音楽劇『不思議な国のエロス〜アリストパネス「女の平和」より〜』
SHUJI TERAYAMA VERSION OF LYSISTRATA - EROS IN WONDERLAND
2024年2月16日(金)~25日(日)
新国立劇場小劇場
作:寺山修司 演出:稲葉賀恵
音楽・演奏:古川麦
美術:乘峯雅寛 照明:原田保 音響:早川毅
振付:康本雅子 衣裳:藤谷香子
ヘアメイク:井上京子 歌唱指導:長谷川開
ラップ監修:METEOR
トラック制作:MEEBEE a.k.a Kazuhiro Abo
稽古ピアノ:西井夕紀子
演出助手:平戸麻衣、市村涼子
舞台監督:村岡晋
宣伝美術:デザイン太陽と雲(立花和政)
公式サイト制作:ブラン・ニュー・トーン(かりぃーぷぁくぷぁく、阿波屋鮎美)
記録写真撮影:友澤綾乃
票券:エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ
制作:麻場優美
アシスタントプロデューサー:小川隆太、野田菜々子
プロデューサー:村上具子、田窪桜子
エグゼクティブプロデューサー:松村𠮷洋
後援:テラヤマ・ワールド
主催:ミックスゾーン、アイオーン
企画・製作:ミックスゾーン
出演:
松岡依都美(ヘレネー)
花瀬琴音(アイアスの恋人クローエ)
朝海ひかる(ナルシス)
横溝菜帆(エコー)
高橋ひろし(武将ラケース)
原田優一(武将の右腕ペリクレース)
内海啓貴(カミラス)
渡邉蒼(ラケースの息子アイアス)
万里紗(カミラスの妻ミュリネー)
関谷春子(ヘレネーの賛同者プシケ)
皆本麻帆(同・カロニケ)
柿丸美智恵(同・土手腹夫人)
北村岳子(同・アタランタ)
まりゑ(スパルタの女ラムピトー)
占部房子(アカルナイの女ドロアーテ)
伊達暁(武器屋デビトリブス)
富岡晃一郎(葬儀屋ピタゴラス)
林光哲(理想的男性へラクレース)
伊藤壮太郎(雄辯家マラソン)
美玖空(コリント/女衛兵/女たち)
出津玲奈(ヘーラ/女たち)
溝口悟光(兵士/部下)
大石英玄(兵士/部下)
STORY
戦いに明け暮れる男たちに愛想をつかしたギリシャの女たちは、敵味方の垣根を超えて立ち上がる! アテネの武将ラケースの妻ヘレネーは、女たちを密かに集め戦争終結を要求するためセックス・ストライキを提案します。アクロポリスに結集し一度は計画に乗る女たちでしたが、クローエは平和を願いつつもアイアスと結ばれたいという思いを抑えらません。ヘレネーの声がけに、スパルタやアカルナイなど敵国の女たちにもアテネに結集、戦争を終わらせるためにと、帰還した男たちを巻き込みながらセックス・ストライキを始めるのですが…【公式サイトより】
1965年に書かれながら当時は上演されなかった寺山修司さんの戯曲を稲葉賀恵さんが演出。
なお本作は2014年、流山児★事務所が『寺山修司の「女の平和」~不思議な国のエロス~』というタイトルで、日本の時代劇ミュージカルとして世界初演を果たしている。
開演時、舞台中央にピラミッド状に積み上げられたパイプ椅子。床には衣裳が散乱し、背景には三日月。下手側にはギターが数本あり、古川麦さんが生演奏。
戯曲を読んだり実際の上演を観たりしたことはなくても(岩波文庫ですら読めないとは嘆かわしい)大体どんな話かは知っているのがアリストパネスの『女の平和』。簡単に言ってしまえば、男たちが血道を上げる戦争を止めさせるために女たちが夜の営みを拒否、すなわちセックス・ストライキをするというお話。
男=戦争、女=平和という二項対立がやや図式化しずきているきらいはあるが(なんせ紀元前411年に上演された作品だし)、リーダー格のヘレネーをはじめとして女性たちが実に堂堂としていて頼もしい。
基本的には歌あり踊りありで賑やかな喜劇だが、その中でアイネスを戦争で喪ってしまったクローエの悲しみがより一層際立っていた。
キャストもいずれもよく、とりわけクローエ役の花瀬琴音さんは初めて見る方だったが、可愛らしい声(新海誠監督の映画『すずめの戸締まり』にも出演されていたそうで)でありながら、終盤、客席通路を通りながらのソロ曲が胸に響いた。
気風のいい松岡依都美さんや渋さが光る原田優一さんの歌声もよかった。
横溝菜帆さんは唯一、現代的な女子高生の服装で、外側の視点という役割を担い、存在感を発揮。『義母と娘のブルース』のみゆきも大きくなって…(とは言えまだ15歳)。
上演時間2時間13分。