果てとチーク『くらいところからくるばけものはあかるくてみえない』 | 新・法水堂

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果てとチーク 第六回本公演

『くらいところからくるばけものはあかるくてみえない』



2023年8月18日(金)〜27日(日)
アトリエ春風舎

作・演出:升味加耀
ドラマターグ:綾門優季(青年団リンク キュイ)
舞台監督:大石晟雄(劇団晴天)、青木望華
音響:櫻内憧海(お布団)
照明:緒方稔記(黒猿)
舞台美術:いとうすずらん
宣伝美術:酒井まりあ
宣伝イラスト:LITTLE RED BOY
制作:田中遥、半澤裕彦 制作協力:寺垣沙織
当日運営:類家アキヒコ(劇団カツコ)
演出助手:夏榠リョウ(株式会社宍戸錠事務所)、廣川千紘
撮影・編集・配信:まがたまCinema
配信音声協力:おにぎり海人(かまどキッチン)
企画制作・主催:果てとチーク

出演:
川村瑞樹(タカサコ(シミズ)ルイ)
福井夏[柿喰う客](ルイの親友ヒキダ ソラ)
函波窓[ヒノカサの虜](ルイの夫タカサコ キミタカ)
鈴木彩乃[劇団晴天](ソラの姉ヒキダ(サトナカ)ミウ)
林ちゑ[青年団](ルイの先輩ウツミ キリエ)
佐藤英征(キリエの夫ウツミ マサヤ)
川隅奈保子[青年団](ミウとソラの母、ヒラヤマ大地の恵み会ヒキダ ケイコ)
上野哲太郎(ルイの友人トミタ ナツ)

STORY
「ねえ、神さまに会おうよ。」ある日突然、一緒に神さまを探した親友が消えた。暗い秘密を抱えたまま、私は母になっていた。【公式サイトより】

升味加耀(かよ)さん主宰の演劇ユニット・果てとチークによる新作公演。

舞台奥に2人用のブランコ。それと同じタイプの細い円柱が左右に2本ずつあり、赤白のロウソク。岩で出来たようなテーブルが2つ(くっつけると1つになる)、椅子が4つ。壁も岩肌状。

奇しくもくによし組『壁背負う人々』に続いての宗教モノ(ついでに照明の緒方稔記さんも2日連続)となったが、テイストはまるっきり異なる。
ルイとキミタカの夫婦が、ルイの先輩・キリエに誘われてヒラヤマ大地の恵み会の畑仕事に参加するところから始まる。ルイの親はかつて母恵会というカルトの信者で、ルイは宗教二世同士のソラという親友がいたが、彼女は十数年前、教祖の男性を殺し、自分も死ぬという事件を起こしていた。そんな矢先、母恵会のミミズ神社が火事で焼け落ちる一方、ネット上では最後まで見たら呪われるという動画が話題となり、どんどんと死者(それも男性ばかり)が増えていく。

母恵会にしてもヒラヤマ大地の恵み会にしても、はたまた呪いの動画にしても、その実態はよく分からない部分があるが、舞台美術や音響も相まって作品全体に得体の知れない不気味さが漂う。カルトというのは得てして弱い立場の人を食い物にするようなところがあるが、その組織の中でも更に弱い立場に置かれる女性たちにとっては、まさに進むも地獄退くも地獄といった状況。
そんな中でルイとソラがブランコに乗りながら、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のテーマソングを口ずさむシーンだけが一種の救いとなっていた。

福井夏さんはハマり役で、女性の盗撮動画をアップしているような男の目を潰すシーンはひときわ印象的。劇団晴天『共演者』を配信で観たばかりの鈴木彩乃さんも目を引いた。

上演時間1時間45分。