糸あやつり人形一糸座『少女仮面』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

糸あやつり人形一糸座

『少女仮面』



2023年3月17日(金)〜21日(火・祝)
赤坂レッドシアター

作:唐十郎 演出:天野天街(少年王者舘)
​演出助手:丸山厚人 劇中歌作曲:小室等
音楽:坂本弘道 舞台美術:伊藤雅子
舞台監督:森下紀彦 舞台監督助手:神永結花
照明:小木曽千倉 音響:岩野直人
映像:濱嶋将裕 衣裳:雪港
大道具制作:株式会社エクス・アドメディア
絵画協力:森仁美
宣伝美術:原画/大寺史紗 デザイン/三崎了
宣伝協力:ポスターハリス・カンパニー
写真:小野塚誠 記録映像:塩田英樹
人形デザイン・製作:田中めぐみ、結城まりな、眞野トウヨウ、(株)糸あやつり人形一糸座
制作:結城民子、田中めぐみ
制作協力:海野広雄(オフィス櫻華)、武井希未

出演:
【人形群】
江戸伝内(春日野八千代)
結城一糸(緑丘貝/腹話術人形)
結城民子(老婆)
結城まりな(ボーイ1/看護婦)
眞野トウヨウ(ボーイ2/防空頭巾の女3)
土屋渚紗(防空頭巾の女1/蝿)
成田路実(防空頭巾の女2)
​【役者群】
丸山厚人(ボーイ主任)
田村泰二郎(水飲み男)
永野宗典[ヨーロッパ企画](腹話術師)
夕沈[少年王者舘](腹話術人形)
大久保鷹[特別出演](甘粕大尉)
清水ゆり[CHAiroiPLIN](声の出演・歌唱指導)

STORY
宝塚のスターを夢見る少女・貝は老婆と一緒に、往年の宝塚のスター、春日野八千代を訪ねてとある地下の喫茶店《肉体》にやってくる。そこは防空壕のように閉鎖された空間、ひたすらタップを踊る謎のボーイたち、それを支配するボーイ主任、いつも喉を乾かせて水を呑みにくる中年男、主の春日野は今も濃い化粧で男装し、時間が止まったような日々を過ごしていた。春日野に見初められた貝は演技指導を受け、夢心地になるが、外からやってきた男に蹂躙された春日野は戦争時の記憶が蘇り、様々な悪夢となって春日野を狂気の渕に追い込んで行く。貝に助けを求める春日野にそれすらも演技の指導としか見ない貝は春日野を冷たく扱う。春日野は絶望し一生外す事の無い、仮面をかぶっていく……。【新宿梁山泊『少女仮面2015』あらすじより】

唐十郎さんの岸田國士戯曲賞受賞作を天野天街さんが演出。当初、2020年に上演予定だった本作、2度の中止を経て遂に上演。
本作は一糸座のルーツである結城座にて佐藤信さんの演出により74年、76年、81年と上演されたそうで、江戸伝内(三代目結城一糸)さんはボーイ主任を人形で演じられたとか。

舞台を歪んだ外枠が囲み、紅テントならぬ紅カーテンが覆う。最初に元唐組の丸山厚人さんが登場して前説。もう既にこれだけで胸が熱くなる。
カーテンが開くとそこは喫茶「肉体」の店内。奥に入口のドア(「肉体」の文字が反転して見える)。下手にカウンター、上手にテーブルと椅子などなど。

ここ数年、やたらと上演される機会のある本作だけど(ゲッコーパレードも同じ時間に千穐楽を迎えていた)、これがもう極めつけではと思えるほど。
特権的肉体論を掲げて上演された唐作品を人形が演じることの面白さ。人形であれば、春日野八千代も永遠の肉体を保持できるのよなぁ。
初の唐作品となる天野天街さんは「一言一句違えず」に演出(ただし繰り返しはあり)。唐作品の面白さと糸あやつり人形劇の面白さ双方を引き出していた。

結城座版では江戸伝内さんの父・結城雪斎(十代目結城孫三郎)さんが演じたという宝塚歌劇団の男役スター・春日野八千代を伝内さんは色気たっぷりに演じる。まさに匠の技。
大久保鷹さんは1971年に状況劇場で上演された時と同じ甘粕大尉役を52年ぶりに演じる(一昨年上演された新宿梁山泊版では水道飲み男だった)。同じく元状況劇場の田村泰二郎さんの水飲み男もよかった。

カーテンコールでは丸山厚人さんが特別に各キャストを役名とともに紹介。最後に「私が舞台上でこの方のお名前を呼ぶのは15年ぶりになります。作・唐十郎!」と言うと、客席にいた唐十郎さんが立ち上がる。これはもう泣くしかない。
更に全員揃ってのアフタートーク。うにたもみいちさん司会のもと、一人ずつコメントを言っていく中、丸山さんは男泣きで「あつんど」という芸名は唐さんがつけてくれたことや唐さんに言われた言葉などを話す。熱すぎる師弟愛にこちらもまた涙。

上演時間1時間35分。