ホエイ
『クチナシと翁』
2024年3月8日(金)〜17日(日)
こまばアゴラ劇場
作・演出：山田百次
舞台美術：鈴木健介 照明：黒太剛亮（黒猿）
衣裳：正金彩 舞台監督補：陳彦君
当日運営：大橋さつき 制作：赤刎千久子
プロデュース・宣伝美術：河村竜也
出演：
三上晴佳（カミのバサマ・長内ハルエ／カミの孫・長内ミズキ）
成田沙織（シモのお母さん・長内ユリコ）
山田百次［ホエイ］（カドヤのジッコ・長内ヨシマツ）
中田麦平［シンクロ少女］（カドヤの孫・長内マコト）
河村竜也［ホエイ］（オゲヤのせがれ・長内ヨシオ）
武谷公雄（マスヤのせがれ・長内タケヒコ）
斉藤祐一［文学座］（元柏一真）
赤刎千久子［ホエイ］（小山内ヤスコ）
STORY
青森県のとある町。市町村合併に反対し、現在は高齢化率が50％を超える自治体。学校区単位の運動会は廃止され、地区運動会と一体化された。明日は来年廃止が決定した地域イベント「かかし祭り」が行われようとしている。地域おこし協力隊など新たな移住者の受け入れに苦慮しながらも、新旧町民による「まち」への問いかけが、思いもよらぬ展開へと発展する。【公式サイトより】
10周年を迎えたホエイ、5年ぶりの新作公演。
舞台は集会所。奥の左右に柱、その間に梁があり、賞状や熊の頭部が飾られている。かかし祭りが近いということで室内どころか客席にも（受付ロビーにも）かかしがあり、開場時からカドヤのジッコがぶつぶつとかかしに向かって話しかけている。出入口は上手奥のみでその手前に段差あり。中央にはカーペットが敷かれ、背の低い長机。周囲に座布団。
冒頭、カミのバサマと下のお母さんの会話から津軽弁フルスロットル。何を言っているか分からなくても「ジップロック」や「クックパッド」といった固有名詞だけは聞き取れて笑いを誘う。
集会場を出入りする人々が繰り広げるこの会話劇は、笑ってばかりもいられない、津軽地方に限らない過疎地域の現実をも映し出している。タイトルのクチナシというのは集落の名前なのだが、口無し＝かかしでもある。人間がいなくなり、その代わりにかかしが作られていく、と考えたらゾッとしてしまった。
それでも終盤、カミのバサマがそのまたバサマから聞いたという村に伝わる言い伝えが再現されるくだりの明るさは、少しばかりの救いともなっていた。
菊のおひたし、一度食べてみたいな…。
キャストはいずれもよかったが、都会から8ヶ月になる赤ん坊を連れて出戻ったタケヒコ役の武谷公雄さんの町に馴染みきれていない距離感が絶妙だった。途中、その赤ん坊を連れてくるシーンは本物の赤ちゃんが登場してびっくり。とてもいい子にしていたけど、どなたのお子さんなんだろう。
上演時間1時間33分。
