菅野臣太朗演劇倶楽部 番外公演
『贋作・オセロー』
シアターグリーンBASE THEATER
原案:W・シェイクスピア『Othello』
脚色・演出:菅野臣太朗
舞台監督:川崎耕平 舞台美術:松本わかこ
照明:安達明香、糸賀大樹(aqua)
音響:千葉隆弘、幸田和真(ワンツー)
音楽:倉堀正彦 演出助手:菅野由佳子
イラスト:もりいくすお 題字:杉本健爾
写真:堀越新治
制作:倉重千登世、小杉香穂里、渡邊莉央
企画:神木優
共催:株式会社PlayJapan
主催・製作:POLLUX合同会社、神木優事務局
出演:
稲村梓(デズデモーナ役・白石)
藤原習作(オセロー役・石黒/社長・瀬能)
神木優(演出、イアーゴ役・緑原/整備士・吾郷伊吹)
今村美乃(制作・灰野/事務・英美里)
内堀克利(整備士・樫尾/劇団員・青柳)
石川桃(信金職員、瀬能の妻・桃愛(旧姓・出水)/劇団員・赤葉)
幹山恭市(市長、桃愛の父・番場/ベテラン・門田/座長・柴崎)
STORY
とある劇団でシェイクスピアの『オセロー』が上演されることになり、1週間後の本番に向けて稽古が佳境を迎える中、近所の自動車整備工場・瀬能モーターで、社長の瀬能が妻・桃愛を絞め殺す事件が発生する。瀬能は副社長に任命した樫尾と妻との関係に疑念を抱いて犯行に及んだが、それは整備士・吾郷による奸計だった。劇団員たちは『オセロー』そっくりな事件が近所で起きたことに色めき立ちつつ、作品の再解釈を試みる。
第36回池袋演劇祭参加作品。
箱馬の上に平台を載せた島舞台。舞台上には平台が積まれている他、照明機材やらアルファベットを象ったものやら。三方と手前の一部には黒い格子。出はけは上手奥の他、客席通路も使用。
シェイクスピアによる四大悲劇の一つ『オセロー』が原案となっている本作。現代の日本に舞台を移すといった翻案はこれまでにもあっただろうが、そこに『オセロー』稽古中の劇団を絡ませるのが本作のミソ。
語り手も務める制作の灰原、デズデモーナ役に抜擢された白石、オセロー役の石黒、そして演出も兼ねるイアーゴ役の緑原が人間の持つ二面性を踏まえながらそれぞれの役の解釈について語り合ううち、単純に白黒つけられるものではないという話になっていく(ちなみに衣裳は緑原のみ全身黒で、他のキャストは全身白)。劇団のシーンがあることによって、原作を知らない人でも作品のポイントが摑めるし、原作を知っている人にとっても一つの『オセロー』論として興味を惹かれる。
更にはそこに緑原は勝手に白石と付き合っているつもりになっていたり、白石はこの作品の前に石黒と別れていたり、白石は白石で灰原が石黒に気があるのではと勘ぐったりと劇団員同士の思惑が絡み合うあたりも面白い。
初日ということもあってか、役者陣には硬さも見られたけど(台詞のトチり、妙な間合い)、全体的にはよく出来た作品で予想以上に楽しめた。
本格的な舞台は兎座『兎の姉妹』以来5年ぶりとなる今村美乃さんは役者業のかたわら、本名名義で制作もされているのでまさにハマり役。特に「いい舞台を作りたいだけなの」という台詞(ちょっと不正確だけど)は実感がこもっていた。
企画者でもある神木優さんは台詞を発していない時の表情に注目。幹山恭市さんのちょっと胡散臭い(こら)雰囲気もよかった。上演時間1時間37分。