椿組『かなかぬち〜ちちのみの父はいまさず〜』 | 新・法水堂

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椿組2024年夏・花園神社野外劇

『かなかぬち〜ちちのみの父はいまさず〜』



2024年7月10日(水)〜23日(火)
新宿花園神社境内特設ステージ

脚本:中上健次 構成・演出:青木豪
主題歌:友川カズキ 挿入歌:山崎ハコ
舞台美術デザイン:加藤ちか
照明プラン:沖野隆一(RYU CONNECTION)

照明オペレーター:野中千絵(RYU CONNECTION)

音楽・作曲:寺田英一
音響プラン:佐久間修一(POCO)
衣裳デザイン:阿部美千代(株・MIHYプロデュース) 助手:梅田泉
振付:鈴木彩乃
殺陣(剣術指導):栗原直樹(WGK) アシスタント:西村聡
能指導(所作指導):清水寛二
韓国楽器指導:みょんふぁ
人形美術デザイン:松本淳市
かつら(床山)メイク:杉岡実加、伊藤年江、藤井菜穂
演出助手:松倉良子
舞台監督・テント技術監督:吉木均
舞台監督助手:松本淳市、野口研一郎、佐藤昭子、岡野浩之(Spielplatz)、桑原淳
道具スタッフ:岸川卓臣、佐野眞介、谷佳那香、平井由紀、小島由衣、ますやん
ケイタリング:ASAMI、外波山恵
HPデザイン:福原望
制作票券:佐藤希、佐野みづき、清水直子、宮本綾子、渡辺沙和、吉野美紀、小澤奈都子
宣伝美術:黒田征太郎+タカハシデザイン室

出演:
山本亨(男(鉄人)・かなかぬち)
松本紀保(女)

望月麻里(姉)

外波山流太(弟)

犬飼淳治[劇団扉座](手下クモ/里人)
伊藤新[ダミアン](手下トサカ/里人)
鳥越勇作(手下ムカデ/里人)
趙徳安(手下カラス/里人)
斉藤健(手下イタチ)
十河尭史(手下カエル)
矢﨑和哉[劇団昴](手下・弁慶)
影山翔一(手下・影法師)
長橋遼也[リリパットアーミーII](手下トンボ)
瀬戸純哉[劇団離風霊船](手下シオ)
外波山文明(芸能集団・座長)
田渕正博(石男)
井上カオリ(薬女)
鈴木幸二(能楽師・花若)
木下藤次郎(芸能男・偽王)
佐藤銀平(同・孫悟空)
佐久間淳也(同・沙悟浄(兄))
時津真人[★☆北区AKT STAGE](同・沙悟浄(弟) )
阿比留丈智[劇団チャリT企画](同・猪八戒)

山中淳恵(芸能女・文殊菩薩)
鎚矢あかり(同・三蔵法師)

山本耀[AKA-TSUKI](同・踊り子)

伊沢奈々(同・籠女)

三森伸子[劇団東演](同・人形使い)
小田原麗(同・チャンガー)
宇都恵利花(同・ヒゲ女)
長嶺安奈(サン)
岡村多加江(キク)
浜野まどか(ミツ)
下元史朗(敗れた者・主)
筑波竜一[劇団温泉ドラゴン](敗れた者・従)

STORY
時は南北朝時代。日本の権力は北朝(京都=武家方)と南朝(吉野=宮方)とに別れ内乱状態が続いていた。その南朝・吉野から、さらに山深く入った熊野の山に「かなかぬち」と呼ばれる鉄の男が、女とその手下達と一緒に暮らしていた。そこへ母を訪ねて旅をしながら彷徨う幼い姉弟。流浪の芸能集団。「かなかぬち」を仇と狙う花若。さらに時空を超えて登場する幻の獅子が絡み、物語は展開する。その姉弟が仇と狙うはその「かなかぬち」だった。【当日パンフレットより】

椿組、今年で最後となる花園神社野外劇。
1979年、中上健次さんが33歳の時に同い年の外波山文明さんと出会ったことがきっかけで書き下ろされた唯一の戯曲(初演時は『ちちのみの父はいまさず』が本タイトル)。

いつものように役者陣がキビキビ動いて活気のある客入れ。鳥越勇作さんによる前説が始まると、これが最後ということもあってか大盛り上がり。
本篇が始まれば、すぐさまその世界に引き込まれる。
かなかぬち(かぬちは金打ちが変化した言葉で鍛冶のこと)率いる盗賊たち、個性的な面々が集う芸能集団、オババたち、落ち武者のような兄弟、そして母の仇を捜す姉弟と総勢35人の役者陣が土の上を駆け回り、時折姿を現す巨大な白い龍が見た目はユーモラスながらも何かが起こる予兆を感じさせる。
やがてかなかぬちと行動をともにする女が姉弟の実の母親と分かるくだりはドラマチックで、かなかぬち、次いで腕が鉄と化した弟が空高く昇っていくラストは、これで終わりなのだという一抹の寂しさを感じつつも十二分に満足感を与えてくれるものだった。

カーテンコールでは初めての試みという役者紹介あり。どこかのアングラ劇団とは違って、椿組は自分たちの原点を見失わないでいて実に清々しい。
もちろん、これで解散というわけではないので、今後も劇場公演を楽しみにしていきたい(次回公演の作・演出はどこかのアングラ劇団と袂を分かった鄭義信さん!)。

上演時間1時間46分。