一性障害で、8歳の時に今の人格に入れ替わったのだが、そのことに気づいているのは弟の穂波のみで母親の前でも仲のいい振りをしてくれている。

そんな現・大洋がそろそろ元の大洋に戻ってきてもらうべく、灘製薬のスカウト・沓谷の協力を得ることになる。そして今の自分と別れることを決意した大洋は、事情を知っている恋人の知重とともにやりたいことをやる旅に出る(気球に乗って仁徳天皇陵を見たり、海でビールを飲んだり)。

旅を終え、製薬会社に向かう大洋と渋谷で5時に待ち合わせをして抵抗する知重がとてもいい(「渋谷で5時」と聞くと、どうしても鈴木雅之さん&菊池桃子さんを思い出してしまう世代)。


他の双子の関係性もいいのだが、中では美鳥と兎和の岩井姉妹と硝子(しょうこ)の三角関係が笑えるところもありつつ切なさもあり、展開が気になった。

また、切なさということで言うと、製薬会社の謎の求人を取材する琴音が出来のいい氷奈に対して劣等感を抱きつつ明るく振る舞うあたりも切ないし、そんな琴音に思いを寄せているのに言い出せない石井も切ない。

真紀と紗良は実はどちらが姉でどちらが妹なのか明確には分からなかったが、一流シェフのもとで働き始めたもののパワハラに遭って1週間で辞めた真紀のためにあれこれ手を尽くす紗良の健気さにグッと来る。

双子と言えどまったく同じではないし、双子だからと言って何でも分かり合っているわけでもない。それでも確かな結びつきを感じられる物語だった。


プロデューサーのらむらどぅさんは一般の観客の方で、自分が観たい作品を上演するためにらむらどぅプロデュースを始めたとか。すごい行動力。

もちろん面識はないけど(多分劇場では何度かすれ違っていることであろう)、さんなぎさん、村上弦さん、波多野伶奈さん、加藤睦望さん、安東信助さんと私の好きな俳優さんがずらりと名を連ねていてきっと話が合うに違いないと確信。笑

上記以外のキャストではguizillenで印象に残っていたシミズアスナさん&米田ひかりさん、有栖川姫子さんがよかった。


上演時間1時間35分。