『枯れ葉』(アキ・カウリスマキ監督) | 新・法水堂

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『枯れ葉』

KUOLLEE LEHDET



2023年フィンランド・ドイツ映画 81分
脚本・監督・製作:アキ・カウリスマキ
撮影:ティモ・サルミネン
美術:ビレ・グロンルース
衣裳:ティーナ・カウカネン
編集:サム・ヘイッキラ
音楽:マウステテュトット

出演:
アルマ・ポウスティ(アンサ)
ユッシ・ヴァタネン(ホラッパ)
ヤンネ・フーティアイネン(ホラッパの同僚ハンネス・フオタリ)
ヌップ・コイヴ(アンサの友人リーサ)
マッティ・オンニスマー(鉄工所の上司)、サイモン・アルバズーン(ネットカフェの店員)、マルティ・スオサロ(アンサの上司ラウニオ)、サカリ・クオスマネン(移動式住居の男)、マリア・ヘイスカネン(高等看護師)、アリーナ・トムニコフ(看護師トーニャ)、アンナ・カルヤライネン[マウステテュトット](本人)、カイサ・カルヤライネン[マウステテュトット](本人)、アルマ(アンサの飼い犬チャップリン)

STORY
北欧の街ヘルシンキ。アンサは理不尽な理由で仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらも、どうにか工事現場で働いている。ある夜、カラオケバーで出会った2人は、互いの名前も知らぬまま惹かれ合う。だが、不運な偶然と現実の過酷さが、彼らをささやかな幸福から遠ざける。果たして2人は、無事に再会を果たし、想いを通い合わせることができるのか……?【「KINENOTE」より】

アキ・カウリスマキ監督、6年ぶりの新作。

第76回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作。


あまり好きではないアキ・カウリスマキ監督の作品だが、本作は今まで観た中でいちばんよかった。

中年の男女の恋愛というかなり地味な題材ではあるが、若者の変愛映画ではまずもって感じられることのないペーソスが全篇を漂う。

アンサは廃棄処分の食べ物を持ち帰ろうとしてスーパーをクビになり、ホラッパはアルコール依存症でこれまた仕事をクビになる。それでもホラッパはアンサのために酒を断つ努力をするが、電話番号が書かれたメモを落としたり、トラムに轢かれたり、会いに行こうとしてもなかなか会えないもどかしさも笑いを誘う。

ラジオをつければ、ウクライナ情勢のニュースばかり。現在の話かと思ったら、チラッと映し出されるカレンダーは2024年下半期のもので、製作時点からすれば1年以上は続くと見ていたということだろう。

アンサは飼い始めた犬にチャップリンと名付けるが、こうした殺伐とした世の中にあってもユーモアを忘れないようにという願い(それは監督自身の願いでもあろう)が込められているように感じた。


本日は客席のリアクションもやたらあって、笑い声が頻繁に聞こえてきた他、ホラッパとアンサが観に行くジム・ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』が流れるシーンでは「ええええーー!?」と声が上がっていた。笑