チャミチャム case3
『いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した』
2024年10月29日(火)~11月2日(土)
水性
脚本:三浦直之(ロロ)
演出:山本真生(キルハトッテ/にもじ)
舞台監督:月館森(露と枕/盤外双六)
音響:近藤海人(かまどキッチン/オドリバ)
音響操作:渡邉結衣(にもじ/みちばたカナブン)
当日運営・宣伝写真:中嶋千歩
宣伝美術:古戸森陽乃(かるがも団地)
プロデュース:盤外双六
主催:チャミチャム
出演:
関彩葉(瑠璃色)
波多野伶奈(茉莉)
土本燈子(海荷)
声の出演:
葛生大雅[サンバーチャイチャイ/マチルダアパルトマン](ジャムくん)
STORY
いま自販機でスプライトを買ってる亜子ちゃんは、安田先生に恋していなかったらしい。いま音楽室でピアノを弾いてるモリナガくんは、ほんとは柔道がしたいらしい。いま下駄箱で手紙を拾った達也は、明日には月に帰るらしい。いつだってあたしたち、ホントかウソかも確かめないまま、らしいらしいで話をしてる。【公式サイトより】
波多野伶奈さんの個人ユニット、チャミチャムの第3弾。前回までは一人芝居だったが、今回は友人のお二人を加えての三人芝居。
本作はロロの《いつ高》シリーズ第4作で、2017年初演。元々波多野さんは高校時代に《いつ高》シリーズを上演したかったものの叶えることができず、今回の企画に至ったのだとか。
舞台は高校の中庭。木製の背もたれのないベンチが2つ、下手に白いカーテン。
会場の水性は元々ドライクリーニング店だったそうで、看板や貼り紙などの名残がそこかしこに。下手側にガラス張りの自動ドア。
波多野伶奈さんが前説の後、完全に暗転はできないので…と合図とともに観客が目を閉じての暗転をして本篇開始。斬新。
初演はコロナ禍、期間限定無料配信された際に鑑賞したが、その時よりも大きく感情を揺さぶられた。それはひとえに映像と生との違いでもあるのだが、本作はモチーフとなっている短歌同様、余白を味わう作品のため、余計にその差が出たのかもしれない。
余白を味わうというのはどういうことかと言うと、本作の舞台は上述通り、高校の中庭なのだが、その周囲でも物語が進行している。先生に怒られている群青、
渡り廊下を通りかかるジャムくん、そして練習をしている軽音楽部……彼らの姿が登場することはないが、観ている方はいやがおうにも想像力をかき立てられる。更には瑠璃色、茉莉(まつり)、海荷の3人も1人いなくなり2人いなくなり、3人とも舞台上にいない時すらある。彼女たちがその間、どこで誰とどんな会話をしていたか、それもまた余白の部分であるし、舞台上にいる時でさえ、その気持には余白の部分がある(とりわけ瑠璃色の群青に対する思い)。
もう一つ言うと、傘を差しながら会場の前を通る人たちがほとんど漏れなく何をやっているのだろうとこちらを見ながら通り過ぎていくのも、この作品の一部であるとさえ思えた。
波多野伶奈さん、土本燈子さん、関彩葉さん、それぞれ持ち味を発揮してとてもよかった。
チョークであちこちに短歌を書き始め、壁や床、更には自動ドアから外に出て書き続けるシーンは実に楽しそうだし(本日は雨だったので大変そうだったけど)、軽音楽部が奏でるTHE HIGH-LOWS「青春」に合わせてはしゃぐ様は「時間が本当に もう本当に 止まればいいのにな」という歌詞そのものでいちばんグッと来た。
上演時間59分。