NOSTALGIC『あらしのよるに』 | 新・法水堂

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年間300本以上の演劇作品を観る観劇人です。ネタバレご容赦。

NOSTALGIC 第1回

『あらしのよるに』



2023年9月13日(水)〜18日(日)
TKJシアター

原作:きむらゆういち
演出・潤色・音響・照明・制作・衣装・フライヤー:竹之内勇輝
舞台美術・スチール撮影:カンフミト
当日制作:柚木彩見

出演(黒チーム):
橘百花(メイ)
竹之内勇輝(ガブ)
池田羽純(タプ)
大林みいな(ミイ)
伊藤美奈(メイの祖母・長老)
星名一澄(ギロ)
渚紗佑里(バリー)
山賀裕斗(ザク)
荏原汐里(未来)
桃香(理)

STORY
養護施設で出会った未来と理(さと)。二人は『あらしのよるに』をきっかけに親しくなる。『あらしのよるに』は嵐の夜、暗がりの中で出会ったヤギのメイとオオカミのガブの友情物語。周囲の反対を押し切って逃亡する二匹に、未来と理は自分たちを重ね合わせ、施設を出てともに暮らし始める。

映画化もされたきむらゆういちさんの絵本シリーズをWキャストで舞台化。黒チームのガブ役は今咲暁葉さんが予定されていたが、一身上の都合で降板、演出の竹之内勇輝さんが代役を務める。

舞台の壁は人種、性別、年齢も様々な人の顔写真が2列で覆い尽くされ、上面が正方形の台4つと上面が六角形の台が2つ。上手手前が高くなっている。
原作は未読ながら、ヤギとオオカミの友情というところからして人種問題を扱っているのだろうと想像していたが、壁一面の写真を見ると、この舞台版では人種だけではなくありとあらゆる違いを乗り越えることを描こうとしているのだろう。
未来と理は今回の舞台版オリジナルキャラで、施設育ちということを考えると、弱者の立場にある2人である。そんな2人が手に手を取り合って生きていこうとする様がミイとガブに重ね合わされる。
冒頭から横たわっている未来が新型コロナウイルスによる死者数などこの世に溢れている数字を述べていくのだけど、ここでの荏原汐里さんの演技は非常に惹きつけられるものがあり、作品の導入部としてつかみはオッケー。低いトーンの声もいいのよなぁ。
主演の2人もなかなかよかったし、ギロ役の星名一澄さんとバリー役の渚紗佑里さんもカッコよかった(星名さん、最後の方で盛大にコケていたけど大丈夫だったかな…)。

全体的には悪くなかったし、場内からは啜り泣きも聞こえてきたが、下手手前の少し高くなったところが隠れ場となり、割と重要なシーンが演じられるのはどうだったんだろう。私は最前列だったが、役者の表情が見えにくかった場面もあったし、何よりその位置ではせっかくの演技がまっすぐに届かない。隠れ場感は出ていたかもしれないが、舞台奥に少し高いスペースを作った方がみやすかったように思う。
あと、照明が変なときについたり消えたりしていたのは大いなるマイナス。恐らく演出自身がオペに入る予定だったのが自ら出演することになって、急遽代役を探した結果なのだろうと思うが、客にとってはそんな事情は関係ない。ある程度のお金を取っている以上、それに見合うものを見せてもらいたかった。

上演時間2時間。