体現帝国『奴婢訓』 | 新・法水堂

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体現帝国 第十一回公演

『奴婢訓』



2023年9月1日(金)〜24日(日)
七ツ寺共同スタジオ

作:寺山修司 演出:渡部剛己
音楽:赤木萌絵
音響:ヤスエタイラ、小嶋大輝
照明:橋本武文(HL tech design)
舞台装置:早馬諒(妄烈キネマレコード)
映像収録:村崎哲也(muvin)
メインビジュアル:大河原愛「Recalling Memories 8」
炊事:叶和泉
運営:坪井菜摘、 安部百夏、 春雨乃音、 赤木香里、 しばたみつよし、 嘉島菜乃、 櫻井春菜子

出演:
中居晃一(ゴーシュ/刑事ジョバンニ)
田口佳名子[体現帝国](掃除婦・ダリア)
赤木萌絵[体現帝国](女中頭・かま猫)
鈴江あずさ(よだか)
安部火韻[愛蘭珈琲]
麓貴志[ろーまの平日]
ナオミ
田上まみ(下女トメ子)
池田豊
左合陽裕
渡部剛己

STORY
イーハトーブ農場にあるグスコーブドリの館に遺産相続人を名乗るゴーシュという男がやってくる。その館は主人不在で、下男下女たちが順番に"主人ごっこ"に興じていた。

1978年初演作。
体現帝国は渡部さんが2008年に旗揚げした劇団。一時期、演劇実験室◉万有引力に入団のため活動を休止していたが、2017年に再開している。

冒頭、全裸でスキンヘッド、白塗りの男が椅子に座り、女中頭のかま猫が頭、鼻、肩に装身具をつけていき、最後にゴザのようなものを垂らす。その後、男が靴を持ってくるように命令すると、下男下女たちが一斉に殴りかかって追い出す。
この白塗り男、この後出てこなかったなと思っていたら、実は演出の渡部さんだったそうで。
演出を追い出すとは何とも象徴的だが、下男下女たちは主人不在の中、順番に主人役を演じる"主人ごっこ"に興じる。
その後の展開は七ツ寺共同スタジオを縦横無尽に駆け回り、のたうち回る役者陣に目が離せなかった。とりわけ、トメ子が客席背後の小さな窓から出てきたのと下男2人が左右の壁に垂直に立つシーンには驚き。
マッチの匂いも印象的で、
「マッチ擦るつかのま小屋に霧ふかし
 身捨つるほどの演劇はありや」
と下手な本歌取りをしたくなるぐらいには寺山ワールドを満喫できた一作だった。

キャストではラクーンテールつきのロシア帽を被ったゴーシュ役の中居晃一さん、主人の座にしがみつくダリア役の田口佳名子さん、劇伴の作曲を担当し、歌声も披露する赤木萌絵さんがよかった。赤木さんはまだ21歳だとか。

上演時間2時間14分。