やみ・あがりシアター第20回公演
『フィクショナル香港IBM』

北とぴあペガサスホール
作・演出:笠浦静花
演出助手:小山優梨、波木ぺん(劇団再放送)、西山珠生(幻視譚)、林泰製(システム個人)
舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
舞台監督補:大石晟雄
舞台美術:中村友美
照明:黒太剛亮(黒猿)、小見波結希
音響:古川直幸(Led Cetus)
制作:宮野風紗音(かるがも団地)
衣装:鈴木佳奈 宣伝美術:Erina
楽曲制作:小山優梨 WEB:松葉智恵乃
出演:
奥山樹生(若手作家・I)
梶川七海(産業スパイ・U)
小林義典(フィクショナル香港IBMの管理責任者・補佐官/男)
サニー(IBMのアルバイト・ミヌエット/女)
湯浅くらら[ノックス](同・ラグドール/女)
加瀬澤拓未[ノックス](治安維持部隊・セキュリティ/男)
冨岡英香[もちもち/マチルダアパルトマン](セキュリティの娘・リリー/女)
二宮正晃[本若](日本国籍のテロリスト・ヤマダ/知らない人/男)
小嶋直子(ヤマダにおにぎりを持ってくる係・ライスボール/女)
佐々木タケシ(飲み屋「ブルーハウス」のマスター/男)
波世側まる(「ブルーハウス」の常連・占い師/知らない人/女)
さんなぎ(革命組織「第5番」のリーダー・《未来の》大統領/女)
笹井雄吾[guizillen](「第5番」の武力担当パン・イ・セボジャ/男)三枝佑[ターリーズ](「第5番」の鉄砲玉キー・ヴィヴラ・ヴェドラ/男)
加藤睦望[やみ・あがりシアター](ネタバレが気になる女)
森田亘(ネタバレを気にしない男)
STORY
1988年。初めてのデートで喫茶店で待ち合わせをした男女。男はこれから観る映画『フィクショナル香港IBM』が面白くなかったら大変だと下見をしてきたと言い、物語の結末まで興奮気味に話してしまう。女は映画を観る楽しみを奪われたと憤るが、男は話を知っていても面白いと意にも介さない。映画『フィクショナル香港IBM』は2088年の香港を舞台にしたSF映画で、若手作家のI(アイ)は補佐官に依頼されてフィクショナル香港IBMのルポを書くことになる。Iはネタ探しをする中で出会ったU(ユー)という女性に心惹かれ、彼女を主人公にしてルポを書くことにする。IはUの行方を捜すため、革命組織「第5番」のリーダー・大統領とも接触をするのだが……。
やみ・あがりシアター、記念すべき第20回公演。
舞台右端にピンクで「フィクショナル」、左端に緑で「香港IBM」と書かれたネオンサイン。舞台には赤、黄、緑などカラフルな色の半透明のシートが貼られた衝立が左右に(下は空いている)。丸テーブル5つに椅子が4脚。
ネタバレがテーマの本作、のっけからこれから初デートの男女がネタバレをめぐって言い合いとなるのだが、笠浦さん自身は「面白いものは内容を知っていても面白い」とする男性側なのであろう、観れば観るほどチケット代が半分ずつになる「ネタバレ割」や公演期間中、戯曲を無料公開(こちら)しているところからも自信のほどが現れている。
物語は冒頭の男女の世界と映画『フィクショナル香港IBM』の世界が並行して描かれていくのだが、映画でコーディネイトチェンジなる要は入れ替わりの術があって行き詰まると何度かリフレッシュと称してやり直しをするのに呼応するかのように、男女も「僕たちは、この後、二度と会うことはなかった」と言いながら、映画を観に行き、ラブホテルに行き、プロポーズして、親に反対されながらも結婚し、香港に新婚旅行に行き……とその都度、別れながらも何度もやり直しをする(途中でそれは男が開発したゲームだと判る)。
「そしてラストは泣きました!」と映画の説明をする男が語るように、本作も最後はほろりとさせられる。笠浦さんの構成力の見事さにまんまともう一度観たいと思わされてしまうのであった(元々予約してたけどな!)。
音楽もカッコいい。
キャストでは加藤睦望さん&森田亘さんのカップルの噛み合わなさがとてもよかった。
《未来の》大統領を演じるさんなぎさんは、フィクショナル香港IBMから追放の身となり、地面に降り立つことができないため、常に部下にかつがれている状態。台詞回しも独特でまた新たな一面を見られた。
上演時間1時間59分。