『ザ・ホエール』
THE WHALE
脚本・原作戯曲:サミュエル・D・ハンター
製作総指揮:スコット・フランクリン、タイソン・ビドナー
製作:ジェレミー・ドーソン、アリ・ハンデル
撮影監督:マシュー・リバティック
美術:マーク・フリードバーグ、ロバート・ペイゾハ
音楽:ロブ・シモンセン
編集:アンドルー・ワイスブラム
衣裳:ダニー・グリッカー
キャスティング:メアリ・ヴァーニュー、リンジー・グレアム・アハノニュ
特殊メイク:エイドリアン・モロット
出演:
ブレンダン・フレイザー(チャーリー)
セイディー・シンク(娘エリー)
ホン・チャウ(アランの妹、看護師リズ)
タイ・シンプキンズ(ニューライフの宣教師トーマス)
サマンサ・モートン(元妻メアリー)
サティヤ・スリダラン(ピザの配達人ダン)
ジェイシー・シンク(少女時代のエリー)
STORY
ボーイフレンドのアランを亡くして以来、現実逃避から過食状態になり健康を害してしまった40代の男チャーリー。アランの妹で唯一の親友でもある看護師のリズの助けを受けながら、オンライン授業でエッセイを教える講師として生計を立てているが、心不全の症状が悪化し、命の危険に及んでも病院に行くことを拒否し続けている。しかし、自分の死期がまもなくだと悟った彼は、8年前、アランと暮らすため家庭を捨てて以来別れたままだった娘エリーに再び会おうと決意。彼女との絆を取り戻そうと試みるが、エリーは学校生活や家庭に多くの問題を抱えていて……。【「KINENOTE」より】
アカデミー主演男優賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞作。
2012年に初演されたサミュエル・D・ハンターさんの同名戯曲の映画化ということで、セットはほぼチャーリーの家のみで展開し、月曜から金曜までの5日間の出来事が描かれる。
奇しくも『生きる LIVING』に続いて死期が近づいた男が主人公の映画となったが、こちらの病気はうっ血性心不全。どうしても虚血性心不全で亡くなったナカゴーの鎌田順也さんを思い出してしまうよね……(チャーリーほどではないにしても巨漢だったし)。
本作でもやはり主人公のチャーリーは死を前にして、やり残したこと、すなわち8年前に妻ともども捨てていった娘エリーに会うことを決意する。
もちろんすんなりわだかまりが解けることはないが、チャーリーが大事にしていたメルヴィル『白鯨』について書かれたエッセイがエリーが4年前に書いたものだと分かり(Wikipediaで8歳とあるのは8年生、つまり中学2年生の誤り)、それをエリーに読んでもらった後でチャーリーが力を振り絞って立ち上がるくだりは感動的で、ブレンダン・フレイザーさんの演技も真に迫るものがあった。
アカデミー助演女優賞候補となったホン・チャウさんも好演。チャーリーの太い腕を枕のようにして寄り添う姿がとてもよかった。