タカハ劇団『おわたり』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

タカハ劇団 第19回公演

『おわたり』



2023年7月1日(土)~9日(日)
新宿シアタートップス

脚本・演出:高羽彩
舞台監督:藤田有紀彦 舞台美術:稲田美智子
照明:小林愛子(Fantasista?ish.)
音響:田中亮大(Paddy Field)
衣裳:三田村帆乃香(藤衣裳)
演出助手:和田沙緒理 殺陣指導:多田聡
作詞・作曲:高羽彩
大道具:鈴木太朗(箱馬倶楽部)、美術工房拓人
小道具レンタル:高津装飾美術
運搬:明和運輸、大松運輸
宣伝美術:羽尾万里子 宣伝写真:金山フヒト
宣伝ヘアメイク:小林雄美、鶴永チヒロ
字幕操作:市原麻帆 制作:半田桃子
制作助手:佐藤恵泉 制作協力:momocan

出演:
早織(芥川賞作家・四方田稔梨)
西尾友樹[劇団チョコレートケーキ](民俗学者・蝦草紅緒)
宇野愛海(紅緒の助手・斑鳩亞紀)
かんのひとみ[劇団道学先生](阿部家当主・阿部翡翠)
田中亨(翡翠の孫・阿部刹那)
土屋佑壱(寿々子の義父、町会議員・堀口光義)
鈴政ゲン(亞紀の従姉・堀口寿々子)
神農直隆(医師・常磐純)
猪俣三四郎[ナイロン100℃](巡査・柏野貞広)

声の出演:
高羽彩
和田沙緒理
藤田有紀彦

STORY
ある日突然、死んだ友人の幻影を見るようになった小説家、稔梨。彼女は友人の民俗学者・蝦草紅緒と共に、海沿いの小さな集落に住む霊能力者・阿部翡翠のもとを訪れる。しかし彼女が訪ねたとき、集落は年に一度の祭『おわたり』の準備に大わらわだった。『おわたり』とは、その年に海で死んだ者たちの魂がいっせいに黄泉の国へと渡ること。死者と生者が混在するひと夜。 海は闇に溶け出し、人の秘密があふれ出す。【公式サイトより登場人物名補足、誤字訂正の上、引用】

タカハ劇団、15年ぶりのホラー作品。

舞台は伊豆半島にある金山村の阿部家の洋室。
奥の壁に本棚。左右に扉、絵画。下手側に机と椅子、上手側にロッキングチェアと扇風機などなど。舞台ツラ側に掃き出し窓。

まず最初にありきたりなことを書いてしまうと、一番怖いのは人間の心なのだろうな。人間の心が既に死んだ人の存在を感じさせ、祟りや天変地異を恐れて祭を行わせる。
本作は民俗学者とその助手、そして民俗学者の友人の作家が、奇祭「おわたり」が行われる伊豆半島の小さな村を訪れるところから始まる(2人かと思ったら3人来たので泊まるところがないという話をしていたけど、亞子は従姉の寿々子の家に泊まればよかったのでは…)。
「おわたり」が始まるきっかけとなった出来事やら稔梨個人の秘密やらが徐々に明らかになっていく中で奇怪な出来事が連鎖するように発生し、稔梨自身もまた引き返せなくなってしまう。
序盤は舞台設定や紅緒と亞紀のコンビに『TRICK』っぽさを感じるところもありながら、終盤は照明や音響、そしてもちろん俳優の演技も相まって恐ろしさを体感できる作品となっていた。

ところで、時代設定が1995年になっていたのはなぜなんだろう。稔梨はたびたびポケベルで呼び出されていたけど、ちょうどPHSが出る頃。もちろん、震災が起きた年というのはあるだろうし、地下鉄サリン事件という人間の心の闇が作り出したカルト教団による戦後最大の凶行が起きた年ということもあるのかな。
ちなみに劇中の台詞に「DA.YO.NE〜」と出てきたり、古畑任三郎っぽい台詞回しが出てきたりしたけど、それらはともに1994年。亞紀が「だっちゅーの」と言っていたけどこれは1997年。ま、ポーズを取っていたわけではないので、たまたまその語尾になったということで。笑

上演時間2時間9分。

高羽さん進行のアフタートーク、この日のゲストは、YouTubeチャンネル『ゆる民俗学ラジオ』のパーソナリティである黒川晝車さん&浦下拓巳さん。後から西尾さん、宇野さん、田中さんも参加。