プテラノドン 第3回公演
『青春にはまだはやい』
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2024年11月26日(火)〜12月1日(日)
「劇」小劇場
作・演出:笠浦静花(やみ・あがりシアター)
舞台監督:山田剛史
音響:穴沢淳 音響オペレーター:牧野宏美
照明:松田桂一
舞台美術:小林裕介(たまに猫が寝ている工房)
宣伝美術・グッズデザイン:金子ゆり(メロトゲニ)
宣伝写真:福田俊介
宣伝写真衣装提供:株式会社マルス
当日運営:岩間麻衣子
放送部マネージャー:平体まひろ(プテラノドン)
出演:
山野史人[青年座](相原エイキチ)
朝倉伸二(小倉カズシゲ)
瓜生和成[小松台東](清水スグル)
柿丸美智恵(志村スミレ)
つついきえ(瀬川ソノコ)
水野小論[ナイロン100℃](温水ネネコ)
渡邊りょう(野宮ハルキ)
太田知咲[プテラノドン](平家ホナミ)
菅沼岳[プテラノドン](三国ムネノリ)
大内彩加(茂田井ヤエ)
宮地洸成(湯島ヨウヘイ)
加納遥陽(陸野ルナ)
桜木紗瑛(輪島ワカナ)
STORY
2024年11月。20歳の輪島ワカナは高校時代、放送部に所属してNコン出場を目指していたが、新型コロナにより中止の憂き目に遭って以来、高校を退学し、祖母が経営する旅館わじまの手伝いをしていたが、祖母が亡くなり旅館も廃業となる。旅館の片付けを終えたワカナは首をくくろうとするが、天井から願いが叶うノートが落ちてくる。青春を送れなかったワカナは過去の高校生に自分たちの悔しさを味あわせたいと書き込む。翌朝、目が覚めるとノートはなくなっており、平家ホナミをはじめとして全国から高校2年生が集まってくる。ワカナはNHKの合宿だと思ってやってきた彼らに3日間で原稿を作り、発表してもらうと告げる。
太田知咲さん、菅沼岳さん、平体まひろさんからなるユニット・プテラノドンの第3回公演はやみ・あがりシアターの笠浦静花さんによる書き下ろし新作。
舞台は民宿わじま。下手奥が畳敷き。それ以外は板間。上手側が入口の設定で、舞台手前通路も使用。
20代の加納遥陽さんから80代の山野史人さんまでの12人が高校2年生を演じるという(桜木紗瑛さんのみ実年齢の20歳の役)突飛な設定の青春群像劇。
願いが叶うノートの存在はいいとして、ワカナが過去の高校生に恨みを持つのはやや強引だし、どうせ書くなら、「コロナ禍のない世界でもう一度高校生に戻ってNコンに出られますように」とでもした方がよっぽど健全だとは思うけど、まぁそれだけやさぐれていたのだと解釈しよう。笑
12人の高校生たちは今が2024年であることは知らずに民宿にやってくるのだが、同い年のはずなのに会話が噛み合わない。Nコンの存在を知らない者もいれば、携帯電話や酒井法子さんの逮捕に驚く者もいて、そうしたジェネレーションギャップが笑いを生み出す。
笑いだけではない。茂田井ヤエは福島の高校生だが、2010年から来ているので、東日本大震災のことは知らないでいる。震災のことを知った平家ホナミがヤエを抱きしめながら、「さようなら。気をつけて」と伝えるシーンは、ヤエを演じる大内彩加さんが福島県出身ということもあって胸が詰まるものとなっていた。
終盤の展開も見事。
高校生たちが3日間の記憶を失い、元の時代に戻った後、ワカナは参加者の名前を検索して陸野ルナに会いに行く。彼女はワカナのことを覚えていなかったが、ワカナに取材して原稿作成をしていたため、名前を聞いた途端に自分が書いた原稿が自然と口から出てくる。そうして一人また一人とかつての仲間が集まっていくくだりは、人と人との繋がりの重みを改めて感じさせるもので実に感動的だった。
そして何より、この奇跡のような出会いが可能になったのも、ワカナが生きていたからこそ。青春は年齢ではない。生きてさえいれば、これからいくらでも青春を味わうことはできる。「青春にはまだはやい」というタイトルにはそうした意味合いが込められているのであろう。
初日ということもあってかキャストにはやや硬さも感じられたが、これだけの面子が揃っているのですぐに軌道修正されることだろう。
中では上述の事あるごとにの対立するヤエとホナミを演じた大内彩加さんと太田知咲さんは、噛むことが許されない早口言葉対決も見事に切り抜けていた。
唯一、同じ年代から来た瓜生和成さんと柿丸美智恵さんのコンビもナイスな組み合わせ。昔の言葉で言うならスケバン的雰囲気の柿丸さんが特によかった。
女優志望ということもあってかやや仕草がオーバーな温水役の水野小論さん、原稿至上主義でいったん文字にしないと言葉を発せないルナ役を演じた加納遥陽さんもそれぞれ印象に残るキャラクター。
また、体調不良の志賀耕太郎さんに代わり湯島役を務めた宮地洸成さんは代役とは思えないほどの馴染み方だった。
上演時間1時間45分。