星歌オムニバスひとりしばい『正夢』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

星歌オムニバスひとりしばい公演

『正夢』



2024年3月28日(木)〜31日(日)
新生館シアター

企画・製作・演出:星歌
脚本:「きょうのハガキは」保坂萌(ムシラセ)、「je t'aime★je t'aime」櫻井智也(MCR)、「19才」オノマリコ(趣向)、「私は、恋をした。」鈴江俊郎、「ほしのうたはとどかない」柴幸男(ままごと)
演出助手:なんば、安良田愛斗
舞台監督:伊藤セナ(名前はない劇団)
照明:柚希 音響:岡村崇梓(TempoControl)
美術:袴田長武 衣装:安良田愛斗
宣伝美術:輝蕗 宣伝写真:彩乃
写真撮影:竹之内萌
フライヤーイラスト/ロゴデザイン:星歌
幕間映像:金子直樹
配信映像:児玉健吾(かまどキッチン)
制作:加藤じゅんこ(ジエン社)

出演:
星歌
市川新之助[リバーマン](DJらっきゃ・声)

STORY
「きょうのハガキは」
今日もあたしのハガキは読まれない。だってポストに入れてないから。ラジオからは笑い声が響いている。面白いことが思いつかない。読まれたら貰えるステッカーがほしいのに! もう時間がない。世界はそろそろ終わりそうだしお母さんは溶けてきた。ああ、神さま面白いことを思いつかせてください。ゾンビはそのままでいいから。
「je t’aime ★ je t’aime」
大好きだったあなた、きちんと悲惨な時間を過ごしていますか? 魔が差して、あいつが不幸である事を確認しないと眠れなくなった夜。電気代がかかる割に足しか暖まらないヒーターをそそのかしながら、叶わない夢なんて見たくないので結果的に呪詛を撒き散らしてしまう私の手にあるロリポップキャンディーが溶けるまでのお話。
「19才」
19才になった。ハタチはまだきてない。家の契約も携帯電話の契約も一人でできるけど、酒もタバコもやってはいけない。パチンコはできるけど競馬はできない。夜のお店で働いてもいい。結婚もしていいらしい。だけどまだ大人と言われるには抵抗がありすぎる。
「私は、恋をした。」
女子が自室で神と対話している。神は実際的な相談相手であり、かつ全能の存在らしい。深夜。翌日が勝負なのだ。神がおりてくる人形を相手に七転八倒。なのに、無言の神。返事がないとは何事だ。行動計画は壮大で、人が聞いたら警察に連絡したくなる代物だ。この勢いで彼女はもっと黒いなにか大切なものに到達するのかもしれない。
「ほしのうたはとどかない」
夜。その人間はひとり部屋の中にいた。アンテナを真っ暗な宇宙に向け、遠くの波を摑もうとしていた。ノイズ混じりに聞こえるかすかな音。その音は遥か遠く、星の間を旅してきた。その人間は一枚の手紙に言葉をしるした。言葉は光に変化して、彼方の相方に向けて飛び立った。点々と光る星たちだけがそれを見ていた。【公式サイトより】

秋吉というお笑いコンビでも活動する星歌さんによるオムニバスひとり芝居。

ご多分に漏れず、星歌さんのことも秋吉のことも知らなかった私だが、保坂萌さん、櫻井智也さん、オノマリコさん、柴幸男さん、そして鈴江俊郎さんという錚々たる作家陣(最後の2人は岸田國士戯曲賞受賞者)が書き下ろしをするって一体何者!?というのがそもそも興味を持ったきっかけ。
経緯としては、星歌さんが死にたいと思ったことがあるらしく、そこから一念発起、自分のやりたいことをやろうと思い至り、元々好きだった作家にラブレターを送り、今回の企画を実現させたとのこと(詳しくはnote参照)。もはやそれだけで一本の芝居になりそうなものだけど、星歌さんの行動力もさることながら、無名の21歳の芸人のオファーを受けた5人も素晴らしいな。
当て書きされて出来上がった5つの作品はゾンビものあり、Siriとの対話あり、男役あり、神様との対話あり、異星人との漫才ありとバラエティに富んでいて、大袈裟でも何でもなく星歌さんの表情がそれぞれで異なって見えた。役者としても非常に優れているものを持っているだけに今後も舞台を続けてほしい。

上演時間1時間54分。

アフタートークは保坂萌さん。いちばん最初にオファーしたのが保坂さんとのこと。2月に上演されたムシラセ(ミニ!)に続く「きょうの◯◯は」シリーズ最新作となったが、保坂さんいわく、まず血まみれになった星歌さんが思い浮かんで今回の設定になったとか。個人的にはこのエピソードがいちばん好きだった。