MCR『ガラクタ』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

MCR 30周年記念公演

『ガラクタ』

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2024年10月30日(水)〜11月3日(日)

OFF・OFFシアター


作・演出:櫻井智也

舞台監督:本郷剛史、藤本貴行(株式会社RESON)

舞台美術:門馬雄太郎 照明:久保田つばさ

音響:葵能人(ノアノオモチャバコ)、吾犀秋吉(零'sRecord)

票券・運営:松本悠(青春事情)

映像撮影:吉田雅人 web管理:松下哲

製作:MCR


出演:

櫻井智也[MCR](ガラクタ屋店長)

おがわじゅんや[MCR](アルバイトの小川)

上田房子[MCR](店長の奥さん)

北島広貴[MCR](ヒロ)

伊達香苗[MCR](ヒロの奥さん・飛鳥)

澤唯[サマカト](魚屋の澤)

三瓶大介(ラーメン屋三瓶)

堀靖明(サラリーマン堀)

後藤飛鳥[五反田団](飛鳥さん)

加賀美秀明[青春事情](課長の加賀美)

【日替わりゲスト】

石澤美和(今までとこれからが見える女)

佐藤有里子(三瓶の過去に出てくる女・佐藤)

黒澤風太(若き日の店長)

本井博之(過去の店長)

わたなべあきこ[劇26.25団](過去の店長の奥さん)

徳橋みのり(店長の妹・みのり)

福井喜朗[MCR](幽霊劇団員・福井)


STORY

商店街のはじっこにあるリサイクルショップ「ガラクタ屋」。その名に恥じぬ、商品にならないようなガラクタが散在している店は今日も暇。店員を雇う余裕など無いはずなのに、働きたくないばっかりにアルバイトの小川君を雇っている店長は今日も店内で競馬新聞を眺めている。商品も買わずに厄介ごとばかり持ち込んでくる常連たち、通りすがりにフラッと入ってきた瞬間に常軌を逸した行動をとる人々、更には店長に愛想を尽かして出て行ったはずの奥さんが記憶を無くした状態で戻ってきたりして、どうにもならないどうしようもない。どうしてこうなったのか忘れちまった、覚えてるけど、やあやあやあ、それでも笑顔は忘れずに、ガラクタ屋は今日も賑やかです。【公式サイトより】


MCR30周年記念公演。2000年初演作品を再構成し、日替わりゲストを迎えての上演。

本日ゲスト出演予定だった笠井幽夏子さんはご家庭の都合により降板し、徳橋みのりさんが代役。


壁の中央に車輪状のモニュメント。その合間にタンバリン、フィギュア、縄跳びなどなどが埋め尽くし、横には刀が立てかけられている。上手側に冷蔵庫、その横の壁に折り畳み式のテーブル、脚立、手前に段ボールの山。舞台下手にカウンター、その奥にガラクタ。舞台中央に椅子代わりのボックス2つ。


舞台は開店して30年になるリサイクルショップ「ガラクタ屋」。店長はカウンターの奥が定位置で、アルバイトの小川を始め、常連やら突然やってきた客やらとのやりとりが交わされていく。

元々MCR(と言うか櫻井さんの作品)は役名=役者名であることが多いのだが、本作はその境目がいつも以上に曖昧で実話であろうネタもぽんぽんと放り込まれていく。また、アドリブも多く、開始早々、台詞がスムーズに出てこないおがわさんに対して櫻井さんがツッコんだり、ゲストの本井博之さんにも「ちゃんとやって」とお願いしたり、「上演時間が70分〜80分の予定となっている意味が分かったわ」などとメタなことも言い始める。

ともすればそういった作風は内輪受けとも捉えかねないが、不思議と櫻井さんの手にかかるとちゃんと笑えるようになっているのは、カウンターの奥から的確にコントロールしているからなのだろう。


その一方で、櫻井さんの劇団ならびに出演者への愛情が感じられる場面も多々あった。

ガラクタ屋は言うまでもなく、MCRという劇団そのものだが、店長が店を辞めるかもしれないと聞いた常連たちが辞めないように言いに来る。中では、いつも無茶振りされる堀靖明さんのキレっぷりが凄まじく、場内から拍手が起きるほどだった。

ここはもはや店長にとってだけではなく、常連やはたまた通りすがりの人々にとってもなくて困ることはないけど、あったらいいなぁと思える居場所とちうことなのだが、そんな彼らに店は辞めないと話す店長の台詞は完全にこれからも劇団を続けていくという櫻井さんの宣言となっていた。


フィナーレは店長、と言うより櫻井さんによる「浪漫飛行」熱唱。それに合わせて跳ね回る出演者一同を見ているだけでも幸せな気分になれ、涙腺を刺激された。昨日のチャミチャムは若者の青春だったけど、ここにはまごうかたなき中年の青春があり、30周年にふさわしい公演だった。

終演後にかかるandymori「ユートピア」の歌詞も櫻井さんの心情を表しているようでとてもよかった。


上演時間1時間18分。