宝宝『おい!サイコーに愛なんだが涙』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

宝宝(1かいめ)

『おい!サイコーに愛なんだが涙』



2024年5月30日(木)〜6月2日(日)
インストールの途中だビル4階インストジオ

脚本:長井健一
脚本・演出・音響・照明:藤田恭輔(かるがも団地)

企画協力:佃直哉(かまどキッチン)

制作協力:瀧口さくら

当日運営:す〜す〜(すわろす)

記録撮影:中嶋千歩

記録映像:児玉健吾(かまどキッチン)

宣伝美術デザイン:古戸森陽乃(かるがも団地)
宣伝美術撮影:藤田恭輔(かるがも団地)

出演:
長井健一(唯野祐介/元祖しばっちゃん(シバサキユタカ)/教授/父親/姉/ソノベリサ/友人・アサダ/友人・ユキエ)

STORY
ムササビ美術大学、通称・ムサ美に通う唯野祐介は、卒業制作としてインスタレーション作品を披露する。彼は品川区中延にある自分の部屋を再現した空間で、同居中の地下芸人・元祖しばっちゃんの話を始める。高校時代、仲のよかったアサダとユキエが付き合うことになった時、ユキエに嫉妬した過去を持つ祐介は自身の性的指向に疑問を持っていたが、ゲイであることをネタにしているしばっちゃんと寝た翌朝、これが恋だと気づく。

長井健一さんによる個人ユニット、宝宝(bǎo・bǎo)の第1回公演。宝宝は中国語で赤ちゃんという意味だとか。

舞台は祐介の部屋を再現したという設計で、奥にベッド、上手手前にイーゼル、下手に本が平積みされた机、その奥に家の模型が置かれたローテーブル。また、上手側の壁に教授の顔が映し出され、取り外されると部屋自体の窓が現れる。

長井健一さんは出演舞台を観たことはあるものの、正直、さほど印象に残るような人ではなかった。だがしかし、ご自身の過去も題材にしているという本作においては前説の段階からその魅力を十二分に発揮。誰もが祐介のことを応援したくなり、見終わった時には長井健一という役者のことが好きになったことだろう(別に…という方がいたらゴメン)。
自分の考えをパッと口に出して言えないという祐介は、インスタレーション作品を通じて自分の性的志向について表現する。この作品にどれほどの思いを、どれほどの祈りを込めたことだろうか。彼が紆余曲折を経て『ハチミツとクローバー』には描かれていなった恋を見つける瞬間は微笑ましく、一旦は別れることにした元祖しばっちゃんが残していったフリップを見ていくくだりも涙腺を刺激される。かるがも団地の藤田恭輔さんらしく、優しい心持になれる作品だった。

上演時間1時間20分。