『哀れなるものたち』(ヨルゴス・ランティモス監督) | 新・法水堂

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『哀れなるものたち』

POOR THINGS



2023年イギリス・アメリカ・アイルランド映画 141分
監督・製作:ヨルゴス・ランティモス
製作:エド・ギニー、アンドルー・ロウ、エマ・ストーン
原作:アラスター・グレイ
脚本:トニー・マクナマラ
撮影監督:ロビー・ライアン
美術:ジェームズ・プライス、ショーナ・ヒース
衣裳:ホリー・ワディントン
編集:ヨルゴス・モブロプサリディス
音楽:イェルスキン・フェンドリクス


出演:

エマ・ストーン(ベラ・バクスター)

マーク・ラファロ(弁護士ダンカン・ウェダバーン)

ウィレム・デフォー(外科医ゴドウィン・バクスター)

ラミー・ユセフ(ゴドウィンの助手マックス・マッキャンドレス)

クリストファー・アボット(ヴィクトリアの夫アルフィー・ブレシントン)

ジェロッド・カーマイケル(ハリー・アストリー)

ハンナ・シグラ(マーサ・フォン・カーツロック)

スージー・ベンバ(娼婦トワネット)

キャサリン・ハンター(娼館の主人スワイニー)

ヴィッキー・ペパーダイン(プリム夫人)

マーガレット・クアリー(フェリシティ)

ジャック・バートン(洒落者1)、チャーリー・ヒスコック(洒落者2)、アッティラ・ドバイ(不運な学生)、エマ・ハンドル(ロンドンの通りの子連れの女)、アンデルス・グルンドベリ(ロンドンの通りの子供)、アッティラ・ケシュケメシー(たくましい男)、ジュシマール・バルボサ(リスボンのドアマン)、カルミーニョ(ファドを歌う女)、アンヘラ・パウラ・スタンデル(議論する女)、グスタヴォ・ゴメス(議論する男)、ケイト・ハンドフォード(キティ)、オーウェン・グッド(ジェラルド)、ゼン・ジョシュア・ポワソン(リスボンの泣いている赤ん坊)、ヴィヴィアン・ソーン(公爵夫人)、イェルスキン・フェンドリクス(リスボンのレストランのミュージシャン)、イシュトヴァン・ゴス(ウィンクする男)、ブルーナ・アスドリアン(リスボンの踊る女)、タマーシュ・サボー・シポス(リスボンの踊る男)、トム・ストートン(乗客係)、マスクード・ダヒール(渡り板の乗客係1)、マイルズ・ジョヴィアン(渡り板の乗客係2)、ジェレミー・ウィーラー(高級船員)、ヤーノシュ・ゲレブ(犬の飼い主)、パトリック・ドゥ・ヴァレット(シャペル)、ラファエル・ティエリー(肉屋サヴール)、ボリス・ジロー(ムルソー)、ドリナ・コヴァックス(スワイニーの孫)、ヨルゴス・ステファナコス(ジョルジュ)、ユベール・べナムディン(ハンサムな司祭)、ローラン・ボレル(蟹の男)、ガボール・パティ(手鉤男)、ローレント・ウィンクラー(パリの医大の外科医)、アンドルー・へフラー(脚でセックスする男)、ダミアン・ボナール(父親)、ノア・ブレトン(息子1)、ドノヴァン・フアシエ(息子2)、ウェイン・ブレット(司祭)、ジョン・ロック(アルフィーの執事デイヴィッド)、キーリー・フォーサイス(アルフィーのメイド・アリソン)、デイヴィッド・ブロムリー(アルフィーの主治医)


STORY

不幸な若い女性は自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、ベラ・バクスターとして奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。【「映画.com」より一部修正】


ヨルゴス・ランティモス監督が『女王陛下のお気に入り』に続いてエマ・ストーンさんと組み、スコットランドの作家アラスター・グレイさんの同名小説を映画化。

ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した他、間もなく授賞式が開催される米アカデミー賞では11部門にノミネート。


前作は評判の割にはあまり楽しめなかったのだけど、本作は評判通りの素晴らしさ。とりわけ映像が美しく、美術、衣裳についても細部までのこだわりが感じられる。聞けばヨルゴス・ランティモス監督は好きな映画監督としてピーター・グリーナウェイ監督の名前を挙げているそうでなるほどと納得(実は当初はグリーナウェイ監督の特集上映を観に行こうかと思っていた)。

ストーリーも奇想天外で、飛び込み自殺をした女性に彼女のお腹にいた胎児の脳を移植して蘇らせるという導入部からしてかなりイカれている(褒め言葉)。

移植をした天才外科医の名前がゴッドというのも人を食っているが、これはいわばフランケンシュタイン博士の系列に連なる人物で、どうやら自分自身も実験台にしていたような継ぎ接ぎだらけの顔をしている。

そんな博士が生み出したベラは弁護士ダンカンとともにロンドンからリスボン、アレクサンドリア、パリへと旅をして世界を知り、一人の女性としてたくましく成長し、自立していく。

最後、ベラのことをヴィクトリアと呼ぶアルフィーが登場するが、彼に対する仕打ちも実に痛快で、「哀れなるものたち」とは女性を見下すことしかできない男性たちのことであったかとひとり納得して映画館を後にした。


製作にも名を連ねるエマ・ストーンさんは、「見た目は大人、頭脳は赤ん坊」なベラを見事に演じ、覚悟のほどが伝わってきた。アカデミー主演女優賞、さてどうなりますか。

あと、一文無しになったベラがパリで娼婦として働くことになる娼館の主人スワイニー役が野田秀樹作品でもおなじみキャサリン・ハンターさんだとは気づかなかった。