唐組『泥人魚』2回目 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

唐組 第73回公演

『泥人魚』



【新宿公演】

2024年5月5日(日)・6日(月)、10日(金)〜12日(日)、6月1日(土)・2日(日)、6日(木)〜9日(日)

花園神社


作:唐十郎 演出:久保井研+唐十郎

絵:合田佐和子 作曲:安保由夫

宣伝美術:海野温子 

舞台美術:大鶴美仁音+紅美術団子

照明:重村大介 音響:福原由加里 

衣装:加藤野奈 舞台監督:藤森宗

制作:劇団唐組制作部


出演:

福本雄樹(浦上螢一)      

久保井研(まだら呆けの詩人でブリキ店の店主・伊藤静雄)   

福原由加里(静雄の町のヘルパー・腰田)      

加藤野奈(その同僚・肩田)

山本十三(立ち食いそば屋の主人)

升田愛(そば屋の女店員・待子)         

友寄有司(調査専門ブローカー・踏屋(夜))

藤森宗(ガニ股の踏屋の部下・ガニ)

稲荷卓央(詩人静雄の元弟子、螢一の親友・しらない二郎)

大鶴美仁音(やすみ)

藤井由紀(とある会社の秘書室長・月影小夜子)

岩田陽彦(螢一の友・夕ちゃん)

西間木美希(天ちゃん)

髙橋直樹(草ちゃん) 

重村大介(漁師/ガニの部下/闇夜船の船長・魚主)

壷阪麻里子(ガニの部下)

金子望乃(ガニの部下)

舟山海斗(ガニの部下)

丹羽駿介(ガニの部下)

荒谷清水[南河内万歳一座](義眼の海の漁師・ガンさん)


STORY

理め立てに行かず、ただー人町を去った漁師、螢一が、消えた親友・二郎を探して暮らすのは、二郎のかつての師、詩人・伊藤静雄の営むプリキ加工店。残る約束の半分を悔やむ眼(ガン)に代わって、どうにか決着をつけようとしていた。そして、やすみもまた、眼のため、残りの約束を果たすべくその店を訪れるのがった。諫早湾の記憶宿る義眼が導かれる闇の行方を知らないままに、ニ人が遂げる二郎との再会。「人か魚か分らぬ女だ。そのウロコをはがさぬ限り、その女は人には戻らぬ」そう記したメモと共に残された〝泥の約束〟の先に二郎が見つめる一点は、海で拾われ、人魚と呼ばれ名を捨てた少女が、ウロコの奥に封じた過去の鍵……。――見えるよ、この眼には……今、腰の辺りで光ったお前の鱗一枚が――義限と肉眼の間に映ったー片の、はがされた傷跡の上、帰る海をなくした人魚に朽ちない鱗が舞い降りる。【当日パンフレットより】


2003年初演作、先月11日に続いて2回目の鑑賞。

一部キャストの違いあり。


ここ数年は欠かさずに観ている唐組だけど、改めて唯一無二のエンターテインメントだと実感。

本作の初演では唐さんが伊藤静雄を演じ、テントの外で自転車を乗りまわし、それをヘルパーの腰田と肩田が追いかけていたけど、唐さんが出演していた頃は毎回、唐さんがどこからどう登場するのかが楽しみだった。

水槽もよく出てくるけど、今回は座長代理の久保井研さんと看板役者の稲荷卓央さんが真っ先に泥水に潜るというのがいいよねぇ。こうした演出も、とにかくお客さんを喜ばせることを第一に考えてのものだろう。

そうしたエンターテイメント性にくわえ、役者の口からほとばしる詩的な台詞が持つ文学性、諫早湾干拓事業におけるギロチン堤防がもたらした分断を描く批評性が唐作品の醍醐味。

本日の客席は反応もすこぶるよく、前回よりも笑いや拍手が多かった。


上演時間1時間53分(一幕43分、休憩12分、二幕58分)。