劇想からまわりえっちゃん『もう一度、僕を孕んで』 | 新・法水堂

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劇想からまわりえっちゃん

『もう一度、僕を孕んで』



2023年11月1日(水)〜5日(日)
「劇」小劇場

作・演出:青沼リョウスケ
舞台監督:新井和幸
音響:谷井貞仁(Collage Sound)
照明:谷川裕俊(PARAKEET)
舞台美術:愛知康子 音楽:坂本弦
衣装:荒川智都 撮影:レオナール久保田
宣伝美術:kaho hosokawa
制作:阿部りん

出演:
中村猿人[劇想からまわりえっちゃん](佐藤剛士)
玉一祐樹美[劇想からまわりえっちゃん](母・えりこ/ゴールデンクレイドル・卑弥呼)
佐藤新太(弟・健二)
佐野晋平[劇想からまわりえっちゃん](えりこの夫・太田)
佐々木タケシ(犬・ピザ)
ムトコウヨウ[劇想からまわりえっちゃん](伯父・ジョイジョイ)
大山杏菜(祖母・シャルロット/ゴールデンクレイドル・ハローキティ)
小林桃香[露と枕](恋人・ホワイトウォーリアみき/ゴールデンクレイドル・北条政子)
桑田佳澄[江古田のガールズ](ジョイジョイの息子?・ジョイジョイジュニア/ゴールデンクレイドル・MOTHER2)
石井未来(「ロバの耳」めぐみ/ゴールデンクレイドル・リオレイア)
林廉[劇想からまわりえっちゃん](友人・宇佐見昭夫)
青沼リョウスケ[劇想からまわりえっちゃん](同・堂上男市)
青木真美(デリヘル嬢・一蘭/ゴールデンクレイドル・野原みさえ)
大岩根綾奈(健二の恋人・牛腸/ゴールデンクレイドル・ジャンヌダーク)
石垣エリィ[エリィジャパン](訪問看護師・塙茜/ゴールデンクレイドル・ママレモン)
杉本惠祐(茜の夫、訪問介護士・塙空)
堀井夢香(ゴールデンクレイドル・マリア)
八角ちゃん(同・18号)

STORY
主人公の鈴木剛士は、祖母の危篤の知らせを受け久々の帰省。家族という坩堝は千差万別。それぞれに匂いがあり、鈴木家のそれは剛士にとってどうも臭う。死を待つ祖母、寡黙の母、婿養子の父、遺産目当ての伯父、発情期の犬、偽善者の弟。嫌いだ! お腹の音がぐぅと響くリビングで、こいつらも生きているのだと思い知らされる。【公式サイトより】

劇想からまわりえっちゃん、最新作。

舞台には八畳ほどの畳。下手側にシャルロットの眠る引き出しつきのベッドがあり、壁には写真や折り紙など。上手にハンガーラック。その上の壁に「中日」の文字と雑誌から切り抜いたらしき選手のカラー写真。時折、テレビが運び込まれる。左右に出入口があり、その周囲は母親の胎内をイメージした装飾。

関西演劇祭2021で短篇を配信で観たことはあったが、本公演は初めて。
当日パンフレットの挨拶によれば、祖母が危篤で帰省したという話の発端は青沼リョウスケさん自身の経験に基づいているようだが(本作の主人公・剛士同様、青沼さんは愛知県出身)、剛士はそれを「ロバの耳」のめぐみに話すという形で物語が進行。
全体的にはキャラも個性的で随所に笑えるところもあり、アイドルグループ・ゴールデンクレイドルの「黄金のゆりかご」も堂に入っていてとてもよかったのだけど、母親の胎内に戻りたいという欲求とストーリー展開がややちぐはぐに感じた。祖母ではなく母親が危篤という設定にした方がよりテーマが明確になったような気もする。
青沼さん自身が演じる主人公の友人・堂上が、ゆりかご会でアイドルのマリアにハグされて勃起しているのをもう一人の友人・昭夫(林廉さん、なかなか女装がお似合い)が確かめる展開とかもあまり必要性が感じられなかった。

キャストは総じてよかったが(三河弁の台詞はもうちょい頑張って!)、桑田佳澄さんはNICE STALKER『ロリコンとうさん』に続いて子供役(性別は不詳)がハマっていたし、アイドル役の時のダンスもよかった。アイドルの中では石井未来さんも目を引いた。
終盤に登場する塙夫妻の石垣エリィさん&杉本惠祐さんの歌のうまさにもびっくり。後で経歴を調べたらなるほどと納得のお二人だった。

上演時間2時間1分。